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聖女の力

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「…………私に何をしろと?」
私は魔女の真意を探る為、魔女にそう問いかけた。
すると、二人は顔を見合わせてクスクスと笑いながら話し出した。
その姿は、まるで悪魔のように見えて背筋がゾクッとした。
そんな私の恐怖心も知らずに二人は楽しそうに話を続ける。
「前に言ったでしょう?貴女の力が欲しいと」
「私の力は上げられません、前にも言いましたよね?」
「えぇ……覚えているわ、でもあの時は邪魔者が沢山いたでしょう?だから本当の事を言えなかったのよね?」
そう言ってまたクスクスと笑う魔女を見て、私は改めて恐怖心を抱いた。
でも、私が力を上げることは出来ない………それは誰にだって分かる事。
「貴女に私の力を上げた所で貴女は聖女にはなれません」
「そう……貴女はやっぱり私の事を下に見ているのね」
「何も言って……」
「お前なんか聖女になれない、お前のような人間は聖女ではない……皆からそう言われてきた……お前もやっぱりそっち側の人間だった」
そう言って、魔女は憎しみの籠った目で私の事を見た。
それは違う……と思い私はまた口を開こうとしたけれど、ローブの男に遮られてしまった。
男はニヤニヤと笑いながら私を見ると、口を開いた。
するとその瞬間、先程とは比べものにならない程の魔力が溢れ出した。
「マリー様、マリー様こそが聖女になるべき存在……あんな人間なんかとは違います」
そう言って男は私の事を見てニヤリと笑った。
私はそんな男を睨みつけると、またも男はクスクスと笑いだした。
そして私の方をジロッと見て口を開く。
「貴女の力を渡せば帰してやると言っているんです、大人しく従ったらどうです?」
「だから、それは出来ませんと何回も言っています。それに……私の力を貴女に渡したとしてこの力を貴女に扱えない」
「……っ貴女はどこまでも私の事を馬鹿にするのね」
そう言って魔女は怒りの表情を浮かべた。
そんな魔女を見て私は、またも冷静に口を開いた。
「あの力は精霊に認められた人間にしか使いこなす事が出来ない……そして、適正人間があの力を使おうとすれば……」
「うるさいうるさい……!!!!!」
「なら、試してみますか?」
「はっ……同情ですか?聖女様はお優しいですねぇ」
そう言ってニヤニヤと笑う男が、私を馬鹿にするような目で見ていた。
私はそんな男を無視して、ローブの男の前に立った。
「違います……そんなのじゃありません」
「同情じゃ無かったら何なの?」
ローブの男を押しのけて、魔女は私の前に現れそう問いかける。
私はそんな魔女の事を真っ直ぐ見つめ口を開いた。
そして、私は静かにその答えを口にした。
「いいえ、同情ではありません」
「でも……!!!」
「じゃあ、試してみましょうか?」
「えっ?」
そう言って私は魔女の前に手をかざした。
すると次の瞬間、魔女の体に魔法陣が出現した。
そしてそのまま私はその魔法陣に魔力を流し込んだ。
「これが聖女の力……!!これで私も……はは……あははは……!!」
そう言って喜ぶ魔女を私は冷めたような瞳で見ていた。
次に何が起こるか私にはすべて分かっていたから……
私は、手をぎゅっと握り魔女の方を見つめた。
「これで私が聖女に……ふふっ、この力があれば貴女なんてもう怖くなんか……あれ?どうして魔法が発動しないのです!?ねぇ!?」
「……だから言ったでしょう?貴女は聖女になれないと……」
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