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第10章 表舞台へ
14 平民から貴族へ
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「へぁ?」
俺の言葉を聞いたバネッサが妙な言葉を出した。それもそのはず、いきなり貴族になれなんて言われても混乱するよな。俺だって、魔王になってくれと言われたときは混乱したものだ。でも、この方法しかバネッサがウルベキナ王と結婚する方法はない。
「どういうこと、スニル?」
ポリーからも意味が分からないという風に聞かれたので、詳しく説明しることにした。
「さっきも言ったように王との結婚となると最低でも高位貴族である必要があるんだが、今のバネッサは誰がどう見てもただの平民」
俺が言うとみんながうなずいた。
「これでは当然王と結婚なんて夢のまた夢だ。でも幸い俺が王を務めるテレスフィリアでは、まだまだ貴族席に余裕があり、少しでも功績があれば爵位を与えることが可能なんだ。そして、バネッサはすでにテレスフィリアに料理のレシピをいくらか提供するという功績を作っている。まぁ、オクトに爵位を与えて、バネッサはその令嬢としてもいいんだが、オクトはその気はないんだろ」
「ああ、ないな。俺はここで料理屋の店主をやってる方がいい、貴族なんてものになりたいとも思わないな」
俺の言葉にオクトは以前もそういったようにすぐさま断った。
「なら、バネッサを貴族にするしかないってわけだ」
「えっと、それはわかるけれど、いいの?」
「ん? なにがだ?」
「こういうのって議会で話し合わないといけないんじゃないの?」
ポリーも王妃ととしていろいろ学んでいるために、国の決定事項を俺の独断ではなく議会を通さなければならないのではないかと質問してきた。
「それなら問題ない、以前オクトを誘った時にすでに許可は得ていたんだよ。さっきまで忘れてたけど、その娘であるバネッサであれば問題ないだろ、一応後で聞いてみるけどな」
「そう、それならいいけど、そっか、それじゃバネッサさんは私と同じになるんだね」
ポリーが嬉しそうに言っているが、同じというのは平民から王妃にという立場になるということだろう。
「ちょっと違う気もするが、大方そうだな」
ポリーとバネッサでは同じ立場でも違いがある。
「というわけだバネッサ、バネッサにはテレスフィリアの高位貴族、そうだな侯爵あたりでいいか、その立場としてここウルベキナ王国へ嫁いでもらう。いわゆる政略結婚ってやつだな」
「スニルさん、そんなことできるんですね。よかったぁ」
「言ったろ、タイミングが良かったって、今このタイミングで無ければできることじゃないだろうな」
「……え、ええと、え、そ、その、それって、私、キャリス様と一緒になれるってこと?」
キャリスというのはウルベキナ王のことだろう。
「ああ、といっても大変だとは思うけど、どうする? ここからはバネッサ次第だ」
「大変って?」
「そりゃぁ、王妃様になるわけだもの。大変だよ。私だって結構大変だよ。毎日礼儀作法とか、ダンスとかいろいろやっているし」
先に王妃という立場であるポリーが自分がいかに大変な毎日を送っているのかを説明している。
「そんなに?」
「これでも、ポリーはまだいい方だと思うぞ。テレスフィリアは新しい国だし、俺がこんなだから国内では気にすることはないからな。でも、ウルベキナは伝統ある国だから、王と2人でいるとき以外は気を付けていなきゃいけないだろうし、下手すればほかの貴族からのやっかみなんかも受けることになるだろうし」
「やっかみって?」
麗香が聞いてきたので答える。
「そりゃぁ、今現在で言えば貴族令嬢たちは新王の嫁になろうと必死にアピールしているところだからな。それを横からかっさらう形になるんだから」
「あ、ああ、それは……」
俺の答えに麗香も理解したのか、顔をしかめている。女から受けるやっかみや嫉妬、想像しただけでも身震いする。
「うーん、それはテレスフィリアからってことならある程度は大丈夫だとは思うよ」
俺の言葉に顔を青くしていたバネッサであったが、そこにポリーからの言葉があった。
「どういうこと?」
母さんが首をかしげながらポリに尋ねる。
「うん、私、コルマベイントの王妃様に誘われてお茶会に出てるでしょ。その時最初のころは元平民とか、人間をいらぎったとか陰口言われて、王妃様がとりなしてくれていたんだけど」
