上 下
97 / 321

フィリスとユーリの関係

しおりを挟む
「こんにちは、高木沙羅さん。生徒会室に何か御用ですか?」
「あ……えっと……」
そう聞かれたけれど、私はなんと答えればいいか迷っていた。
確かに、会長に話しをしようと思ってここに来たけれど、今はフィリスの様子が気になる。
「あの子、貴女に随分と懐いているみたいけれど……何かされていない?大丈夫?」
「なんでそんな事を聞くんですか?」
「貴女は大切な聖女様ですから、あの子が何か何かしていないか心配なのです」
「ご心配なく。私とフィリスは会長が思っているような仲では無いので。それより、私会長に聞きたいことがあったのですが、いいですか?」
「あら、私にこたえられる事なら何でも」
そう言って、会長は微笑んだ。
私は、そんな会長を見て本当にこの人が、フィリスの事を拒絶し
私の噂を流した張本人なのか、信じられなかった。
でも、ここで引き下がるわけにはいかない。
私は、意を決して口を開いた。
「会長が私の噂を流した、とミホさんから聞きましたが、本当ですか?」
私がそう言うと、会長の顔つきが変わった。
先程までの優しい表情とは違い、冷たく鋭い目付きになった。
そして、暫く黙り込んだ後、ようやく会長が口を開く。
「あの子喋ってしまったのね……はぁ……やっぱり、庶民の子はこれだから嫌だわ……」
そう言って、会長は私から目を逸らし、窓の外を見た。
その姿はまるで、自分に言い聞かせているようにも見えた。
けれど、すぐに会長はこちらを向いて、今度は冷たい笑みを浮かべる。
私は、その変わり様にゾクッとした。
「そうよ、私があの子に命令して広めてもらったの、どう?楽しめた?」
「ふざけないでください……!!私がどんな気持ちだったか……!!」
私は、思わず感情的になって、声を荒げてしまった。
そんな私とは対照的に、会長は落ち着いた様子で話を続ける。
その態度に、私は更に苛立った。
「なんであんな噂を広めたのですか……?」
「私より目立つ生徒がいるのが許せなかったから、かしら?」
会長はクスクスと笑いながらそう答えた。
私は、そんな会長を睨む。
けれど、会長は全く動じていないようで、相変わらず余裕そうな表情をしていた。
「もう一つ聞いてもいいですか?」
「えぇ、なんでしょうか?」
「会長はフィリスと幼馴染なんですよね?どうしてフィリスに対してあんな事をしたのですか」
「あら、昔の事あの子に聞いたのね……そうよ、私とあの子は幼馴染だった。小さい頃からずっと一緒にいたの。でもね、あの子は私との約束を破ったの……」
そう話す会長の目は、悲しげな色を帯びていた。
けれど次の瞬間、また会長の目の色が変わる。
それは、怒りに満ちた目で、その視線は真っ直ぐに私を見ていた。
「だから私はあの子の事を恨んでいるの、私を裏切ったあの子を……!」
会長は、両手を握りしめ、そう呟いた。
どうやら、二人の間にはとても深い溝があるようだ。
とても私には入り込めないくらい……
「今日はこの辺りにしておきましょうか、また遊びましょうね沙羅さん」
そう言って、会長は生徒会室へと戻って行った。
一人残された私は、複雑な思いのまま帰ることにした。
帰る途中、フィリスに連絡を取ってみるけれど返事は無かった。
「やっぱり嫌われちゃったのかな……」
私は、落ち込みながらも家路についた。
翌日、私はフィリスに会いに教室まで行ってみたけれど、休み時間になると何処かに消えてしまう為、会うことが出来なかった。
昼休憩になり、食堂で昼食を取っていると、そこにフィリスがやって来た。
「少しお話があります、今大丈夫でしょうか」
「えっ……う、うん!!もちろんだよ!」
私は突然の事に驚いて、慌てて返事をした。
フィリスは私の返事を聞くと、ホッした様な表情をして
私に付いて来てくださいと言った。
私は、言われるがまま、フィリスの後について行く。
連れてこられた場所は、いつも昼食を食べている裏庭だった。
「ねぇ、フィリス昨日は……」
「待って、私から話させてください」
そう言ってフィリスは、私の言葉を遮った。
そして、深呼吸した後、私の方を見ると、ゆっくりと話し始めた。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

処理中です...