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第09章 勇者召喚
14 夢での再会
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孝輔たちとの話を終え、家族を紹介するということでリビングへと連れてきたところ、サーナを見た麗香と那奈の様子がおかしくなった。
主に孝輔の肩が大ダメージを負い続けているようだ。仕方ないここは助け船を出すとしよう、このままじゃ孝輔があまりにも不憫だしな。
「サーナ、このお姉ちゃんたちがギュッしたいって言ってるぞ」
「ぎゅ? ぎゅするー」
サーナの最近のブームはこのギュッだ。これが何かということは特に説明する必要はないだろう、それというのもすでにサーナは俺の元から離れてとことこと歩み麗香の足にしがみついた。
「あっ、な、なな、な」
「あっ」
「ぎゅー」
わなわなと震える麗香と、ものすごくうらやましそうにそれを見ている那奈、それをよそにサーナは声に出して抱き着いている。
「せ、先輩ずるいです」
那奈がそういって麗香に抗議するが、されている麗香も固まってしまっていてその抗議を聞くことはできていない。
「なーなも、ぎゅー」
「あぁ」
少ししたところでサーナは麗香から離れ那奈の元へ向かうが、離れてしまったと麗香は悲しそうな表情をしている。一方で今度は那奈がサーナに抱き着かれておどおどしている。
「ははっ、助かりました。それにしてもあんな姉ちゃん初めて見ましたよ」
「そうなのか?」
「はい、姉ちゃんはどちらかというとクール系なんで」
「ああ確かに、同性からも好かれそうだな。それに宝塚とか似合いそうだし」
「あはははっ、実は去年の学園祭の劇で男装してるんですよ。その時の会場かなり熱狂していましたよ」
「おう、すでにか」
孝輔とそんな会話をしながら麗香たちの様子を見ているといつの間にか2人とも少し落ち着いたと見えて、しゃがみ込んでからサーナを抱きしめている。
「さて、2人が落ち着いたところで紹介を続けるぞ」
「えっはい、すみません」
「あっ、ごめんなさい、そのつい」
「気にするな」
麗香と那奈はこれまでの自分たちの行動に恥じて顔を赤らめている。
「サーナを始めてみた場合は大体そうなるしな。それに日本人なら特にだろ」
日本にはかわいい文化があり、大体の女性はかわいいものに目がないらしいからな。まぁ、中には一切興味がないという女性もそれなりにいるんだろうが。
それはともかく、今は部屋の中にいるほかの家族の紹介をしておこう。
「まずはこの2人な。こっちがヒュリック、そんでこっちがミリア、俺のこっちでの両親だ」
「ヒュリックだ。まぁ、こんななりだが、一応スニルの親父だ」
「ミリアよ。よろしくね」
「は、はい」
「それから、ポリーだけど、ポリーは俺たちと違って正真正銘の15歳だから、孝輔と那奈の1つ下ということだな」
俺と両親は15歳と13歳が実年齢だが、中身はおっさんと大人だ。それに対してポリーは間違いなく15歳の少女だからな。
「ポリーです。その勇者様、初めまして」
そしてポリーは物語の勇者というものにあこがれを持っているから、今かなり緊張しているようだ。
「ポリーは何というか、俺にもよくわからないうちに俺の嫁ということになっている」
本当に気が付いたらそうなっていた。いったいいつからなんだろうか。
「へぇ、それじゃ、ポリーちゃんはスニルさんの婚約者ってことですよね。王様の婚約者なんて素敵」
「確か小さな農村の子なのよね。それがってかなりの出世ね。まぁ、それを言うならスニルさんも一緒か」
「あ、あの、その」
相手が勇者一行の聖者とその姉ということでまだ緊張している。
「……なんか俺、スニルさんと仲良くなれそうな気がします」
孝輔だけが俺に同情の目を向けてきたが、どういうことだ。
「実は俺も気が付いたら那奈と付き合うことになってたんです」
「どういうことだ?」
「いや、それが、最初は那奈の奴姉ちゃんたちと仲が良かったんですけど、いつの間にか俺の彼女って話になって、あれよあれよといつの間にか付き合っているってことになっていました。まぁ、別にいやってわけでもないんですけど、ちょっと腑に落ちないんですよね」