ポリーの言葉はポリーだけじゃなく俺もまた、各国の貴族たちから言われていることだ。
「でも、私が着ていたドレスとか、麗香さんたちが来てからは、化粧品とかの話をするようになって、今ではちゃんと魔王妃として扱われているんだよね」
ポリーの言葉を聞いてちょっとほっとしているバネッサであった。ちなみに俺に対する陰口はまだそんなに収まっていない。いまだにコルマベイント貴族の中には俺に対して、いきなり化粧品各種を渡すようにと高圧的な態度で行ってくるものもいる。もちろん俺はこれでも魔王なので、それに屈することなくスルーしてるけどな。
「どんな世界でも、女性の美への探求は尽きないものね」
麗香がうんうんと頷いているが、俺もそれに同意だ。
「となると、バネッサは礼儀作法やダンスだけじゃなく、美容についても学ばないといけないんじゃない」
シュンナの言葉にみんながはっとした。
「そうなるわね。まさかテレスフィリア出身でありながら美容について何も知らないとかじゃ、まずいわね」
シュンナの言葉に母さんが同意したことで、バネッサの表情は固まった。なにせ、覚えることが増えたんだからな。
「それで、バネッサどうする。スニルが言うように貴族になって王様に嫁ぐ? もちろんこれは強制じゃないから、バネッサが嫌って言ったらそれまでの話なんだけど」
この場で一番の年上(実年齢)女性として、シュンナがバネッサにどうするかということを聞いた。
「……」
バネッサはその問いに真剣な表情で考えている。それを俺たちは静かに見守る。
「やる、私、キャリス様と結婚したい。だから、スニル君、お願いします」
決意を固めたバネッサがまっすぐな目で俺を見て言った。
「わかった。そういうわけだからオクト、いいか?」
ここにきてこれまで完全に蚊帳の外に置かれていたバネッサの父、オクトに最終確認の言葉を投げかけてみた。
「い、いや、ちょっと待て、俺には何が何だか、ちっともわからねぇ。誰か説明してくれ、いつから、というかリーラは知っていたんだよな。なんで、俺に言わないんだ?」
オクトが少々パニックになりながら自身の妻であるリーラに詰め寄る。バネッサはリーラには相談していたらしいが、実の父親であるオクトには全く話していなかった。そして、リーラもまたそんな話をオクトには一切していなかったらしい。
「そりゃぁ、こういう話は母親にするものでしょ。父親に恋愛相談する子なんていないんじゃない」
あっけらかんとリーラはそういったが、広い世の中どこかにはいると思うけどな。でも、確かに娘の立場からしたら父親には相談しづらいのは確かだろうな。まぁ、男だったらまず両親どちらでも相談はそうそうしないと思うが、間違いなく俺だったらしないし。尤も、するしない以前に俺には恋愛話はないんだけどな。
「いや、それでも教えろよ」
相談されなくても教えてくれればよかっただろうと、さらに詰め寄るオクトであった。
「そんなことはどうでもいいでしょオクト、それよりどうなのバネッサのこと認めるの認めないの、どっち?」
「そ、そんなもの……わ、わかった、わかったって、認める、認めればいいんだろ」
オクトとしては認めたくないだろうが、それを言おうとした瞬間シュンナから殺気が漂ったことで、オクトもしぶしぶ認めることにいたのだった。
「はは、それでスニル、1つ聞きたいんだけど?」
「なんだ?」
苦笑いを浮かべたポリーが俺に聞いてきた。
「どうして、バネッサさんを貴族に、こういうのってオクトさんを貴族にして、バネッサさんはその令嬢ってことで嫁がせるんじゃないの?」
ポリーも魔王妃としていろいろ学んでいるので、こうした知識も身についている。
「確かにその方がいいとは思うけど、以前オクトにテレスフィリアに来ないかと誘った時に断られているからな。今回も断るだろ」
「そうなの、オクト?」
俺の話を聞いていたシュンナがオクトにどうなのかと尋ねている。
「ああ、俺はここから離れる気はない。それに貴族なんて柄じゃないからな」
そんなわけでオクトではなくバネッサ自身を貴族にする必要があるというわけだ。
「さて、話もまとまったところで俺は王城に戻るけど、みんなはどうする?」
このままウルベキナの王城へと戻る俺だが、ここにみんなを残しても仕方ない気がするので、どうするか聞いた。
「あたしらはここに残るわ。バネッサからいろいろ聞かないといけないし、ダンクス頼んだ」
「はぁ、まぁいいけどよ。それじゃスニル俺は国に戻るから頼むぜ」
「あっ、俺もいいですか」
「それじゃ、俺も頼むスニル、ここは女のみの方がいいだろ男がいる空間じゃない」
