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決意

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今日の私のお昼は、購買で買った菓子パンと小さい紙パックのジュース。
今朝は時間が無くて作れなかったから仕方ないけれど、明日はちゃんと作ろう……そう思いながら、私はパンにかぶりつく。
三口ぐらい食べ進めた所で、私はフィリスに声を掛けた。
「今日の遅刻ってさ……やっぱり昨日のあれで……?」
「…………まぁ、そうですね」
「もしかして体調が悪いとか……」
「それは大丈夫です、昨日の夜ずっと考えていたんです……ルカに言われた
魔力のコントロールについて……」
深刻そうな顔で、フィリスは呟く。
「私も……昨日の夜考えてたよ、でも一日じゃ答えは出なかった」
私は、パンを齧りながら答えるとフィリスは私の言葉に驚いたようで そうなんですか?と聞き返してきた。
私は頷きながら、そうだよ……と答える。
するとフィリスは少し考え込んだ後……私にこう問いかけてきた。
「沙羅なら……一日で答えを見つけると思ってたから……」
「私はそんなに凄い人間じゃないよ~昨日だって、一人で悩んで……
答えが全然見えなくて、誰かに頼りたいって思っちゃったもん」
「沙羅……」
「でも、それじゃ意味無いって私が一番良く分かってる」
空を見上げながら、私は呟く。
そう、私はフィリスの考えるような凄い人なんかじゃない……
人一倍悩んで、考えて……誰かに助けを求めてしまう、そんな人間なんだ。
でも、頼ってばかりじゃダメなんだって分かったから、私はこれから一人で考えていかなくちゃいけない。
「ルカが私達の傍にずっといてくれる訳じゃ無い……」
私の言葉にフィリスは、そうね……と頷きながら答える。
ルカは私達を守るために傍にいて、守ってくれる……でもずっとじゃない。
それに頼りっぱなしではいられないんだ。
私もフィリスもちゃんと自分の力で立って歩いて行かないといけない。
「でも、何でも一人で抱え込んでしまったら……いつかきっと、壊れてしまうわ……」
「フィリス……?」
「私だけには……沙羅の弱い所を見せてくれてもいいのよ……?」
私の頬に手を伸ばしながら、フィリスは言う。
それが、少しくすぐったくて私は目を細める。
「うん……」
優しいフィリスの手に触れながら、私は静かに頷く。
それから私達は他愛のない話をしてお弁当を全部食べ終えた後 お昼休みが終わりそうだったからベンチを後にして、教室へと戻った。
*******
お昼休みが終わり、授業が始まる。
私は教科書を取り出しながら、頭の中で考える……どうしたら自分の力に向き合えるのだろうか、と。
結局答えは出なかった、まぁ……そんなすぐに、答えが出るものだと私は思っていないから、ゆっくりと焦らずに向き合っていきたい。
そう考えていると、授業終了のチャイムが鳴り響き、そんなに時間が経っていたのかと驚いた。
教室を出ていく先生の背中を見ながら、自分のノートを見ると
真っ白で、何も書かれていない所ばかりで……少しだけ焦りを覚えた。
「ね、ねぇ……フィリス……」
「そんな真っ青な顔で……今度はどうしたんですか?」
「その……授業聞いて無くて……ノートが……」
「はぁ……今回だけですからね?」
「ありがとう……!!」
「全く……」
はぁ……と呆れ顔になりながらも、フィリスは私にノートを貸してくれた。
私は自分のノートに必死に授業の内容を書き写しながら、もうこんな事はしないと自分に言い聞かせてフィリスにお礼を言ってから、ノートを返し私は次の授業に備える事にした。
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