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皆が帰った後

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「さてと……もう少しだけ、続きをやりましょうか」
『ちょっと、ルカ!?休むんじゃなかったの?』
「あら、ムル何処へ行っていたの?」
私の耳元で、ムルの大きな声が響く。
準備している時、ムルの姿が見えないなとは思っていたけれど、どうやらムルは
姿を隠して私達の話をこっそりと聞いていたようだ。
『ルカの近くにずっといたよ?まぁ確かに隠れてはいたけど……それより!もう休まなきゃダメだよ?』
ムルはそう言って、私の事を心配してくれているようだった。
でも……私は、休んでられないの。
だって……間に合わないかもしれないから……
それに、さっき何かを掴みかけたんだ、今休んだらその掴んだ物が すり抜けてしまいそうな……そんな気がして。
だから、私はムルにこう言った。
「あともう少しで何か掴めそうなんです……だから……」
『……分かったよ、でも無理しちゃダメだからね?』
「ありがとうございます、体調が悪くなったらすぐに休みますから安心してください」
『約束だよ……?』
「はい、分かってます」
そう言って私は、再び宝石に魔力を込め始めた。
ムルは納得してくれたのか、それ以上私を引き止める事はしなかった。
そして……それからずっと作業を続けていたが、結局上手くはいかなかった。
******
私はそのまま徹夜で作業をしてしまい、気付いた時には朝になっていた。
日の光が窓から差し込み、私は眩しくて目を覚ました。
しばらくぼーっとしていると、段々と意識がはっきりしてきた。
そして、私は昨日何をしていたのか思い出そうとしていた。
すると、私の上に何かが乗っているような重さを感じたのでそちらに視線を移すと、ムルが眠っていた。
「ふふ、ずっとついていてくれたんですね、ありがとうございます」
そっと、ムルを起こさないように机の上に寝かせると、私は朝食の準備をする為にキッチンへ向かった。
簡単に朝食を作り終えて自室に持ってくると、ムルが目を覚ましたのか私の姿を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきた。
『ルカ!おはよう?大丈夫だった?』
「えぇ、大丈夫ですよ、おはようございます」
『宝石は…………やっぱりダメだったんだ』
「はい、何がいけないのでしょうか…………っと、ムルも一緒に朝ごはんにしませんか?」
そう言って私は、さっき作ってきたサンドイッチたちを見せる。
するとムルは、目を輝かせて大きな声で食べる!と言った。
私は、ムルを膝の上に乗せてあげ、一緒に食べ始める。
ハムとレタスのシンプルなサンドイッチだったけれど、ムルは美味しい、美味しいと言ってくれた。
「美味しいですか?」
『うん!すっごく!』
「ならよかったです、ふふ」
そんなやり取りを交わしながら、楽しい食事の時間が過ぎていった。
「さてと……」
『少し休まなきゃダメだよ?』
「わ、分かってますよ……でも、早く作らないといけないんです」
私はムルに心配されながらも、再び宝石に魔力を込め始めた。
少しでも時間を無駄に出来ないから……そう思って作業を続けた。
「ふぁ……」
頑張ろうと意気込んだ瞬間、思わずあくびが出てしまった。
徹夜で作業していたから、その影響だろうか……
でも、そんな事は言ってられないし……そう思いながら私は気合を入れ直した。
するとムルが何かを言いたそうにしているのに気づいたので私はムルにこう言った。
「大丈夫ですから……」
『ダメです!ほら少し寝なさい!』
「わわっ……!」
ムルの魔法で、私の体は浮かび上がり、私は抵抗する間もなくベッドに降ろされた。
ムルは満足したように頷くと、私のお腹の辺りをぽんぽんと優しく叩き、おやすみなさいと言って消えてしまった。
あぁ、早く完成させないといけないのに……そんな事を考えながら私の意識はどんどん薄れていき……眠ってしまった。
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