父さんの言う通り、これから間違いなく怒るのはいわゆるガールズトーク、男がいていい空間とは思えない。
「わかった、それじゃさっさと戻るか」
「おう」
というわけで、俺はダンクス、父さん、孝輔の男3人を連れてテレスフィリアへと戻り、その後ウルベキナの王城へと戻ったのだった。
そうして、翌日4か国会談の続きである。
「それでは、引き続き会談を始めたいと思います。本日の議題ですが……」
ウルベキナの宰相が議題をいくらか並べていくが、その内容は主に昨日決めた同盟の細かい話となるが、正直俺にはほとんど理解できなかった。まぁ、この場にはジマリートもいるしあとで確認してみよう。それはともかく議題の中で気になったことがあったので上げておこう。
「続いて、軍事についてですが、これはこちらの同盟はいかような内容にいたしましょう?」
同盟の中の軍事について、これについてはかなり難しいと予想される。
「ふむ、難しいな。我がコルマベイント、ブリザリア、ウルベキナ3国に関しては今まで通りで問題なかろうが」
「ええ、テレスフィリアとなると問題がありますわね」
そう、テレスフィリア以外の3国に関しては全く問題なく、今までと同じく有事の際に駆け付けるというものでいいだろう。しかし、テレスフィリアはそうはいかない。
「ええ、テレスフィリアの民が人族であれば問題ないのでしょうが、我が国の軍となると大半が獣人族、つづいて魔族となっています。たとえ有事の際に我が軍を送り込んだところで無駄なトラブルを生むことになるでしょう」
そう、問題はそこでテレスフィリア軍の大半である獣人族というのは、以前ハンターたちと戦った戦士たちであり、何より人族を憎んでいる。そして、何よりその獣人族というのは戦場では肉の壁としてこれまでさんざん各国で使われてきた。これは、コルマベイントもブリザリアも、ウルベキナも例外ではない。その事実があることから、それぞれの軍からしたらテレスフィリア軍は屈強な肉の壁でしかないと考えるだろう、つまり、ともに戦う戦友ではなく配下、それ以下という扱いをしてくる可能性が高く、逆に獣人族たちも憎しみをますます募らせることになってしまう。というか、4か国同盟というが、これはあくまで俺たち上層部の話であって、まだ下部の連中は知らないわけであり、今もまだ奴隷となった獣人たちが肉の壁として扱われていることは間違いない。そんな中で、下手にわが軍を連れて行けるわけないよな。そんなことしたら敵味方関係なく入り乱れたカオスとなる。また、魔族に関しては俺が思っている以上に魔族を恐れているから、多くの魔族を連れて行った日にはどこからともなく攻撃が飛んできそうだ。そして、またもやカオスとなる。うん、どう考えてもカオスにしかならん。
「そうでしょう」
さて困ったものだと、4人の王は悩みだす。そうして、出した答えとして、ひとまず軍事の同盟自体は提携するが、実際に戦場へ赴くのは俺を含めシュンナとダンクス、または少数の兵士たちのみとなった。しかも、その兵士たちの条件として、人族に対しての悪感情を持っていないこととなった。そして、その軍事同盟はさっそくウルベキナで発動することになったが、それはまた後で説明するとしよう。
とまぁ、こうして何とか会談で話し合うべきことは終わり、そろそろ終えようとしたところで俺が最後の議題を投げる。
「最後ですが、ウルベキナ王にお願いがあります」
「お願いですか、どのようなことでしょう?」
「こうして此度、我ら4か国で同盟を結んだわけですが、残念ながらこの4か国のうち、我が国と貴国の間にのみ何ら縁がありません」
「そうなのですか?」
「はい、コルマベイントに関しては、私自身の故国であり、我妻となるもののコルマベイント出身です。そして、ブリザリアに関しましては、私の身内の中に出身者がいる上、実は先祖がブリザリアの教会で務め、中には枢機卿を務めた者もいるそうです」
俺が聖人ダンクスの末裔であることを知ったブリザリア女王から、そのダンクスの子孫が枢機卿を務めていたころがあると教えてくれた。
「このように、2か国とはすでに縁が結ばれておりますが、貴国とは、せいぜい友人がいる程度のものでしかありません。そこで、縁を強めるため、我が国に籍を置くものと、御身の婚姻を結んでいただきたいのです。もちろん、その者は人族でありもとは、平民という身分ではありますが、功績を得て侯爵としております」
「ほぉ、そのもの自信が爵位を得ているのか?」
