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フィリスの過去
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「まずは、昨日は申し訳ありませんでした……」
「そんな!フィリスは何も悪くないよ……!!」
「沙羅……ありがとうございます、昨日は気が動転していて……沙羅に対して失礼な事を言ってしまいました……そんな訳ないのにね」
そう言ってフィリスは、寂しそうに笑った。
私は、その笑顔を見て胸が苦しくなった。
こんな顔をさせたくなかったのに……
「昨日言っていた会長の言う事を信じたって言うのは……?」
「昔もあったのです……あれは、私が中等部にいた時でした」
フィリスは寂しそうな表情を浮かべ、静かに語り始めた。
「当時、私には友人がおりました。
お互いに趣味が合い、放課後はその子と過ごす事が殆どでした。
けれどある日、その子は私の事を避けるようになったのです」
「喧嘩したとか……?」
「いいえ、喧嘩なんてしていません。
昨日の放課後までは普通に過ごしていたのですから」
そう言って、フィリスは首を横に振った。
喧嘩していなかったのなら何故?私にはその理由が全く分からなかった。
私が不思議そうな顔していると、フィリスは苦笑いしながら続きを話してくれた。
「普通そんな顔になりますよね、当時の私もそう思ってその子に聞いたんです。
けれど、その子は私と口を聞いてくれないどころか、目も合わせて
くれなくなりました。それでも何度か話しかけてみたりしましたが、結果は同じでした」
そう言って、フィリスは俯いてしまった。
きっと、その時の事を思い出しているんだろう。その様子が、あまりにも辛そうだったので、思わず声を掛けようとしたけれど、私よりも先にフィリスが口を開いた。
「そして、私が学校で孤立し始めた頃、ユーリが話しかけてきたんです……
どう?楽しんでいる?ってね」
「楽しんでる?どういう意味なんだろう……」
私は、全く予想もつかない言葉に困惑していた。
そんな私の様子に気付いたのか、フィリスは続けて話し出した。
「私もそう聞き返したわ、楽しんでるって何?ってね。そうしたらね、ユーリは笑いながら言ったの。あの子ったら、私が流した噂を本気にしちゃって馬鹿よねって」
「会長さんが流した噂って一体どんな……まさか、私の噂みたいな
?」
それを聞いたフィリスは、一瞬驚いたような表情を見せた後、悲しげな目をして小さく呟いた。
それは、肯定の言葉だった。
どうして………なんで、あの人はそんな酷い事が出来るんだ。
私には理解できなかった、人が悲しみ苦しむのを見て一体何が楽しくて、嬉しいのか……
「おかしいよ……なんでそんなことが出来るの?あの人はフィリスの幼馴染なんでしょう?まだ私に対してなら分かるけれど、フィリスに対してそんな事出来るだなんて絶対おかしい」
「そうよね、普通はそう思うわ……けれどユーリは違うの。人が悲しんでいたり苦しんでいたりするのを見るのが好きで、それを見て楽しむような子。
その証拠に、あの子は私の友人に、ある事ない事吹き込んだの。私があの子と一緒にいるのは貴女のお金目当てとか、あの子優しそうに見えるけれど裏では貴女の悪口を言っていたりするのよ?とか言っていたらしいの」
「そんな……!!フィリスがそんな事言う訳ないじゃん!!申し訳ないけれど、その話しを信じたフィリスのお友達もどうかと思う」
私は怒りを抑えることが出来なかった。
だって、友達なら友達の事を信じるものでしょう?