「なるほど、確かに仲良くなれそうだな」
つまり外堀を埋められたというわけだ。
「何の話?」
「いや、何でもない。それよりポリーよかったじゃないか、今まで同性で同じ年頃はいなかったからな」
「う、うん、で、でも」
これまでポリーと同じ年頃となると俺しかいなかった。しかし、俺は男だし何より中身はおっさんだ。それに対して麗香や那奈は間違いなく同じ年頃であり同性、友としてはかなり有望株だろう。しかし相手が聖女と勇者と姉ということでかなり気後れしてしまっている。
「えっと、ポリーちゃん確かに私たちは異世界から召喚されたけれど、もともとはあなたと同じ普通の女の子だから仲良くしましょう」
「先輩の言う通りで、私も仲良くしたいかな」
2人にとってポリーは年下であり、ポリーが気後れしていることもあり歩み寄ってくれている。
「え、えっと、そのよろしくお願いします」
ポリーは笑顔でそれに答えたのだった。
「ふふっ、ポリーちゃんもかわいい」
「私もそう思います先輩」
こうしてポリーは生まれて初めての同性で、同じ年頃の友達を得たのだった。
その後サーナの祖父母やメイドたちを紹介していったのだが、メイドたちは相も変わらず孝輔たちを見ておびえていたが、こればかりは仕方ない。
「戻ったぜ」
「ただいま、ごめん遅れた」
「いや、問題ない」
そこにシュンナとダンクスが帰ってきた。
「3人とも、改めて紹介するが、シュンナとダンクスだ。戦った時は魔族ん格好させたけど、こっちが本来の姿だ。まぁ、シュンナはともかくダンクスは変わらず魔王みたいだけどな」
「シュンナよ。これからよろしくね」
「ダンクスだ。よろしく頼む」
「えっ、はい、よろしくお願いします」
孝輔たちにはシュンナとダンクスの話もしてあるので、若干の気後れはあるようだが問題はなさそうだ。
「陛下、御夕食の準備が整いましてございますが、その前にお三方のお召替えを推奨いたします」
「召し替え? ああ、確かに忘れてたな」
メイドがやってきて飯ができたというが、その前に孝輔たちの着替えをとのこと、言われてみると孝輔たちは俺と戦いにきてそのまま、つまり完全武装状態のままここにいる。那奈は聖女のために神官服だから何とかなるが、孝輔と麗香は鎧や手甲をつけたままだった。確かにこれは飯を食う恰好ではないな。
「そうだな。ああ、じゃぁついでに風呂にでも入るか?」
「えっお風呂!」
「あるんですか?」
俺のふろという言葉に麗香と那奈が強く反応した。やはり日本人として外せないものだからな。
「あるぞ。というか俺が王をやっている国で作らないわけないだろう」
「やった、この世界に来てからずっと入れてなくて、入りたかったんです」
「私もそこだけは不満で」
「そうだよなぁ。俺はあまり風呂って好きな方ではなかったけど、いざ入れないとなると無性に入りたくなるし」
「日本人の性だからな、それじゃぁ……」
「あっあたしが2人を連れていくよ。あたしもご飯前にお風呂入りたいし」
「おう、それじゃ頼む」
「そんじゃ、俺は勇者と行ってくるぜ」
ということで戸惑う3人を引き連れ、てシュンナとダンクスはさっさと風呂へと向かっていたのだった。
「だ、大丈夫かな」
そんな3人の様子を見ていたポリーが心配そうにつぶやいた。
「大丈夫だろ、ていうかポリーはいかないのか、せっかくだし」
「そうね。ポリーちゃん私たちもいきましょ。スニルも以前言っていたでしょ裸の付き合いだって」
「う、うん、そうする」
こうしてポリーも母さんとともに風呂へと向かったのだった。
「スニル、俺たちもいくか」
「そうするか」
何やら取り残されてしまったような気がするので、俺も父さんとともに風呂へと向かったのだった。
とはいえ、男同士の風呂何かあるわけでもなくただただ時間が過ぎていった。しかし、女湯の方は違ったみたいで、全体的に仲良くなっている。特にやはり年が近いからか、那奈とポリー、麗香とシュンナだろう。考えてみたらこの組み合わせはともに年齢が1つしか違わない。那奈は15か16の高校1年に対して、ポリーは15だが日本では中学3年だからほとんど同じだ。そして、麗香とシュンナも同じく17か18の高校3年に対して、シュンナは19歳の日本では大学1年といったところだから、仲良くなって当然といえば当然だな。