「はい、本来であればその父親に爵位をと思っていたのですが、その者に断られてしまいまして、会えなくその娘に与えました」
「テレスフィリアでは女性でも貴族になれますのね」
「もちろんです。わが国はすべて実力主義、どのような力であれ力あるものであればだれでも立身出世がかなうとしております。まぁ、残念ながら今議会はすべて男性ですが」
「それは素晴らしいですわ。ですがよろしいのですか、その侯爵殿がウルベキナへ嫁ぐとなるとお家断絶の危機となりましょう」
貴族家当主が他国へ嫁げば当然その家はなくなってしまう。
「ええ、そこでウルベキナ王とそのものの子を1人、我が国で継いでもらえばいいのです」
「うむ、悪くはないが、であるな。どうであろうウルベキナ王、これは受けるべきと我も考えるが」
「ええ、そうですね。わたくしも反対はありませんわ」
裏事情を知らないコルマベイント王とブリザリア女王が後押しをしてくれた。さて、ウルベキナ王の返答やいかに。
「わかりました、幸い私には現在婚約をしている者はおりません。テレスフィリア王、ぜひお願いいたします」
ウルベキナ王はしばし考えたが、ハッとして今のような答えを出した。これはもしかしたら俺の狙いがバレたかな。まぁ、別にサプライズするつもりもないし、ばれても問題ないんだけどな。むしろバレたほうがうまくいくと思う。
「では、そのように」
こうして、ウルベキナ王とバネッサの婚姻がコルマベイント王とブリザリア女王の公認の元決まったのだった。
俺の言葉を聞いたバネッサが妙な言葉を出した。それもそのはず、いきなり貴族になれなんて言われても混乱するよな。俺だって、魔王になってくれと言われたときは混乱したものだ。でも、この方法しかバネッサがウルベキナ王と結婚する方法はない。
「どういうこと、スニル?」
ポリーからも意味が分からないという風に聞かれたので、詳しく説明しることにした。
「さっきも言ったように王との結婚となると最低でも高位貴族である必要があるんだが、今のバネッサは誰がどう見てもただの平民」
俺が言うとみんながうなずいた。
「これでは当然王と結婚なんて夢のまた夢だ。でも幸い俺が王を務めるテレスフィリアでは、まだまだ貴族席に余裕があり、少しでも功績があれば爵位を与えることが可能なんだ。そして、バネッサはすでにテレスフィリアに料理のレシピをいくらか提供するという功績を作っている。まぁ、オクトに爵位を与えて、バネッサはその令嬢としてもいいんだが、オクトはその気はないんだろ」
「ああ、ないな。俺はここで料理屋の店主をやってる方がいい、貴族なんてものになりたいとも思わないな」
俺の言葉にオクトは以前もそういったようにすぐさま断った。
「なら、バネッサを貴族にするしかないってわけだ」
「えっと、それはわかるけれど、いいの?」
「ん? なにがだ?」
「こういうのって議会で話し合わないといけないんじゃないの?」
ポリーも王妃ととしていろいろ学んでいるために、国の決定事項を俺の独断ではなく議会を通さなければならないのではないかと質問してきた。
「それなら問題ない、以前オクトを誘った時にすでに許可は得ていたんだよ。さっきまで忘れてたけど、その娘であるバネッサであれば問題ないだろ、一応後で聞いてみるけどな」
「そう、それならいいけど、そっか、それじゃバネッサさんは私と同じになるんだね」
ポリーが嬉しそうに言っているが、同じというのは平民から王妃にという立場になるということだろう。
「ちょっと違う気もするが、大方そうだな」
ポリーとバネッサでは同じ立場でも違いがある。
「というわけだバネッサ、バネッサにはテレスフィリアの高位貴族、そうだな侯爵あたりでいいか、その立場としてここウルベキナ王国へ嫁いでもらう。いわゆる政略結婚ってやつだな」
「スニルさん、そんなことできるんですね。よかったぁ」
「言ったろ、タイミングが良かったって、今このタイミングで無ければできることじゃないだろうな」
「……え、ええと、え、そ、その、それって、私、キャリス様と一緒になれるってこと?」
キャリスというのはウルベキナ王のことだろう。
「ああ、といっても大変だとは思うけど、どうする? ここからはバネッサ次第だ」
「大変って?」
「そりゃぁ、王妃様になるわけだもの。大変だよ。私だって結構大変だよ。毎日礼儀作法とか、ダンスとかいろいろやっているし」
先に王妃という立場であるポリーが自分がいかに大変な毎日を送っているのかを説明している。
「そんなに?」
