若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

魔法の石

石に私の魔力を込めると、一瞬視界が真っ白になるほどの強い光が放たれた。
その光が消え去ると、手のひらの上にある石は淡い光とほんの少しの温かさを宿していた。
「……すごい、私なんて一個で限界だって思ってたのに……」
「えぇ……私達もまだまだって事ですのね……」
「大丈夫よ、二人ならこれくらいの事すぐに出来るようになるわ、ね？ムルもそう思うでしょう？」
『うん！ムルはずっと皆の事を近くで見ていたから、二人なら出来るって思うよ！』
そう言ってムルは嬉しそうに笑った。
そんなムルにつられて私達も笑顔になる。
すると、沙羅が何かを思い出したかの様にあ！と声を上げた。
「沙羅？どうかしたの？」
「今日はまだムルと遊んでない！」
「沙羅……貴女、今日は頑張って勉強するって言ってませんでしたか？」
フィリスは、はぁ……とため息を付きながら沙羅の事をジトッと見つめれば 沙羅は慌てた様子で、勉強もちゃんとするもん！とフィリスに訴えかけていた。
そんな二人の様子を見ていると、何だか微笑ましくて、私はクスクスと笑い声を零す。
すると、二人が私の方を見つめて来たのでどうしたの？と問いかける。
「いえ、やっぱりお二人は仲良し何だな、と思いまして。でも……そうですね、少し休憩しましょうか？
魔力を使いすぎるのも良くありませんからね」
「やった！ムル早く遊ぼう！」
「全く沙羅は……ルカ、あまり沙羅を甘やかさないでくださいね？」
「あら、私はフィリスの事も沢山甘やかしてますよ？」
そう言いながら私はフィリスの頭を撫でた。
そんな私の行動に驚いたのか、フィリスは恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
沙羅がそのやり取りを見ていたのか、フィリスだけずるい！と言って私も撫でて、と私の袖をくいくいと引っ張ってきた。
だから私は、フィリスと沙羅の頭を撫でると、満足そうな笑みを浮かべた。
『ルカ！ムルも！ムルも！』
「はいはい、分かったわ」
ムルにも頭を撫でてあげると、嬉しそうに笑ってくれる。
そんな私達のやり取りをフィリスは少し呆れた様な表情で見つめていたけど 口元は緩んでいて、少し嬉しそうだった。
それから私達は、休憩がてら他愛もない話をしながら穏やかな時間を過ごした。
「そっか～私達の力を合わせて……うーん、話しは理解できるんだけど、私達の力でどうにかなるものなのかな？」
「そうですね……私達の力は強くなっていると言っても、ルカにはまだまだ追いつきませんし……」
二人にムルの事を話すと、二人は難しい顔をしながら私の話を聞いていた。
いきなり、二人の力が必要だと言われても難しい事は分かっているけれど、これも二人の力を強くするためには
必要な事だと私は思っている。
「難しいと思うのも分かるけれど、でも二人の力が必要なの……だから、お願いできないかしら……？」
二人に頭を下げると、沙羅とフィリスは慌てた様な声で私に頭を上げて！と言い
ルカの力にならせて、と真剣な眼差しで私にそう言った。
私が頭を上げると、二人は少し照れた様に笑っていた。
「二人共……ありがとうございます……」
「ううん、ルカとムルの為だもん！ね？フィリス」
「えぇ、私達に出来る事なら何でもお手伝いしますわ」
「本当にありがとう……」
それから私達は、今後について話し合いを始めた。