良く分からない噂の方なんかを信じないで、フィリスの話を聞くべきだ。
だって、そうでしよう?もし、私がフィリスの噂を聞いたとしたら、まずフィリスに話を聞きに行くと思うもん。
「沙羅は優しいのね、でもあの子はユーリの言う事を信じてしまったの、しかもユーリの取り巻きの子がやったいじめを私がした事にされて……私はただ一人の友人を失ってしまった」
そう話すフィリスの顔はとても辛そうだ。
きっと、そのお友達の事を本当に大切に思っていたんだろう。
だからこそ、会長の事を許せないのだろう。
あの時、生徒会室の前にいた私を見てフィリスは、何を思ったのだろう。
「だから……あの時フィリスが生徒会室の前にいた時、目の前が真っ暗になりました。また、あの時と同じことが起きてしまったと……そう思いました」
「ちがうよ……!私は……ただ会長さんに話を聞きたくて……」
そう言って、今度は私があの時あった事を話し始めた。
「そんな!フィリスは何も悪くないよ……!!」
「沙羅……ありがとうございます、昨日は気が動転していて……沙羅に対して失礼な事を言ってしまいました……そんな訳ないのにね」
そう言ってフィリスは、寂しそうに笑った。
私は、その笑顔を見て胸が苦しくなった。
こんな顔をさせたくなかったのに……
「昨日言っていた会長の言う事を信じたって言うのは……?」
「昔もあったのです……あれは、私が中等部にいた時でした」
フィリスは寂しそうな表情を浮かべ、静かに語り始めた。
「当時、私には友人がおりました。
お互いに趣味が合い、放課後はその子と過ごす事が殆どでした。
けれどある日、その子は私の事を避けるようになったのです」
「喧嘩したとか……?」
「いいえ、喧嘩なんてしていません。
昨日の放課後までは普通に過ごしていたのですから」
そう言って、フィリスは首を横に振った。
喧嘩していなかったのなら何故?私にはその理由が全く分からなかった。
私が不思議そうな顔していると、フィリスは苦笑いしながら続きを話してくれた。
「普通そんな顔になりますよね、当時の私もそう思ってその子に聞いたんです。
けれど、その子は私と口を聞いてくれないどころか、目も合わせて
くれなくなりました。それでも何度か話しかけてみたりしましたが、結果は同じでした」
そう言って、フィリスは俯いてしまった。
きっと、その時の事を思い出しているんだろう。その様子が、あまりにも辛そうだったので、思わず声を掛けようとしたけれど、私よりも先にフィリスが口を開いた。
「そして、私が学校で孤立し始めた頃、ユーリが話しかけてきたんです……
どう?楽しんでいる?ってね」
「楽しんでる?どういう意味なんだろう……」
私は、全く予想もつかない言葉に困惑していた。
そんな私の様子に気付いたのか、フィリスは続けて話し出した。
「私もそう聞き返したわ、楽しんでるって何?ってね。そうしたらね、ユーリは笑いながら言ったの。あの子ったら、私が流した噂を本気にしちゃって馬鹿よねって」
「会長さんが流した噂って一体どんな……まさか、私の噂みたいな
?」
それを聞いたフィリスは、一瞬驚いたような表情を見せた後、悲しげな目をして小さく呟いた。
それは、肯定の言葉だった。
どうして………なんで、あの人はそんな酷い事が出来るんだ。
私には理解できなかった、人が悲しみ苦しむのを見て一体何が楽しくて、嬉しいのか……
「おかしいよ……なんでそんなことが出来るの?あの人はフィリスの幼馴染なんでしょう?まだ私に対してなら分かるけれど、フィリスに対してそんな事出来るだなんて絶対おかしい」
「そうよね、普通はそう思うわ……けれどユーリは違うの。人が悲しんでいたり苦しんでいたりするのを見るのが好きで、それを見て楽しむような子。
その証拠に、あの子は私の友人に、ある事ない事吹き込んだの。私があの子と一緒にいるのは貴女のお金目当てとか、あの子優しそうに見えるけれど裏では貴女の悪口を言っていたりするのよ?とか言っていたらしいの」
「そんな……!!フィリスがそんな事言う訳ないじゃん!!申し訳ないけれど、その話しを信じたフィリスのお友達もどうかと思う」
私は怒りを抑えることが出来なかった。
だって、友達なら友達の事を信じるものでしょう?
良く分からない噂の方なんかを信じないで、フィリスの話を聞くべきだ。
だって、そうでしよう?もし、私がフィリスの噂を聞いたとしたら、まずフィリスに話を聞きに行くと思うもん。
「沙羅は優しいのね、でもあの子はユーリの言う事を信じてしまったの、しかもユーリの取り巻きの子がやったいじめを私がした事にされて……私はただ一人の友人を失ってしまった」
そう話すフィリスの顔はとても辛そうだ。
きっと、そのお友達の事を本当に大切に思っていたんだろう。
だからこそ、会長の事を許せないのだろう。
あの時、生徒会室の前にいた私を見てフィリスは、何を思ったのだろう。
「だから……あの時フィリスが生徒会室の前にいた時、目の前が真っ暗になりました。また、あの時と同じことが起きてしまったと……そう思いました」
「ちがうよ……!私は……ただ会長さんに話を聞きたくて……」
そう言って、今度は私があの時あった事を話し始めた。
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