「これでも、ポリーはまだいい方だと思うぞ。テレスフィリアは新しい国だし、俺がこんなだから国内では気にすることはないからな。でも、ウルベキナは伝統ある国だから、王と2人でいるとき以外は気を付けていなきゃいけないだろうし、下手すればほかの貴族からのやっかみなんかも受けることになるだろうし」
「やっかみって?」
麗香が聞いてきたので答える。
「そりゃぁ、今現在で言えば貴族令嬢たちは新王の嫁になろうと必死にアピールしているところだからな。それを横からかっさらう形になるんだから」
「あ、ああ、それは……」
俺の答えに麗香も理解したのか、顔をしかめている。女から受けるやっかみや嫉妬、想像しただけでも身震いする。
「うーん、それはテレスフィリアからってことならある程度は大丈夫だとは思うよ」
俺の言葉に顔を青くしていたバネッサであったが、そこにポリーからの言葉があった。
「どういうこと?」
母さんが首をかしげながらポリに尋ねる。
「うん、私、コルマベイントの王妃様に誘われてお茶会に出てるでしょ。その時最初のころは元平民とか、人間をいらぎったとか陰口言われて、王妃様がとりなしてくれていたんだけど」
ポリーの言葉はポリーだけじゃなく俺もまた、各国の貴族たちから言われていることだ。
「でも、私が着ていたドレスとか、麗香さんたちが来てからは、化粧品とかの話をするようになって、今ではちゃんと魔王妃として扱われているんだよね」
ポリーの言葉を聞いてちょっとほっとしているバネッサであった。ちなみに俺に対する陰口はまだそんなに収まっていない。いまだにコルマベイント貴族の中には俺に対して、いきなり化粧品各種を渡すようにと高圧的な態度で行ってくるものもいる。もちろん俺はこれでも魔王なので、それに屈することなくスルーしてるけどな。
「どんな世界でも、女性の美への探求は尽きないものね」
麗香がうんうんと頷いているが、俺もそれに同意だ。
「となると、バネッサは礼儀作法やダンスだけじゃなく、美容についても学ばないといけないんじゃない」
シュンナの言葉にみんながはっとした。
「そうなるわね。まさかテレスフィリア出身でありながら美容について何も知らないとかじゃ、まずいわね」
シュンナの言葉に母さんが同意したことで、バネッサの表情は固まった。なにせ、覚えることが増えたんだからな。
「それで、バネッサどうする。スニルが言うように貴族になって王様に嫁ぐ? もちろんこれは強制じゃないから、バネッサが嫌って言ったらそれまでの話なんだけど」
この場で一番の年上(実年齢)女性として、シュンナがバネッサにどうするかということを聞いた。
「……」
バネッサはその問いに真剣な表情で考えている。それを俺たちは静かに見守る。
「やる、私、キャリス様と結婚したい。だから、スニル君、お願いします」
決意を固めたバネッサがまっすぐな目で俺を見て言った。
「わかった。そういうわけだからオクト、いいか?」
ここにきてこれまで完全に蚊帳の外に置かれていたバネッサの父、オクトに最終確認の言葉を投げかけてみた。
「い、いや、ちょっと待て、俺には何が何だか、ちっともわからねぇ。誰か説明してくれ、いつから、というかリーラは知っていたんだよな。なんで、俺に言わないんだ?」
オクトが少々パニックになりながら自身の妻であるリーラに詰め寄る。バネッサはリーラには相談していたらしいが、実の父親であるオクトには全く話していなかった。そして、リーラもまたそんな話をオクトには一切していなかったらしい。
「そりゃぁ、こういう話は母親にするものでしょ。父親に恋愛相談する子なんていないんじゃない」
あっけらかんとリーラはそういったが、広い世の中どこかにはいると思うけどな。でも、確かに娘の立場からしたら父親には相談しづらいのは確かだろうな。まぁ、男だったらまず両親どちらでも相談はそうそうしないと思うが、間違いなく俺だったらしないし。尤も、するしない以前に俺には恋愛話はないんだけどな。
「いや、それでも教えろよ」
相談されなくても教えてくれればよかっただろうと、さらに詰め寄るオクトであった。
「そんなことはどうでもいいでしょオクト、それよりどうなのバネッサのこと認めるの認めないの、どっち?」
「そ、そんなもの……わ、わかった、わかったって、認める、認めればいいんだろ」
オクトとしては認めたくないだろうが、それを言おうとした瞬間シュンナから殺気が漂ったことで、オクトもしぶしぶ認めることにいたのだった。
「はは、それでスニル、1つ聞きたいんだけど?」
「なんだ?」
苦笑いを浮かべたポリーが俺に聞いてきた。