尤も、那奈とポリーの関係性と麗香とシュンナの関係性は少し違うように思える。那奈たちはどちらかというと同い年の友人て風だが、麗香たちはなにか麗香がシュンナになついているという風だ。これはおそらく麗香はこれまで孝輔たちの姉として気を引き締めていた。そこにきてシュンナという年上であり、何よりいろいろと経験してきただけに、精神的により大人でありサーナの母親役を務めてきたことによる包容力を兼ね備えていることに起因していると思われる。つまりシュンナは麗香にとってのあこがれ的な存在となったのかもしれないな。まっ、なんにせよ仲良くなったようで何よりだ。
「風呂も終わったし、飯にしようか」
「だな、腹減ったぜ」
「はい、空きましたね」
「今日は何だろうな」
仲良くなった女性陣をよそに俺たちも男同士今日の夕飯についての話に花を咲かせるのであった。
そうして、食堂にやってきていざ食事である。
「それじゃ、麗香、孝輔姉弟と那奈を歓迎して、乾杯」
「乾杯!」
俺の音頭とともに皆が乾杯をして孝輔たちの歓迎の宴が始まった。
「うわぁ、なにこれ、おいしっ」
「はい、美味しいです」
「確かに、うまいな。これって教会で食ったものより圧倒的にうまい」
「だろうな。この国の飯はもとからあったものもあるが、俺が地球の調理法を教えたからな。今現在は双方のいいとこどり状態だからな」
「そうなんですか?」
「ああ、といっても俺もそこまで料理をしてきたわけじゃないから、知ってるレシピなんてかなり少ないからな。そうだ、3人とも何か知ってたらうちの料理人たちに教えてやってくれ。まぁ、調味料がまだほとんどないからできないものが多いけどな」
「ああ、そうなんですね。異世界ですもんね。醤油とか味噌とか米とか、やべっ、食べたくなってきた」
「ほんとにな。でも安心しろ醤油と味噌は大豆があったからな、今研究させてる。米もどっかないか探させてるからな。そのうち見つかるかもしれん」
「ほんとですか?」
食事の際はこんな会話をしていた。
「……それにしても、サーナちゃんは食事をしててもかわいいですね」
那奈がそうつぶやいて麗香がそれに深く同意している。という風にまったりした空気の中食事を勧めていったのであった。
こうして、食事を終えた夜まったりとしていると孝輔たちが声をかけてきた。
「スニルさん、えっと」
「今夜の話か?」
今夜の話というのはもちろん3人の意識を日本へ送るということだ。
「はい、ほんとに両親に会えるんですよね」
「ああそうだ。俺たちが接触した日の夜だからな。寝て気が付いたら真っ白な空間にいると思うけどそこが神界だ。一応俺も同行はするから安心しろ」
「は、はい」
両親に会えるからか、神界に行くからなのかわからないが緊張している様子だ。
「まっ、というわけだから今日はもう休むとしよう」
「はい」
そんなわけで、今日は再会に向けて休むことになった。
============================================
寝た次の瞬間、4度目となる真っ白空間。
「まだ、だれも来てないみたいだな」
「よぉスニル。悪いな」
あたりを見ていると神様が急に声をかけてきた。4度目となるとなれたもので、特に驚くこともなかった。
「神様、いえ、それよりほかの3人は?」
「今来るだろ、ほれっ」
その瞬間真っ白空間に3人の人影が現れ、それぞれ自分の居場所を確認するためにきょろきょろしている。
「こっちだ」
「えっ、あっスニルさん、ここは?」
「ここが神界」
「そろったところでそろそろ行くぞ」
「あっはい、お願いします」
「?」
神様の言葉に反応する俺と、疑問符を浮かべる孝輔たちを淡い光が包んだかと思ったら、一瞬景色が暗転、すぐにまた真っ白空間へとやってきた。
「着いたぜ。ここが地球を管理する神の神界だ。おうXXXX神、今回は悪いな」
あっという間についたかと思ったら神様が何やら何もない空間に向かって挨拶をしている。ああそうか、地球の神様も地上に干渉しないようにしているから俺の目には映らないんだったな。
