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皆の力を借りて

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「その、皆さんにも一回試して欲しい事があるのですが」
「試して欲しい事?それってどんなの?」
「えっと……アクセサリー自体は完成しているのですが、それにつける宝石に魔力を込めるのが上手くいかなくて。皆さんがやる所を見たら何かヒントが得られるかなと」
私がそう言うと、皆は少し考えた後納得したようで、じゃあやってみよう。と言ってくれた。
私はその言葉が嬉しくて、笑顔でありがとうと言った。
「じゃあ、まず私からやってみるよ!」
そう言ってエミリアが石の上に手をかざす。
すると、エミリアの手が淡く光り始め、それに共鳴するかのように宝石が光り
輝きだした。
「エミリア大丈夫?」
「うん!これをこのままキープすれば……あっ!」
パキンっ。
エミリアが少し気を抜いた瞬間、宝石は音を立てて割れてしまった。
エミリアはごめん……と言って、悲しそうな顔をしながら割れた宝石を見つめている。
私は慌てて、大丈夫ですから、とフォローすると
今度は私がやってみるね?そう言ってフィリスが宝石に手をかざし
宝石に魔力を込め始めた。
「んーこんな感じでいいのかな」
宝石は先程エミリアがやった時と同じように光輝きだした。
上手くいく、そう思った瞬間……
やはり宝石は、音を立てて砕け散った。
「ゴメン……で、でもフィリスなら……!!」
「えぇ!?私にも無理ですよ……」
「やってみないと分からないって!ほら!」
沙羅はそう言ってフィリスに宝石を手渡し、魔力を込めてみるように言った。
フィリスは困った顔をしながら、沙羅の言う通りにした。
すると……
パキンっ!! 先程と同じように音を立てて砕け散ってしまった。
「ほら……」
「何がダメなんだろう……」
「ごめんねルカ、力になれなくて」
「いいえ、いい参考にさせて頂きましたから」
そう言って、私は宝石に魔力を込め始めた。
皆さんのおかげで、少しだけだけれど何かを掴めたような気がする。
今度こそ成功して……そんな思いを込めながら、私は魔力を宝石に込める。
すると……宝石は今までよりも強く輝きだした! パキンっ!! と先程と同じ様に音を立てて砕け散ってしまったけれど、それは、今までとはどこか違った気がした。
「ダメだったね……」
「いいえ、そんな事も無いみたいです、今ので少しだけですが感覚を掴めました。これも、皆さんのお陰です本当にありがとうございます」
そう言って私は、笑顔で皆にお礼を言った。
皆は少し照れくさそうに笑っていたけれど、どこか嬉しそうな顔をしていた。
その後も少し休憩を挟んで、また作業を再開した。
その後も、皆で宝石に魔力を込め続けたけれど、やっぱり宝石を割ってしまう事が多かった。
けれど、段々とコツが掴めてきたのか宝石を割る回数も少なくなっていった。
それでも、私が思っているような効果を持った宝石を作る事は出来なくて、時間だけが過ぎていった。
「うーん……何が足りないんでしょうか……」
「ルカ、そろそろ休まないと体壊しちゃうよ?」
「そうそう!それにもう夕方だし、そろそろお開きにしよ?」
沙羅とエミリアはそう言って私の手を掴み作業を止めさせた。
フィリスに助けを求めるように視線を送るけれど、彼女もまた同じ事を言った。
確かに、このまま続けても完成は出来ないだろう。
私はそう考えて、分かりましたと言い作業の手を止め
その後、私達は後片付けをして家に帰る為の支度を始めた。
「お料理の方は出来ませんでしたね」
「飾りつけは大体出来たし、明日やれば大丈夫だから今日はゆっくり休んで」
「はい、分かってます。皆さん気を付けて帰ってくださいね?」
私がそう言うと、三人は笑顔で頷き、帰りの挨拶を済ませ それぞれ自分の家に帰って行った。
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