「どうして、バネッサさんを貴族に、こういうのってオクトさんを貴族にして、バネッサさんはその令嬢ってことで嫁がせるんじゃないの?」
ポリーも魔王妃としていろいろ学んでいるので、こうした知識も身についている。
「確かにその方がいいとは思うけど、以前オクトにテレスフィリアに来ないかと誘った時に断られているからな。今回も断るだろ」
「そうなの、オクト?」
俺の話を聞いていたシュンナがオクトにどうなのかと尋ねている。
「ああ、俺はここから離れる気はない。それに貴族なんて柄じゃないからな」
そんなわけでオクトではなくバネッサ自身を貴族にする必要があるというわけだ。
「さて、話もまとまったところで俺は王城に戻るけど、みんなはどうする?」
このままウルベキナの王城へと戻る俺だが、ここにみんなを残しても仕方ない気がするので、どうするか聞いた。
「あたしらはここに残るわ。バネッサからいろいろ聞かないといけないし、ダンクス頼んだ」
「はぁ、まぁいいけどよ。それじゃスニル俺は国に戻るから頼むぜ」
「あっ、俺もいいですか」
「それじゃ、俺も頼むスニル、ここは女のみの方がいいだろ男がいる空間じゃない」
父さんの言う通り、これから間違いなく怒るのはいわゆるガールズトーク、男がいていい空間とは思えない。
「わかった、それじゃさっさと戻るか」
「おう」
というわけで、俺はダンクス、父さん、孝輔の男3人を連れてテレスフィリアへと戻り、その後ウルベキナの王城へと戻ったのだった。
そうして、翌日4か国会談の続きである。
「それでは、引き続き会談を始めたいと思います。本日の議題ですが……」
ウルベキナの宰相が議題をいくらか並べていくが、その内容は主に昨日決めた同盟の細かい話となるが、正直俺にはほとんど理解できなかった。まぁ、この場にはジマリートもいるしあとで確認してみよう。それはともかく議題の中で気になったことがあったので上げておこう。
「続いて、軍事についてですが、これはこちらの同盟はいかような内容にいたしましょう?」
同盟の中の軍事について、これについてはかなり難しいと予想される。
「ふむ、難しいな。我がコルマベイント、ブリザリア、ウルベキナ3国に関しては今まで通りで問題なかろうが」
「ええ、テレスフィリアとなると問題がありますわね」
そう、テレスフィリア以外の3国に関しては全く問題なく、今までと同じく有事の際に駆け付けるというものでいいだろう。しかし、テレスフィリアはそうはいかない。
「ええ、テレスフィリアの民が人族であれば問題ないのでしょうが、我が国の軍となると大半が獣人族、つづいて魔族となっています。たとえ有事の際に我が軍を送り込んだところで無駄なトラブルを生むことになるでしょう」
そう、問題はそこでテレスフィリア軍の大半である獣人族というのは、以前ハンターたちと戦った戦士たちであり、何より人族を憎んでいる。そして、何よりその獣人族というのは戦場では肉の壁としてこれまでさんざん各国で使われてきた。これは、コルマベイントもブリザリアも、ウルベキナも例外ではない。その事実があることから、それぞれの軍からしたらテレスフィリア軍は屈強な肉の壁でしかないと考えるだろう、つまり、ともに戦う戦友ではなく配下、それ以下という扱いをしてくる可能性が高く、逆に獣人族たちも憎しみをますます募らせることになってしまう。というか、4か国同盟というが、これはあくまで俺たち上層部の話であって、まだ下部の連中は知らないわけであり、今もまだ奴隷となった獣人たちが肉の壁として扱われていることは間違いない。そんな中で、下手にわが軍を連れて行けるわけないよな。そんなことしたら敵味方関係なく入り乱れたカオスとなる。また、魔族に関しては俺が思っている以上に魔族を恐れているから、多くの魔族を連れて行った日にはどこからともなく攻撃が飛んできそうだ。そして、またもやカオスとなる。うん、どう考えてもカオスにしかならん。
「そうでしょう」
さて困ったものだと、4人の王は悩みだす。そうして、出した答えとして、ひとまず軍事の同盟自体は提携するが、実際に戦場へ赴くのは俺を含めシュンナとダンクス、または少数の兵士たちのみとなった。しかも、その兵士たちの条件として、人族に対しての悪感情を持っていないこととなった。そして、その軍事同盟はさっそくウルベキナで発動することになったが、それはまた後で説明するとしよう。
とまぁ、こうして何とか会談で話し合うべきことは終わり、そろそろ終えようとしたところで俺が最後の議題を投げる。
