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帰る途中に……

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私達は帰る為に、城から宿へと向かっていた。
このまま帰ることも出来たけれど、沢山お世話になった女将さんに
挨拶もしないでいなくなるのは、やっぱり嫌だったので今日帰ることを 伝えることにした。
宿が見えてきたとき、店の扉が勢いよく開き中から 人が飛び出して来た。
私達はその人物を避けようとしたが、避けきれずぶつかった。
その衝撃で、私は尻餅をついた。
「すっ……すいません!!大丈夫ですか!?怪我は!?」
「いえ……大丈夫です、それより何かあったのですか?」
「えっと……その……」
その人物は、困った表情を浮かべていた。
その様子に、私達は顔を見合わせ首を傾げる。
そして、彼の後ろにある店の看板を見ると そこには、"閉店"の文字があった。
私は立ち上がり、彼に手を貸す。
「えっ……?閉店?女将さんはどうしたのですか?」
「その……いきなり倒れてしまって……」
「えっ!?女将さんが!?大丈夫なの?!」
エミリアが慌てながら、その人に詰め寄る。
彼は、そんな私達の様子に戸惑いながらも答えてくれた。
「今日の朝からでしょうか……体調が悪そうにしていたんです。それで、女将さんに大丈夫か?と聞いても大丈夫、としか言わなくて……とりあえず様子を見ていたら急に倒れたんです」
「そんな……!!そんな事になっているなんて気づかなかった」
「今女将さんは?」
「お医者様に診てもらったのですが、原因不明だと言われまして……今は、部屋で休んでいます。」
「あの……もしかしたら何か出来るかもしれません、女将さんの所へ連れて行ってもらえませんか?」
「えっ!?でも……お医者様もダメだったのに……」
「大丈夫、私に任せてください」
「…………分かりました」
私達三人は、急いで女将さんのいる部屋へと向かった。
部屋の前に着くと、ノックをして入る。
ベッドの上で苦しそうにしている女将さんがいた。
私達が入ってきたことに気がついたのか、ゆっくりとこちらを見た。
そして、私達に笑顔を向ける。
「あら、貴女達どうしたの?」
「女将さんが倒れたって聞いて心配で……」
「そんな顔しないで?大丈夫!少し疲れていただけだから!」
そう言うと、女将さんは無理矢理起き上がろうとする。
それを慌てて止めると、彼女は苦笑いをしながらまた横になる。
「ごめんね……まだちょっと起きれないみたい。お医者様も原因が分からないだなんて言っててね……情けないわ」
「あの、少し手に触れてもいいですか……?」
「?えぇ、大丈夫だけれど」
女将さんに許可をもらい、私は彼女の手のひらに触れる。
私はそのまま、目を閉じ集中する。
すると、ほんの少しだけだけど彼女の中に嫌な力を感じる事が出来た。
これをどうにかすれば女将さんの体調も良くなると思うけれど、それは私が
聖女だとバレてしまうだろう……けれど、そんな事を悩んでいる暇はない。
「大丈夫、これなら治せると思います」
「えっ!?本当ですか!?」
「えぇ、任せてください」
私は、両手を女将さんに向けてかざし呪文を唱える。
すると、優しい光が女将さんを包み込む。
暫くすると、光は消えていった。
すると、さっきまで辛そうな表情をしていた女将さんが穏やかな表情になっていた。
「どうでしょうか……?」
「……あぁ……凄く体が軽い……この力はまさか……」
「せ、聖女様!?この国に聖女様がどうして!?」
「えぇ、色々ありまして……でも、女将さんが元気になって良かったです」
「あぁ……聖女様ありがとうございます……なんとお礼したらいいのか……」
「そんな……!私は何もしてません、むしろこんな怪しい私達に優しくしてくれて本当に感謝しているんです!だから、気にしないでください」
私は、微笑みながら女将さんに言うと女将さんも微笑んだ。
そして、女将さんは体を起こし立ち上がる。
私がまだ起き上がらない方が、と言ったけれど女将さんはもう大丈夫!と言って
私達の顔を見る。
その瞳は、いつもの女将さんに戻っていた。
「本当にありがとう、この後はどうするんだい?」
「この国での用事も終わったので今日帰るつもりでした」
「そうかい……短い間だったけれど、とても楽しかったよ」
女将さんは、涙を浮かべながら私に抱きついてきた。
私も抱きしめ返す。
その温かさに私も泣きそうになる。
女将さんは私から離れると、今度はエミリアに目線を移す。
「あなた達もありがとね、またこの国に来ることがあったらいつでも来てちょうだいね」
その言葉に、エミリアとルーク”はい”と答え
私達は、女将さんに別れを告げ部屋を出た。
宿を出る時、女将さんは何度も振り返り手を振ってくれた。
私達も振りかえす。
あんな事があってこの国に来たけれど、この国に来れて本当に良かった。
魔女がいなくなった後のこの国の事は気になるけれど、この人達ならきっと大丈夫……私は心の中でお礼を言って私達の国へと帰って行った。
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