若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

ウィル先生との再会

「そうだ、ルカ君に会いたいと言ってた人がいたんだった……入って
来ていいですよ」
そう言って学園長が扉に向かって声をかける。
すると、ゆっくりと扉が開き一人の男性が入って来た。
その男性は、私の顔を見るなり嬉しそうな笑みを浮かべながら
私に近づいてきた。
「やぁ！聖女さ……うわぁっ！？？！」
男性が嬉しそうに私に話しかけながら近づいてきた瞬間、小さな段差に躓き 前のめりになり私に倒れた。
「ウィル先生大丈夫ですか！？？！」
「いてて……いやぁ～みっともない所見せちゃってごめんね～」
「いえ……ふふ、ウィル先生は変わりませんね」
そう言って、手を差し出すとウィル先生は私の手を取り立ち上がった。
その一連の流れを見ていた学園長は、呆れたような表情をしていたけれど、ウィル先生は、そんな事気にしていないような様子で話し出した。
「いや～ほんとにごめんね、ところで元気だった？ 変わったことはない？」
ウィル先生にそう言われ、えぇ。と言って私は小さく頷いた。
元気ですよ、と伝えるように微笑むとウィル先生も嬉しそうに微笑んだ。
けれどその微笑みは一瞬で真剣な表情に変わった。
「高木さんが僕の所に来たんだ、魔法を教えて欲しいってね。本当に驚いたよ……昔の君と同じ事を言いだしたから」
「それだけウィル先生が優秀な魔法使いだって事じゃ無いですか？」
「勘弁してよ……僕はただ、普通の先生としてやっていきたかったから、ここに来たのに……聖女様って言うのは本当に人使いが荒いんだから……」
そう言ってウィル先生は困ったように笑っていた。
そんなウィル先生の言葉に、私は思わず笑ってしまった。
「そんな事無いですよ？私は先生の力を認めてるからお願いしたんですよ」
私がそう言うと、ウィル先生は照れた様に頬をかきながらありがとうとお礼を言ってくれた。
本当にこの人は変わらないな……そう思いながら私は本題に入った。
「それで、先生は沙羅の力をどう思っていますか？」
「うーん……多分、ルカさんと同じ……いや、二人合わせたらもっと凄い力を
付けるんじゃないかと、僕は思っている」
「私以上の力……ですか？」
「うん。高木さんにも話したんだけれどね、二人の魔力の流れは本当にそっくりなんだ」
「私とルカが……？」
「そう……もしかしたら、あの二人はルカさんを超える聖女になれる素質があるのかもしれない……って、聖女様を前にこんな事言ったら失礼だよね」
あはは、と笑いながら言うウィル先生に私は首を横に振った。
「そんな事無いです、沙羅が私以上の……それって凄くわくわくする事ですね」
私がそう言って微笑むと、ウィル先生は驚いた様に目を見開いた。
けれどその後すぐに嬉しそうな笑みを浮かべ、あぁ！と元気よく答えた。
やっぱり、ウィル先生は本当にいい人だ……だからこそ沙羅を任せたいと思ったんだ。
「もしかしたら、この国に二人の聖女様が誕生するかもしれない。しかもそれの後押しをしたのが僕なんて……ちょっと嬉しいね」
ウィル先生は本当に嬉しそうな笑みを浮かべ、私にそう話してくれた。
私は、そんなウィル先生の言葉に胸がいっぱいになった。
良かった、ウィル先生に話して本当によかった……心からそう思った。
けれどまだ話は終わっていない。私はウィル先生から目を逸らさずに真っ直ぐ見つめたまま口を開いた。