「最後ですが、ウルベキナ王にお願いがあります」
「お願いですか、どのようなことでしょう?」
「こうして此度、我ら4か国で同盟を結んだわけですが、残念ながらこの4か国のうち、我が国と貴国の間にのみ何ら縁がありません」
「そうなのですか?」
「はい、コルマベイントに関しては、私自身の故国であり、我妻となるもののコルマベイント出身です。そして、ブリザリアに関しましては、私の身内の中に出身者がいる上、実は先祖がブリザリアの教会で務め、中には枢機卿を務めた者もいるそうです」
俺が聖人ダンクスの末裔であることを知ったブリザリア女王から、そのダンクスの子孫が枢機卿を務めていたころがあると教えてくれた。
「このように、2か国とはすでに縁が結ばれておりますが、貴国とは、せいぜい友人がいる程度のものでしかありません。そこで、縁を強めるため、我が国に籍を置くものと、御身の婚姻を結んでいただきたいのです。もちろん、その者は人族でありもとは、平民という身分ではありますが、功績を得て侯爵としております」
「ほぉ、そのもの自信が爵位を得ているのか?」
「はい、本来であればその父親に爵位をと思っていたのですが、その者に断られてしまいまして、会えなくその娘に与えました」
「テレスフィリアでは女性でも貴族になれますのね」
「もちろんです。わが国はすべて実力主義、どのような力であれ力あるものであればだれでも立身出世がかなうとしております。まぁ、残念ながら今議会はすべて男性ですが」
「それは素晴らしいですわ。ですがよろしいのですか、その侯爵殿がウルベキナへ嫁ぐとなるとお家断絶の危機となりましょう」
貴族家当主が他国へ嫁げば当然その家はなくなってしまう。
「ええ、そこでウルベキナ王とそのものの子を1人、我が国で継いでもらえばいいのです」
「うむ、悪くはないが、であるな。どうであろうウルベキナ王、これは受けるべきと我も考えるが」
「ええ、そうですね。わたくしも反対はありませんわ」
裏事情を知らないコルマベイント王とブリザリア女王が後押しをしてくれた。さて、ウルベキナ王の返答やいかに。
「わかりました、幸い私には現在婚約をしている者はおりません。テレスフィリア王、ぜひお願いいたします」
ウルベキナ王はしばし考えたが、ハッとして今のような答えを出した。これはもしかしたら俺の狙いがバレたかな。まぁ、別にサプライズするつもりもないし、ばれても問題ないんだけどな。むしろバレたほうがうまくいくと思う。
「では、そのように」
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そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
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[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
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不慣れですが宜しくお願いします。
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この作品は、真面目なチート物ではありません。
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*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
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俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
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ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
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10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
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