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お互いの考え

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 「はぁ……色々と話しすぎちゃいました」
溜息をついて、私は窓の外を眺める。
窓の外には、下校する生徒の姿と、それを見送る教師の姿
あの頃と何一つ変わらない風景に、私はふふっ、と小さく笑い声を漏らす。
「そうだ、聖女様に高木さんも話がしたいと言っていた事伝えておかなくては……確か……ルーク様も来るって言っていたし……なんだか、緊張してきた」
聖女様とルーク様が何で私となんかと話したいと言ってきたのか……
それはきっと、私がこの世界の人間では無いからだろう。
高木さん以外の、異世界から来た人間なんて……
「気になるに決まってるわよね……敵対されてなければ良いのだけれど……」
私は、再び大きな溜息を吐き出して窓の外から目を逸らした。
そして……先程まで話していた、高木さんの顔を思い出す。
彼女なら、もしかしてこの世界で私がやりたかった事を手伝って貰えないだろうか? そんな期待が頭に浮かぶが、すぐに首を振ってその考えを頭から追い出す。
「生徒の彼女にそんな事頼めない、しかも……彼女には何も関係ない事だもの」
全く、馬鹿な事を……
自分自身に呆れながら、椅子から立ち上がり、私も帰る為の準備を始めた。
********
「アマミヤさんが私と同じ……」
部屋に帰った私は、さっきアマミヤさんと話した事を思い出す。
アマミヤさんも、私と一緒で別の世界からやってきて、この世界の住人として
過ごしている、違う所があるとすれば……
「アマミヤさんには魔力が無い……」
アマミヤさんはそう言っていた。
魔力が無い……それはいったいどんな気分なのだろうか……
私は、この世界に来てから、嫌ではあったけれど私の力を期待されあのアルマ様の婚約者となった。
そして……私の力をルカが、ルークが、エミリアが……
「そしてフィリスが認めてくれた……私はルカを超える聖女になれると……」
でも、アマミヤさんは?聖女として呼ばれたのに、魔力が無くなり
その瞬間、周りの人達が手のひらを返したかのように態度を変え……
「酷すぎるよ……どうしてそんな事が出来るの……???」
勝手にこの世界に呼んだくせに、自分たちの利益にならないと思ったら用無しだと切り捨てる……
そんな身勝手な行動に、私は怒りが湧き上がってくるのを感じた。
この国の人達が、すべてそうだとは思わないけれど……けれど、私は
この国の人達の事を、キモチワルイ……そう思ってしまった。
「……この事をルカは知っていたのかな……」
ありえない、そう思うけれど……ルカはこの国一の聖女様で
その聖女様が、その事を知らない訳が無い……
「なんて、私の考えすぎだ……」
ははっ、と乾いた笑いを小さくこぼし、私はベットに横になる。
ルカは、私の為にずっと頑張ってくれていた、そんなルカの事を疑うだなんて
私も嫌な人間になっちゃったのかな……
「はぁ……」
私は、もう何回目か分からない溜息をつき、そのまま目を閉じた。
次の日、私はいつもと変わらない日常を過ごしていた。
朝起きて、朝食を食べ学園へ向かう。授業を受けて友達と昼食をとり午後の授業を受ける そんな当たり前の日常をただ繰り返していた。
けれど、心のどこかで、ルカの事が気になって、上の空でフィリスに何度も心配されてしまった……
本当に、申し訳ないと思う。
そんな事を考えていても仕方が無いので、私は授業中は授業に集中する事にした。
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