上 下
170 / 321

作業再開

しおりを挟む
私達が部屋に戻ると、二人は早速作業を再開していた。
「あ、二人ともおかえり~」
「ただいま戻りました、作業は進んでますか?」
「う~ん……まぁまぁって所かなぁ~」
少し苦笑いを浮かべながら、エミリアはそう言った。
私達も再開しましょうか、とフィリスの方を向いて問いかけた。
フィリスはそうですね、と言って、作業を始める準備を始めた。
「そういえばさ、招待状ってもう出したんだよね?」
「えぇ、昨日ルーク宛に招待状は出しておきました。ちゃんと届くといいのですが……」
私は昨日ルークに出した招待状の事を思い出した。
ちゃんと届いて、そして来てくれるといいんだけど……
そんな心配をしていると、エミリアが私の肩を叩きながら大丈夫だって!と言って笑った。
彼女の言葉に背中を押され、私はそうですね、と言って微笑んだ。
「招待状で思い出したんだけどさ、ルカのプレゼントって完成したの?」
「えっ……!?」
「えっ……ってまさかその反応……」
「いえ、なんでもありません…!!ちゃんと完成させてますから……!!」
慌ててごまかしたけれど、エミリア達は私の事を疑っている目をしていた。
何とか話を逸らさないと……
「えっと……こんな事してないで早く作業をしないと!」
そう言って、私は三人の事を無視して作業に戻った。
三人は未だに私の事を疑うような目で見ていたけれど、私が作業に集中すると、諦めてくれたのか自分たちの作業へと戻って行った。
*********
それからしばらく経ち、飾りつけ達が大体作り終わる頃、エミリアがポツリと
呟いた。
「ねぇ……さっきの話だけどさ、アレやっぱり嘘だよね?」
「…………どうしてそう思うのですか?」
「いや、ルカのあの反応見たら誰だって分かるって」
ケラケラと笑いながら、エミリアはそう言った。
やっぱり……隠し通すのは無理だったみたいね……
そう心の中で思いながら私は口を開いた。
「そうよ……招待状も出したのにプレゼントも用意できてないなんて言えないじゃない……」
私はそう言って、少しため息をついた。
こんな情けない姿、皆には見せたく無かったな……
私はそんな事を考え、肩を落とした。
すると、沙羅が私の頭を撫でてこう言った。
「私達も手伝うから大丈夫だよ、ね?」
「そうです!私も手伝います!」
「えっ?えっ?いや、そんなの悪いですよ……!」
沙羅とフィリスの提案に私は慌てて首を横に振った。
こんな事で皆の手を煩わせるなんて……と思い、必死に断り続ける。
すると、エミリアが私の肩に手を置いた。
そして、私に向かってこう言った。
「確かにルカの気持ちも分かるよ?折角のプレゼントなんだから自分一人の力でどうにかしたいって、でもさ……私達にもルカの力にならせてよ、ね?」
エミリアは私の目を見て、そう言った。
そんな彼女の目を見て私は何も言い返せなかった。
「じゃあ……アイディアを出すぐらいならいいかな?どう?」
「エミリア……沙羅にフィリスも……分かりました、少し手伝って
ください」
私がそう言うと、皆は嬉しそうに笑ってくれた。
私一人で悩んでいたけれど、皆が力を貸してくれるなら百人力だ。
そう心の中で思いながら私は皆にある提案をした。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

最後に報われるのは誰でしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
散々婚約者に罵倒され侮辱されてきたリリアは、いい加減我慢の限界を迎える。 「もう限界だ、きみとは婚約破棄をさせてもらう!」と婚約者に突きつけられたリリアはそれを聞いてラッキーだと思った。 限界なのはリリアの方だったからだ。 なので彼女は、ある提案をする。 「婚約者を取り替えっこしませんか?」と。 リリアの婚約者、ホシュアは婚約者のいる令嬢に手を出していたのだ。その令嬢とリリア、ホシュアと令嬢の婚約者を取り替えようとリリアは提案する。 「別にどちらでも私は構わないのです。どちらにせよ、私は痛くも痒くもないですから」 リリアには考えがある。どっちに転ぼうが、リリアにはどうだっていいのだ。 だけど、提案したリリアにこれからどう物事が進むか理解していないホシュアは一も二もなく頷く。 そうして婚約者を取り替えてからしばらくして、辺境の街で聖女が現れたと報告が入った。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...