若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

大切な人達

「大変だったな……ルカ」
そう言って、お父様は私の頭を撫でてくれた。
私はそんなお父様にお礼を言い、心配を掛けてしまった事を謝った。
そんな私を見てお母様も微笑みながら私の事を抱きしめてくれ、私も抱きしめ返した。
「バレていたんですね……」
と、私は二人に聞くと二人は静かに頷いてくれた。
家族には婚約破棄した時に沢山迷惑をかけたから、今回の魔女の事は
黙っておこう、そう思っていたのに……どうやら、家族にはバレバレだったみたい。
「あの、お兄様もこの事を知って……」
「もちろん知っているよ、だってルカの事を教えてくれたのはクロードだったからね」
「お兄様が……？」
「えぇ、ルカが危ない事に巻き込まれているってね、すぐ助けに行かなきゃって言ってたのよ」
お母様はそう言って笑ったけれど、きっとお父様とお母様も同じ気持ちだったんだ……私はこの人達にどれだけの心配と迷惑を掛けたら気が済むのだろうか……。
私は、また心配をかけたことを謝罪して、もう大丈夫です、ありがとうございます。とだけ伝え、今日はまだ疲れているからと言って、自室に戻った。
*******
「はぁ…………最低な娘……ね」
自室に戻り、一人になった瞬間私はそう呟いた。
だって、本当に最低な娘だもの、家族や友達に沢山迷惑をかけて心配掛けて……
けれど、こうするしか無かった。魔女の事を放置すればいずれ、この国にも大きな被害が出る。それを防ぐために戦うのが……聖女の私の務めなのだから。
「それにしても、沙羅は大丈夫かしら」
あんなに沢山の魔力を使ったんだ、倒れてないといいけれど……。
沙羅は聖女だけれど、その力に目覚めたのはきっと最近の事だろうから、力の使い方もまだ慣れていない状態で、あの魔法を使った……
心配だけれど、私が今彼女にして上げられることは何もない。
私が何かしたところで、彼女の為にはならないから。
それに、彼女の周りには沢山の素敵な友人達がいる、きっと彼女たちは沙羅にとってとても大切な存在になるだろう。
私はベッドに倒れ込み、そっと目を閉じた……疲れているからか、すぐに眠くなり、そのまま眠りについた。
****
翌朝、私はいつも通り目を覚まし起き上がった。
窓の外を見ると朝日が眩しくて思わず目を細めた。
まだ少しぼーっとする頭でベッドから立ち上がりカーテンを開けると、窓の外は綺麗な青空が広がっていた。
静かで平和な朝……この平和な朝を迎える為に私達は頑張ったんだ。
『ルカ！おはよう！』
「ムル、おはよう。よく眠れた？」
『うん！ルカはどう？』
「久しぶりによく眠れたわ」
私がそう言って、ムルを抱きしめるとムルは嬉しそうに笑ってくれた。
私はムルを連れて、身支度をしお父様とお母様に挨拶をして家を出た。
目的地は、エミリアの家。
昨日別れてから何も連絡がないので、少し心配だ。
何かあったのかもしれない、そう思って……心配しながらエミリアの家に向かった。
暫く歩くとエミリアの家にたどり着いた、私は早速家を訪ねるとすぐにメイドさんが出迎えてくれて中に入れてもらえた。
そして、リビングまで案内してくれるとそこにはエミリアが座ってお茶を飲んでいた。
「ルカ！どうしたの？」
「エミリアが心配で………大丈夫だった？」
「うん！まぁ、少し体は痛いけれどねぇ～」
えへへ、と笑いながらエミリアは言っていたけれど、その表情は少し暗いように感じた。
私はとりあえず、エミリアと向かい合う場所に座り心配掛けた事、巻き込んでしまった事の謝罪をし、そしてお礼を言った。
すると彼女は、私を安心させるように微笑みながら大丈夫だよ！と言った。
「そう言えば、ルークから連絡あった？」
「ルークから？いいえ、まだ何も……」
あの三人を連れて行った後ルークからの連絡はまだ何も無い。
でも、きっとルークなら大丈夫……そう思いながら、お茶を一口飲み窓の外を見た。