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病み上がりの体

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それから数日がで経ち、私の風邪も大分良くなって今はベッドでは無く 椅子に座って書類を読んでいる所だった。
まだ完全には治りきってはいないので、一時間だけとお兄様と約束をし
約束の時間になれば、メイドさんが私の様子を見に来る事になっている。
正直、私って信用されていないんだな……なんて思ったけれど、仕方がないので 大人しく一時間だけ仕事をする事にした。
本当は、またあの資料に目を通して少しでも早く次の手を打ちたい……
その為には、私の体調が万全じゃないといけない。
そんな事を考えていたら、扉をノックする音がし、はい。と返事を返すと
メイドさんが部屋に入ってきて、そろそろ時間になると、教えてくれたので
私は、ありがとう。と返事を返して、机の上を片付け始めた。
私のその姿を見ながらメイドさんが、思い出したように、声を上げる。
「どうかした?」
「午後からお医者様が来られます」
そう言われ、そう言えばお医者様が私の体調を見に来てくれる日だったっけ……と思い出す。
お医者様が来る事をすっかり忘れていた私は、メイドさんにありがとう
と伝えると、メイドさんは伝えられて良かったです。と言って、部屋から出て行った。
「お医者様が来るのなら、少し着替えて……時間まで大人しくしてよう」
私はそう決めて、クローゼットの中から新しい部屋着を取り出し着替えると
ベッドの中に入り、ベッドサイドテーブルの上に置いてあった本に手を伸ばしそれを読み始めた。
それから、暫くしてまた扉をノックする音が部屋に響き、はい。と返事をすると おお父様が部屋の中に入って来て、その後ろからお医者様が私の部屋に入って来た。
「こんにちは、お加減はいかがですか?」
「お陰様で起き上がれるくらいには……」
私がそう答えると、それは良かったです。と言ってお医者様は嬉しそうに笑う。
お医者様が私のベッドサイドの椅子に腰掛けると、診察を始め、私はそれに従うように 体を動かす。
「何処か痛いとか、苦しいとか、ありますか?」
「えっと……喉が少し痛いのと、まだ体が少し重くて……」
「ふむ、なるほど……」
そう言って、お医者様は少し考え込むような仕草をし、少し見せて貰っても
いいかな?と言って、私の喉に軽く触れ、次に私の目や口の中を覗く。
それからお医者様は何か納得した様に頷き口を開く。
「喉のお薬を出しておきますね。それから、なるべく栄養のある食事と睡眠を しっかりとって下さい」
「はい、本当にありがとうございます」
私がそう言うと、お医者様は、お大事に。と言って椅子から立ち上がり
帰宅の準備を始めた。
「私からも、本当にありがとうございました」
「今度からは、あまり無理をさせない様にしてあげてくださいね」
「はい、ちゃんと言い聞かせます」
お父様とお医者様のそんなやり取りを眺めながら、私はお医者様が 帰る準備が出来るのを待っていた。
お医者様は鞄に荷物を詰め終わると、それでは帰りますね。と言って 部屋を出て行った。
お父様も、お医者様の後を追いかけるように
、部屋を出て行ったので 部屋には私一人になる。
私はお父様とお医者様が出て行った扉を見つめながら小さくため息を零すと、ベッドに潜り込む。
そして、お医者様に言われた通りに栄養のある食事としっかりと睡眠をとる為に 瞼を閉じてゆっくりと夢の世界へと落ちていったのだった。
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