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Episode3

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一際眩い光に優夜が目を瞑る。
目を開いた先には先程までいた白い空間ではなくどこを見ても緑が広がる森だ。
今の時間は夜なのか上から照らすのは太陽の光ではなく月明かりのみ。

これからどうするかと考え、神様にとりあえず己のステータスとやらを確認することと言われていたのを思い出した。

「ステータスオープン」声に出さずとも心の声で反応してくれたのはありがたい。
ゲームのウィンドウのように少し青みがかった画面が目の前に表示される。

名……狂波  優夜   

歳……23

レベル……86

HP……35000
MP……27000

スキル……全属性適正・魔眼・超自動回復・言語理解・気配遮断・気配探知・身体強化・魅了耐性etc

称号……冷徹な者・知恵者


(比較対象が居ないのでは自分のレベルがこの世界の中では低いのか高いのかがイマイチ分からなかったが、神様とやらがスキルを多くつけてくれたのは事実のようですね)

常時発動しているらしい気配探知に、モンスターらしきものが引っかかった。
初めて目にする別世界のモンスターという存在を遠くから確認するため優夜は近場にある大きな大樹の枝に飛び上がる。

その際も難なく飛び乗ることができ、身体能力や筋力が上昇していることが分かった。
下の様子を伺うと、草むらの中から一体のモンスターが姿を現した。見た目は前の世界にいた狼に似ているが大きさは比べるまでもなくこちらのほうが大きい。

ゆったりとした動作で辺りを見回しているモンスターだが、優夜のことは見つけられていない。
気配遮断を発動させているのに加え、彼は前の世界では暗殺者として息を潜める訓練をただの人の身でやっていたのだ。

知性もないモンスター如きでは彼を見つけるのは難しいのだろう。
 
(あれがモンスターですか。どうしましょう。殺すにしても何か武器がないといけませんね)

優夜は今丸腰だ。魔法は使えると分かっていてもまずは使い慣れたナイフが欲しいと考えていると目の前に黒いモヤが浮かぶ。
だがその正体を優夜は知っていた。

亜空間魔法である。俗に言う『アイテムボックス』だ。
優夜がおもむろに黒いモヤの中に腕を入れ、抜き取ると手には2対なっている短剣が握られている。

シンプルながらも丁寧な細工が施されている鞘から取り出すと刃はどちらとも漆黒に染まっていた。握りも悪くなく刃の状態などをみても1級品だということはよく分かった。

「これは……なかなか上物ですね。」

一振してみるとよく分かった、これは己のために造られたものだ。柄の長さも重さ、刃の長さや反り具合。全てが均一に計算されている。
優夜は試したくなり、逸る気持ちを抑え下にいるモンスターを斬りつけた。

                                                                                     ◇

それから優夜は、手当り次第と言っていいほど目に付いたモンスターたちを殺していった。レベルアップもしているのか最初の頃に比べて速さも力も増しているのを感じた。

数時間後──夜が明けていき空が全体的に白みがかってきた時間。

森の中を歩いていた優夜の気配探知に今まで出会ってきたどのモンスターよりも強い気配が速いスピードで近づいてきた。

キンッ──!!

金属と金属が強い衝撃でぶつかり合う甲高い音が静寂な森の中に響きわたる。

背後からの奇襲。そして急所の首元に振り下ろされた刃。
すかさず左手の短剣を逆手に持ち替え、相手の獲物を受け止めるが、力は相手の方が強くこのままでは押し負けてしまう。

優夜は右脚を軸に後ろにいるであろう人物に回し蹴りをするが、相手も予想していたのか離れはしたが手応えもなくダメージは入っていない。

「どちら様でしょうか?」
 
先程短剣で受け止めた際に少し痛めた、左手の手首を回しながら数歩離れた場所にいる人物を見る。

そこに立っていたのは白銀の髪をもつ青年であり、息を呑むほど美しいという言葉が似合う美人だ。
一目見ただけでは男性か女性か分からいほどの浮世離れした美しさだが元の世界で、世界を跨いでモデルの仕事をしていたおかげか直感で男性だと分かった。

手には彼の背丈よりもある大鎌が握られている。
魂を刈り取るとされている死神が持つと言われる大鎌だが、彼が持つそれは魂を刈り取るには些か禍々しさが足りない。硝子で造られているのだろうか。朝焼けに反射しキラキラと輝いている。
人を殺める道具ではなく、腕の良い硝子細工師が手塩にかけ造り上げ磨き上げた人を惹きつける美術品と言われても納得のいく代物だ。


「人に名を聞きたいなら先に名乗るのが礼儀では?」

「これは失礼。狂波優夜と申します。貴方様の美しさに目を奪われてしまいました。」

「中々まぁ口が上手いな、君。それにしても珍しい名だ異界人か?長い時間生きてきたが目にするのは初めてだ!異界人は皆こんなに強いのか?俺の一撃を受け止めたし君、強いだろ!!」

興奮しているのか琥珀色の瞳が、新しい玩具でも見つけた少年の輝きを宿している。

「異界人はこの世界では随分珍しい存在なのですね。」

目新しさにウロウロと優夜の服や武器を見てくるが敵意や殺気は感じられずそのままにしている。

「あぁ、数年前に王国で勇者とかいう奴を召喚したとは風の噂で聞いたが異界人を生で見るのは君が初めてだよ!!異なる世界から人を召喚するなんてそうそうできるもんじゃないだろう?」

「勇者なんて存在もいるんですねぇ。」

「そうだ!!!異界人ということは君、この世界のことな~んも知らないんだろう?」

「えぇ。言葉を交わせるのは、この世界にきて貴方が初めてですからね」

急に大声を出した彼に驚きつつも頷き返すと、

「それなら俺のことを仲間にするなんてどう?」


 ──────────────────────────

やっと白龍を登場させれました!


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