「えっと、スニルさんここは、それにさっきから誰と話を?」
事態が読み込めていたない麗香が代表して聞いてきたわけだが、ここら辺ほんとに麗香は姉だと思う。
「ここは地球を管理している神様の神界、んでさっきから俺が話しているのは異世界の神様だよ。俺は神様が直接転生させた存在ということでその姿を見て声を聴くことはできるけど、お前たちは人間の営みとして召喚されたわけだから神様も干渉できないからその姿を見ることはできないというわけだな。ちなみに、ここには地球の神様もいるみたいだけど、俺はその神様と接していないから俺にもその姿を見ることはできないみたいだ」
「そうなんですね。えっと、それで私たちは」
「スニル、話しているとこ悪いが、向こうさんも準備ができてるそうだぜ。呼んでいいか」
「はい、お願いします。麗香、孝輔、那奈、今お前たちの家族がここに来るぞ」
「えっ、今ですか?」
戸惑う麗香たちをよそに少し離れた場所に淡い光が数個出現したと思ったら、そこに5人の人影が現れた。
「あっ」
「お、お父さん、お母さん、それに侑李」
現れたのはもちろん3人の家族、麗香は口を押え、孝輔は目元をわずかに潤わせ、那奈に至っては涙を流して家族を呼ぶ。
「えっ、麗香、孝輔!」
「那奈!」
「お姉ちゃん!」
向こうも気が付いたようでわなわなと震えながら、それぞれの子供の名を呼ぶ、するとどちらからともなく駆け出し、お互いに強い抱擁。まさに感動の親子の再会である。
さて、とりあえず親子が再会したのはよかったが、問題はここからだ。この先俺は当事者というか原因というか、拉致犯一味というか、とにかく彼らに説明責任を果たさなければならない。人と話すのが苦手な俺としては実にハードルが高い仕事だ。でもま、これでも魔王、一国の王だからな。それなりに場数も踏んできた。なんとななるだろ。
「スニル悪いが頼んだぞ」
「はい」
麗香たちに神様が見えていないように、その家族も神様たちは見えていない、つまり彼らの矢はすべて俺に突き刺さるというわけだ。はてさて、どうなるものやら、今からちょっと憂鬱な気になってきたが、ここは逃げるわけにはいかない。面倒なことだ。
主に孝輔の肩が大ダメージを負い続けているようだ。仕方ないここは助け船を出すとしよう、このままじゃ孝輔があまりにも不憫だしな。
「サーナ、このお姉ちゃんたちがギュッしたいって言ってるぞ」
「ぎゅ? ぎゅするー」
サーナの最近のブームはこのギュッだ。これが何かということは特に説明する必要はないだろう、それというのもすでにサーナは俺の元から離れてとことこと歩み麗香の足にしがみついた。
「あっ、な、なな、な」
「あっ」
「ぎゅー」
わなわなと震える麗香と、ものすごくうらやましそうにそれを見ている那奈、それをよそにサーナは声に出して抱き着いている。
「せ、先輩ずるいです」
那奈がそういって麗香に抗議するが、されている麗香も固まってしまっていてその抗議を聞くことはできていない。
「なーなも、ぎゅー」
「あぁ」
少ししたところでサーナは麗香から離れ那奈の元へ向かうが、離れてしまったと麗香は悲しそうな表情をしている。一方で今度は那奈がサーナに抱き着かれておどおどしている。
「ははっ、助かりました。それにしてもあんな姉ちゃん初めて見ましたよ」
「そうなのか?」
「はい、姉ちゃんはどちらかというとクール系なんで」
「ああ確かに、同性からも好かれそうだな。それに宝塚とか似合いそうだし」
「あはははっ、実は去年の学園祭の劇で男装してるんですよ。その時の会場かなり熱狂していましたよ」
「おう、すでにか」
孝輔とそんな会話をしながら麗香たちの様子を見ているといつの間にか2人とも少し落ち着いたと見えて、しゃがみ込んでからサーナを抱きしめている。
「さて、2人が落ち着いたところで紹介を続けるぞ」
「えっはい、すみません」
「あっ、ごめんなさい、そのつい」
「気にするな」
麗香と那奈はこれまでの自分たちの行動に恥じて顔を赤らめている。
「サーナを始めてみた場合は大体そうなるしな。それに日本人なら特にだろ」
