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第4章 梅雨の中休み
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春樹と出会ってから半月ほど経ったある日。いつものように16分発の普通電車に乗り込み、神有川へ急ぎます。ホームには、電車を待っている春樹がいました。
「おはよう!天野くん!」
「おはよう、篠山さん。」
「天野くん、大丈夫?」
「…」
「天野く…」
「あの、篠山さん、いや、ひかりちゃん!」
「は、はい!」
「一目見た時から好きでした!僕と付き合ってください!!」
好きな人から急に告白され、頭の中が混乱しています。天野くんとお近づきになれただけでも運命だと思っていたのに、まさか、告白されるなんて。信じられません。答えは、もちろん一択です。
「えぇっと、わ、私でよければ、よ、よろしくお願いします。」
車内から祝福の拍手が起こります。思わずひかりは恥ずかしくなって、顔が真っ赤になります。これから、天野くんともっと仲良くなれる。そう思うと、胸が高鳴るのでした。
付き合い始めてからしばらく経った土曜日。ひかりは、春樹とデートの約束をしていました。名前の呼び方も、天野くん改め、春樹くんと呼んでいます。
朝7時。いつも土曜日はゆっくり起きるのですが、今日はゆっくりなんてしていられません。待ちに待ったデートの日なのです。急いで朝食を取って、少しだけ化粧をして、家を出ました。
待ち合わせは新三島駅。時間の9時よりより30分も早く着いてしまいました。まだ、デートの内容は春樹に言っていません。ドキドキと胸が高鳴ります。
8時50分。春樹が駅から出てきました。
「ごめん!待った?」
「ううん!私が早過ぎただけだから、気にしないで!」
「ほんと?なら良かった。さて、ひかりちゃんはどこに連れて行ってくれるのかな?」
「えへへ、内緒だよー。あ、もう時間じゃん!こっちきて!」
「うん!」
春樹はぎゅっと、ひかりの手を握りました。鼓動が速くなります。少しだけ恥ずかしいけれど、ひかりの手よりあたたかい春輝の手は、ひかりの手を握って離さないのでした。
「このバスだよー!」
「ひかりちゃん、もしかしてこのバス…」
「このバスは、325系統、百合ヶ丘3丁目行きです。」
「やっぱり、天文台行きのバスだね!」
「うん!」
「あの、さ、そういえば、ひかりちゃんって、将来、何になりたいの?」
「私?私はねー、空に関する仕事がしたいなぁって思ってるんだ。」
「空?」
「そう、空。星でもいい、天気でもいい。とにかく何でもいいから、空に関する仕事がしたいの。」
「叶うといい…いや、叶えてね、夢。」
「ありがとう。春樹くん。」
「次は、三島天文台前です。」
「三島天文台前だって。降りよっか。」
「うん!」
二人はチケットを買い、中へと入ります。
「ねえ春樹くん、私、どうしても春樹くんに見せたいものがあってさ。」
「えー、なになに?」
「こっち!」
ひかりは階段を駆け上がり、4階へ向かいます。
「ここー!」
「ここは…セスティナ彗星の特設コーナー…」
「セスティナ彗星って、帰ってくるの1200年ぶりなんだよ。6月7日あたりからは3等星ぐらいの明るさで見えるから、都市部でもぼうっと見えるくらいの明るさになって…」
「うぅ…」
「ちょ、は、春樹くん!?」
「大丈夫、だよ…」
「早く外行こう!」
「ほんと、本当に大丈夫だから…」
「そ、そんな、ほんとに?」
「僕、貧血でさ。たまに倒れそうになることがあるんだよね。さ、他行こう!」
「う、うん…」
その後もひかりは春樹のことが気になっていましたが、さっきのことが嘘のように元気な春樹を見て、心配はいらないと思いました。
お昼ご飯。天文台のカフェでご飯を食べます。
