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変わる為に

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それから私達はしばらくその場所で練習を続けた。
沙羅もフィリスもコツを掴むのが早く、ほんの数時間の練習で
魔法石を光らすことが出来るまでになっていた。
けれど、石を砕かずに魔力を込めると言うのはまだ難しいようで
何個もの石が砕け散ってしまった。
「まただ……どうしたら、ルカみたいに砕けないで魔力を込められるんだろう……」
沙羅は泣きそうな声で呟き、砕けた石を見つめる。
フィリスも、悔しそうに自分の手を見つめ、大きな溜息を一つ。
「…………うん、今日はここまでにしましょう」
「えっ!?私まだやれるよ!?もしかして……全然できない私に呆れたとか……」
「そんな訳ありません、むしろその逆です」
「ぎゃく……??」
「えぇ、お二人共私の想像以上に飲み込みが早くて驚いてるんです。だから、一回考える時間を作って、また後日やりませんか?」
「考える時間……ですか?」
「はい。今日、闇雲にやっても砕けた石が増えるだけ……ですから、どうやったら魔力をコントロールする事が出来るのか
一人で考え、答えを出してみてはくれませんか?」
私はそう言って、二人を見つめる。
二人はしばらく考え込んだ後、同時に顔を上げ私を見つめた。
そして、私が口を開く前に口を開いたのは沙羅の方だった。
その目は真剣で、でも何かを決意したような強い目をしていた。
「分かった。このままやっても……ルカの言う通り、失敗作が増えるだけ。
だったら、一人でゆっくりと考える時間も必要だと思う」
「そうですね、魔力のコントロールとは何か、自分自身と向き合って答えを見つけます」
沙羅とフィリスの力強い言葉に、私も頷く。
そして、私は二人の頭に優しく手を置き撫でながら、頑張ってください。と言う。
二人はくすぐったそうに笑って頷いたのだった。
「さて、真面目な話しはこのくらいにして……最近どうですか?学園生活の方は」
「すっごく楽しいよ!授業は難しい時もあるけれど……でも、その難しい物を理解した時
ってすごく嬉しくなるの!それにね、最近は、時間があるときだけ生徒会のお手伝いなんかもさせて貰ってたりして……
あ!勿論ルカとのお勉強会の支障にならない程度にね?」
そう言って、沙羅は楽しそうに笑う。
あぁ……良かった、あれから沙羅の学園生活が変な事になっていたらどうしよう……
そんな心配をしていたりしたけれど、それはどうやら私の取り越し苦労だったみたい。
「生徒会の方達と仲良く過ごせているんですね……良かった……」
「うん、フィリスもね……最初はギクシャクしてたけれど、今は……」
「えぇ、完全に元通りの関係に……とまではいきませんけどね、あの人に振り回されることも沢山ありますし」
そんな風にフィリスは言うけれど、フィリスの表情は凄く柔らかくて、とても穏やかな表情だった。
「二人共、言い表情をする様になったわね。私が二人と出会った時とは
大違い……」
私がそう言えば、二人は顔を見合わせふふっと笑った。
そして、私の方を向いて二人してこう言った。
ルカのお陰です、と。
「そんな事無いです、私はきっかけに過ぎないと私は思いますよ?」
私がそう言えば、二人はゆっくりと首を横に振った。
そんな様子を見ていたルークがははっ、と楽しそうな声を上げる。
どうしたの?と聞けば、ルカは自分の影響力
に気付いていないのかい?と 言われてしまい、私は首を傾げる。
すると、沙羅もフィリスもそれに賛同するかのように頷くのだった。
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