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資料に書かれていたのは

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「はぁ……こんなにもいるのね……」
ルークが用意してくれた資料には、反聖女派と思われる人達の名前などが
ずらっと、書かれていた。
「私がこの国を離れると言ったら、この人達は喜んで賛成するでしょうね」
「あぁ、だが……沙羅達に危険が迫る可能性がある」
「あの人達ならやるでしょうね。でも、そんな事はさせない」
そう言い切った私を見てルークは嬉しそうに微笑み、あぁ……そうだな。と
小さく呟いた。
けれど、まだまだ不安な事も沢山ある。
「大丈夫、この事は俺が進めておくから安心して」
「でも……!!」
「大丈夫だよ、それにルカは沙羅達に魔法を教えるっていう、大切な役目があるだろ?だから、ね?」
そう言ってルークは優しく微笑む。
確かに、これだけは私にしかできない事だ。
ウィル先生に頼んだとはいえ、先生に出来る事も限られている。
「分かりました、でも……何かあったら私を頼ってください、ルークが
酷い目にあったなんて聞いたら私…………」
「大丈夫、それにあの人達には俺もルカも散々酷い目にあわされたから もう慣れっこだよ」
そう言ってルークは困った様な笑みを浮かべた。
確かに、私もルークもあの人達には酷い目にあわされた、と愚痴を言っていた
のを何度か聞いた事がある。
その度に、私はいつもあの人達に怒りを覚えたのを思い出す。
「慣れっこだなんて言わないでください……でも、分かりました。その代わり!
何かあったら私に連絡をする事!分かりましたか?」
私がそう言うと、ルークは嬉しそうに微笑みながら分かったよ。と答えてくれた。
そんなルークを見て私は少し不安を覚えるが……とりあえず今は目の前の事。
そう自分に言いかせて、再び資料に目を向けた。
******
「ふぅ……流石にちょっと休憩しようか」
「そうね、目が限界だわ……」
そう言って私とルークは、資料から目を外して体を伸ばした。
私は席を立ち、窓際に立つ。
窓から見える空はいつの間にか、黄昏色に染まり
かなりの時間が経っているのに、気が付いた。
「もう、こんな時間なんですね」
私がそう呟くと、ルークも立ち上がり私の隣まで来て 窓から外を見渡す。
「今日はこの辺りにしておく?」
「そうですね、明日学園に行こうと思って……続きはまた今度でも大丈夫ですか?」
私がそう言うと、ルークは頷いて資料をまとめていた。
私も手伝おうとするが、大丈夫だよ。と言われてしまってしまっては手伝うことも出来ず、私はルークが片付けている所をボーっと眺めていた。
「明日ウィル先生に会いに行くの?」
「えぇ、学園長にもお話しに行こうかと、やっぱり沙羅の事が気になるので」
「そっか……俺も行った方がいい?」
「いえ、本当に話を聞きに行くだけなので大丈夫です。ありがとうございます」
私がそう言うとルークはニコッと笑って、それなら良かった。と呟いた。
そして片付け終わったルークが私の方を向き、私の方まで歩いてくると
一緒に窓の外を眺めた。
「これから……大変になると思うけれど、一緒に頑張ろうね」
そう言ってルークは微笑んで私の手を取り、ギュッと握った。
その手の温もりが、とても心地よくて私は手を握り返しながら頷いた。
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