「ここの銀河オムライスがとっても美味しいんだよ。」
「そうなんだ、じゃあ僕、それにしようかな。」
「すみませーん!」
「はい、ご注文は。」
「えっと、カップルで、ペア銀河オムライスセットをお願いします。」
「かしこまりました。では、カップルでペアセットご注文ですので、銀河ペアネックレスも一緒になります。すぐにお持ちしますね。」
「実はね、ここのオムライスセット、男女のカップルでペアを頼むと、無料で銀河ペアネックレスっていう、ネックレスをくれるんだよ!しかもね、このネックレス、それぞれが持っていたら、永遠の愛が誓えるって有名なんだー。」
「ひかりちゃん、よく知ってたね!じゃあ、初デートの記念品はそれで決まりだね!」
「うん!」
「あのさ、ひかりちゃん。」
「どうかした?」
「7月7日、セスティナの最接近日に、神有川で彗星見ようよ。二人っきりで。」
「え、いいの!?」
「もちろんだよ。7月7日の5時半、新三島駅で待ってる。」
「わかった。楽しみにしてるね。」
なんと、夢にまで見た彗星観察を春樹から誘われるなんて。ひかりは本当に夢を見ているのではないかと思い、何度もほほをつねりました。
銀河オムライスを食べた二人は、プラネタリウムを見たり、星について語ったりと、楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
「ありがとう、ひかりちゃん。今日はとっても楽しかったよ!」
「ううん、私こそ、ありがとう。春樹くんにはなんてお礼をしたらいいのかな。私みたいな地味な女の子と付き合ってくれて、ほんとに申し訳ないっていうか…」
「ねえ。」
「春樹くん?ど、どうした…」
「ひかりが地味だなんて、二度と言わないで。」
「い、いや、」
「俺には、ひかりしかいない。いや、ひかりじゃなきゃダメなんだ。」
「春樹くん…」
「だから二度と、地味だなんて言わないで。」
「ありがとう、春樹くん…」
梅雨の中休みの一日。夕暮れ時、空は橙色に染められていきます。バスを待つ二人の上には、彗星が大きく、美しく輝いていました。
「おはよう!天野くん!」
「おはよう、篠山さん。」
「天野くん、大丈夫?」
「…」
「天野く…」
「あの、篠山さん、いや、ひかりちゃん!」
「は、はい!」
「一目見た時から好きでした!僕と付き合ってください!!」
好きな人から急に告白され、頭の中が混乱しています。天野くんとお近づきになれただけでも運命だと思っていたのに、まさか、告白されるなんて。信じられません。答えは、もちろん一択です。
「えぇっと、わ、私でよければ、よ、よろしくお願いします。」
車内から祝福の拍手が起こります。思わずひかりは恥ずかしくなって、顔が真っ赤になります。これから、天野くんともっと仲良くなれる。そう思うと、胸が高鳴るのでした。
付き合い始めてからしばらく経った土曜日。ひかりは、春樹とデートの約束をしていました。名前の呼び方も、天野くん改め、春樹くんと呼んでいます。
朝7時。いつも土曜日はゆっくり起きるのですが、今日はゆっくりなんてしていられません。待ちに待ったデートの日なのです。急いで朝食を取って、少しだけ化粧をして、家を出ました。
待ち合わせは新三島駅。時間の9時よりより30分も早く着いてしまいました。まだ、デートの内容は春樹に言っていません。ドキドキと胸が高鳴ります。
8時50分。春樹が駅から出てきました。
「ごめん!待った?」
「ううん!私が早過ぎただけだから、気にしないで!」
「ほんと?なら良かった。さて、ひかりちゃんはどこに連れて行ってくれるのかな?」
「えへへ、内緒だよー。あ、もう時間じゃん!こっちきて!」
「うん!」
春樹はぎゅっと、ひかりの手を握りました。鼓動が速くなります。少しだけ恥ずかしいけれど、ひかりの手よりあたたかい春輝の手は、ひかりの手を握って離さないのでした。
