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新しい手掛かり

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「しかし、どうやって知ったんだい?異世界から来た人の事なんて……」
「本当に偶然なのですが……沙羅の通う学園の司書さんがそうだったのです」
「沙羅の学園に……か……」
沙羅の通う学園と言う言葉に、ルークは顔をゆがませ
眉間に深い皺を寄せた。
「そんなに怪しまなくても大丈夫です、あの方は本当に優しい方なんです
むしろ……被害者というか……あまり詳しい事は話せませんが……」
私が苦笑いを浮かべそう言うと、ルークは少し考え込む仕草をしてから小さく頷き私を見た。
「ルカがそう言うのなら信じよう。気になる事があるのなら、本人から聞けば
いいしね」
「はい。それで、ルークの方はどうでしょうか?」
「んー、さっきも話したけれど、電話越しじゃ会話にあまり進展は見られなかったかな……」
ルークは少し困ったような表情でそう言った。
私は、なるほど。と頷き、続きの言葉を待った。
「けれど、アイツらを黙らせられるような切り札がもう少しで手に入りそうなんだ」
「切り札ですか?それは一体なんなんですか?」
私が首を傾げながらそう尋ねると、ルークは苦笑いを浮かべ それはまだ内緒。
と言った。
それは、ルークが私に意地悪をしたい訳では無くて、もっと確実な物を手に入れてから 話そうと思っているからだろう。
「分かりました、でも無理だけはしないでくださいね?」
「分かってるよ、無理して倒れでもしたら、ルカに心配かけてしまうからね」
「私だけじゃ無くて、皆にもですよ」
私がそう言って笑うと、ルークはどこか気まずそうな表情を浮かべて頷いた。
そして、誤魔化すように、コホンと咳払いをして私から視線を外した。
「ちゃんと分かってるのですか?」
「分かってます!無理しない様に、気を付けます」
そう言って、ルークはもう一度コホンと咳払いをすると椅子から立ち上がった。
そして、窓の近くまで行き、そこから見える景色を見つめた。
「…………ルーク、一つお願いをしても良いでしょうか?」
「お願い?どうかした?」
ルークは不思議そうに首を傾げ、私の方へ振り返りそう尋ねた。
私は小さく頷き、椅子から立ち上がり窓際まで近づき、ルークの隣に立つ。
そして、ルークの瞳をジッと見つめ、口をゆっくりと開いた。
「私にも、ルークの事を手伝わせてくれませんか」
「えっ?いや……それはありがたいけれど、ルカの負担に……」
「確かに、前に話し合った時私は沙羅の事を、ルークはあの人達の事を
そう約束しました。けれど……どうしても、私もあの人達の事が許せないのです。だから……お願いします……」
そう言って、私はルークに頭を下げた。
アマミヤさんの話を聞いてから、私はずっと考えていた……
アマミヤさんを、他の異世界から来た人達をあんな目に合わせた人達の事が
私は、どうしても許せなかった。
私の今のこの思いは、ただの偽善かもしれない。
けれど、あの人達を傷付けた人達を、私の力でどうにかしたい。
「何か理由があるみたいだね……分かった、ルカにもお願いしよう」
ルークは驚いた様な表情で私を見つめた後、そう言って優しく微笑み頷いてくれた。
私はその返事を聞いてホッと胸をなで下ろすと、顔を上げてもう一度ルークに微笑んだ。
「ありがとうございます、ルーク」
「ううん、ルカにも何かやらなくちゃいけない事があるんでしょ?」
「……はい」
「そっか、じゃあ俺からはもう何も言わない。それより、これからの事を
相談しようか」
そう言って、ルークは優しい顔で私の事を見つめた。
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