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また次の約束

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「そろそろ戻らないと」
ルークはそう呟いて、立ち上がる。
私はそれに、少し寂しさを感じてしまい。
つい、ルークの手を握ってしまった。
「夕食まで一緒に居られない?」
「ごめんね、帰ってからやらなくちゃいけない事があって……」
「そうですか……」
ルークは驚いた顔をしていたけれど、すぐに優しい笑みを浮かべ、また今度ね?とルークは言って私の頭をポンっと撫でた。
「はい……」
まだ、納得はしていなかったけれど、その言葉に、私は素直に頷く。
そうだ、このままルークとしばらく会え無くなる訳じゃ無い。
私は自分にそう言い聞かせて、手を離した。
そして、私は立ち上がりもう一度だけ中庭を見る。
もう少しだけここに居たかったけれど……
仕方が無いか……そう思っていれば後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえてきて振り返る。
「お兄様!どうしてここに?」
「ルカの場所を聞いたら、ここに居ると言われてね」
「今戻ろうと思ってた所なんです、ね?ルーク」
隣にいたルークに話を振ると、そうだねと返事が返ってきた。
すると、お兄様は、それじゃあ一緒に戻ろうか。と言い、歩き出した。
「夕食は食べていくのかい?」
「いえ、戻ってやらなくてはいけない事があるので…………申し訳ないです」
「いや、いいんだよ。いつも、ルカの事をありがとうね」
そんな会話をしている二人の後ろをついて行く様に、私も中庭を後にする。
********
「じゃあ、ここまでで大丈夫だよ。今日はありがとう」
「いえ!ルークと一緒で私も楽しかったです」
「ふふ、じゃあ、また」
「はい、また」
そんな挨拶を交わして、ルークと別れた。
私達がお話している間お兄様は、私から少し離れた場所で私達の様子を
観察する様に眺めていた。
「お兄様、お待たせしました」
「ううん、ちゃんとお話は出来た?」
「はい、沢山お話しできました」
そう言って、私はお兄様の手を取る。
すると、お兄様も優しく握り返してくれた。
二人手を繋ぎながら、家の中まで戻るとメイドさん達に お帰りなさいませ。と言われ、私とお兄様はただいま。と返した。
「ルーク君は本当に優しい子だね」
「え?いきなりどうしたのですか?」
いきなりお兄様にそんな事を言われて、私は驚いてしまった。
今まで、こんな話をした事なんて無かったから………
けれど……その言葉は嬉しくもあった。
ルークを褒めて貰えるのは、私を褒めて貰っているような気がしてとても嬉しかったのだ。
だから私は、はい。と言って頷いた。
「ルークは本当に優しい人です、いつでも私の事を気にかけてくれて、私の言いたい事や、したい事を理解してくれます。そんなルークに私は、沢山助けて貰いました」
今までずっと思っていた事をお兄様に伝えると、お兄様は少し驚いた顔をしたけれどすぐに優しい笑みを浮かべてそうか……と言って私の頭を撫でた。
その仕草がとても優しくて、お兄様はやっぱり私の兄なんだな、と改めて実感した。
「ルーク君は、いつもルカの事を優しい顔で見ていたからね」
「お兄様……ルークの事を見ていたのですか?」
「まぁ、可愛い妹の周りにいる人達の事はちゃんと観察しておきたかったからね」
そう言ったお兄様は、私の頭から手を離して歩き出してしまった。
私はそんなお兄様の後ろをついて行くように歩く。
お兄様は、昔から変わらないと言うか……いつも私の事ばかり心配してくれる。
そんなお兄様を私は、とても頼りにしているし大好きで尊敬もしている。
私もいつか、お兄様に恩返しができるだろうか。
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