「このバスだよー!」
「ひかりちゃん、もしかしてこのバス…」
「このバスは、325系統、百合ヶ丘3丁目行きです。」
「やっぱり、天文台行きのバスだね!」
「うん!」
「あの、さ、そういえば、ひかりちゃんって、将来、何になりたいの?」
「私?私はねー、空に関する仕事がしたいなぁって思ってるんだ。」
「空?」
「そう、空。星でもいい、天気でもいい。とにかく何でもいいから、空に関する仕事がしたいの。」
「叶うといい…いや、叶えてね、夢。」
「ありがとう。春樹くん。」
「次は、三島天文台前です。」
「三島天文台前だって。降りよっか。」
「うん!」
二人はチケットを買い、中へと入ります。
「ねえ春樹くん、私、どうしても春樹くんに見せたいものがあってさ。」
「えー、なになに?」
「こっち!」
ひかりは階段を駆け上がり、4階へ向かいます。
「ここー!」
「ここは…セスティナ彗星の特設コーナー…」
「セスティナ彗星って、帰ってくるの1200年ぶりなんだよ。6月7日あたりからは3等星ぐらいの明るさで見えるから、都市部でもぼうっと見えるくらいの明るさになって…」
「うぅ…」
「ちょ、は、春樹くん!?」
「大丈夫、だよ…」
「早く外行こう!」
「ほんと、本当に大丈夫だから…」
「そ、そんな、ほんとに?」
「僕、貧血でさ。たまに倒れそうになることがあるんだよね。さ、他行こう!」
「う、うん…」
その後もひかりは春樹のことが気になっていましたが、さっきのことが嘘のように元気な春樹を見て、心配はいらないと思いました。
お昼ご飯。天文台のカフェでご飯を食べます。
「ここの銀河オムライスがとっても美味しいんだよ。」
「そうなんだ、じゃあ僕、それにしようかな。」
「すみませーん!」
「はい、ご注文は。」
「えっと、カップルで、ペア銀河オムライスセットをお願いします。」
「かしこまりました。では、カップルでペアセットご注文ですので、銀河ペアネックレスも一緒になります。すぐにお持ちしますね。」
「実はね、ここのオムライスセット、男女のカップルでペアを頼むと、無料で銀河ペアネックレスっていう、ネックレスをくれるんだよ!しかもね、このネックレス、それぞれが持っていたら、永遠の愛が誓えるって有名なんだー。」
「ひかりちゃん、よく知ってたね!じゃあ、初デートの記念品はそれで決まりだね!」
「うん!」
「あのさ、ひかりちゃん。」
「どうかした?」
「7月7日、セスティナの最接近日に、神有川で彗星見ようよ。二人っきりで。」
「え、いいの!?」
「もちろんだよ。7月7日の5時半、新三島駅で待ってる。」
「わかった。楽しみにしてるね。」
なんと、夢にまで見た彗星観察を春樹から誘われるなんて。ひかりは本当に夢を見ているのではないかと思い、何度もほほをつねりました。
銀河オムライスを食べた二人は、プラネタリウムを見たり、星について語ったりと、楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
「ありがとう、ひかりちゃん。今日はとっても楽しかったよ!」
「ううん、私こそ、ありがとう。春樹くんにはなんてお礼をしたらいいのかな。私みたいな地味な女の子と付き合ってくれて、ほんとに申し訳ないっていうか…」
「ねえ。」
「春樹くん?ど、どうした…」
「ひかりが地味だなんて、二度と言わないで。」
「い、いや、」
「俺には、ひかりしかいない。いや、ひかりじゃなきゃダメなんだ。」
「春樹くん…」
「だから二度と、地味だなんて言わないで。」
「ありがとう、春樹くん…」
梅雨の中休みの一日。夕暮れ時、空は橙色に染められていきます。バスを待つ二人の上には、彗星が大きく、美しく輝いていました。
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