彗星電車

星崎 楓

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第6章 彗星観察

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 川之江で咲希と別れたひかりは、急いで家へと帰り、またすぐに新三島駅へと向かいました。

「ひかりちゃん。」

 聞き覚えのある声です。さっと後ろを振り向くと、そこには春樹が立っていました。

「春樹くん!」
「心配かけちゃってごめんね。さ、神有川に行こう!」
「うん!」

 久しぶりにつないだ手。久しぶりだからでしょうか、いつもよりもずっと温かく感じます。

「春樹くんの手、すっごく温かい。」
「そうかな。」
「うん。いつもよりずっと温かい。」
「実は、すごく緊張してたんだ。」
「どうして?」
「だって、連絡もできてなくて、ひかりちゃん、どんな顔してるだろうって思って。」
「春樹くん…」
「もし。怒ってたり、悲しんでたりしてたら、すごく申し訳ないからさ。」
「気にしないで。私、今日春樹くんと会えただけでうれしいから。」
「ひかりちゃん…」
「彗星観察、楽しもうね!」
「うん!」

 まわりのカップルがこちらを見て思わず見とれているのが見えます。ちょっと恥ずかしいけれど、今、きっとこの場にいるカップルの中で、一番輝いているはずだ。ひかりはそう、確信していました。

「まもなく、1番乗り場に、普通、南鳴海温泉口行きが参ります。危険ですので、黄色い線の内側までお下がりください。」
「来たね。電車。」
「乗ろっか。」
「うん。」
「新三島、新三島です。三島ケーブルは、お乗り換えです。」
「人、すごく多いね。」
「手、しっかりつないでてね。」
「うん。」
「ひかりじゃん!」

 誰かに名前を呼ばれ、後ろを向くと、そこには咲希と海斗がいました。

「咲希!成沢くん!」
「あなたが咲希さんですか。」
「えっと、もしかして…」
「お初にお目にかかります。天野春樹と申します。」
「どどど、どうも。」
「あなたが成沢海斗さんですか。」
「あー、は、はい。成沢海斗です。」
「ひかりさんからよくお話を伺っていました。」
「ちょっとひかり、こっち来て。」
「どうしたの、って、うわぁ!」
「やばいじゃん、あの礼儀の正しさ、顔立ちの美しさと言い、すごすぎるよ。彼氏としてできすぎるって。」
「いやー、い、いつもはあんな固くないんだけどねぇ。」
「あ、あの、春樹くん。春樹くんって、あの前後学園に通っているんですよね?」
「まあ、はい。」
「すごいなぁ、やっぱり秀才だね。」
「そんなことないですよ。そういえば,お二人はどちらで観察するんですか?」
「僕たちは、有栖川で見ようかと。」
「いいですね、有栖渓。」
「天野くん、ひかり、楽しんできてね。」
「そっちこそ、成沢くんと楽しんでね。」
「あ、もう神有川じゃないの?」
「ほんとだ。では、失礼します。」
「成沢くん、咲希、また学校で。」
「まったねー!」
「おう、またな。」

咲希たちと別れて、ついに2人の時間がはじまる…。そう思うと、とてもソワソワするのでした。
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