日本にはかわいい文化があり、大体の女性はかわいいものに目がないらしいからな。まぁ、中には一切興味がないという女性もそれなりにいるんだろうが。
それはともかく、今は部屋の中にいるほかの家族の紹介をしておこう。
「まずはこの2人な。こっちがヒュリック、そんでこっちがミリア、俺のこっちでの両親だ」
「ヒュリックだ。まぁ、こんななりだが、一応スニルの親父だ」
「ミリアよ。よろしくね」
「は、はい」
「それから、ポリーだけど、ポリーは俺たちと違って正真正銘の15歳だから、孝輔と那奈の1つ下ということだな」
俺と両親は15歳と13歳が実年齢だが、中身はおっさんと大人だ。それに対してポリーは間違いなく15歳の少女だからな。
「ポリーです。その勇者様、初めまして」
そしてポリーは物語の勇者というものにあこがれを持っているから、今かなり緊張しているようだ。
「ポリーは何というか、俺にもよくわからないうちに俺の嫁ということになっている」
本当に気が付いたらそうなっていた。いったいいつからなんだろうか。
「へぇ、それじゃ、ポリーちゃんはスニルさんの婚約者ってことですよね。王様の婚約者なんて素敵」
「確か小さな農村の子なのよね。それがってかなりの出世ね。まぁ、それを言うならスニルさんも一緒か」
「あ、あの、その」
相手が勇者一行の聖者とその姉ということでまだ緊張している。
「……なんか俺、スニルさんと仲良くなれそうな気がします」
孝輔だけが俺に同情の目を向けてきたが、どういうことだ。
「実は俺も気が付いたら那奈と付き合うことになってたんです」
「どういうことだ?」
「いや、それが、最初は那奈の奴姉ちゃんたちと仲が良かったんですけど、いつの間にか俺の彼女って話になって、あれよあれよといつの間にか付き合っているってことになっていました。まぁ、別にいやってわけでもないんですけど、ちょっと腑に落ちないんですよね」
「なるほど、確かに仲良くなれそうだな」
つまり外堀を埋められたというわけだ。
「何の話?」
「いや、何でもない。それよりポリーよかったじゃないか、今まで同性で同じ年頃はいなかったからな」
「う、うん、で、でも」
これまでポリーと同じ年頃となると俺しかいなかった。しかし、俺は男だし何より中身はおっさんだ。それに対して麗香や那奈は間違いなく同じ年頃であり同性、友としてはかなり有望株だろう。しかし相手が聖女と勇者と姉ということでかなり気後れしてしまっている。
「えっと、ポリーちゃん確かに私たちは異世界から召喚されたけれど、もともとはあなたと同じ普通の女の子だから仲良くしましょう」
「先輩の言う通りで、私も仲良くしたいかな」
2人にとってポリーは年下であり、ポリーが気後れしていることもあり歩み寄ってくれている。
「え、えっと、そのよろしくお願いします」
ポリーは笑顔でそれに答えたのだった。
「ふふっ、ポリーちゃんもかわいい」
「私もそう思います先輩」
こうしてポリーは生まれて初めての同性で、同じ年頃の友達を得たのだった。
その後サーナの祖父母やメイドたちを紹介していったのだが、メイドたちは相も変わらず孝輔たちを見ておびえていたが、こればかりは仕方ない。
「戻ったぜ」
「ただいま、ごめん遅れた」
「いや、問題ない」
そこにシュンナとダンクスが帰ってきた。
「3人とも、改めて紹介するが、シュンナとダンクスだ。戦った時は魔族ん格好させたけど、こっちが本来の姿だ。まぁ、シュンナはともかくダンクスは変わらず魔王みたいだけどな」
「シュンナよ。これからよろしくね」
「ダンクスだ。よろしく頼む」
「えっ、はい、よろしくお願いします」
孝輔たちにはシュンナとダンクスの話もしてあるので、若干の気後れはあるようだが問題はなさそうだ。
「陛下、御夕食の準備が整いましてございますが、その前にお三方のお召替えを推奨いたします」
「召し替え? ああ、確かに忘れてたな」
メイドがやってきて飯ができたというが、その前に孝輔たちの着替えをとのこと、言われてみると孝輔たちは俺と戦いにきてそのまま、つまり完全武装状態のままここにいる。那奈は聖女のために神官服だから何とかなるが、孝輔と麗香は鎧や手甲をつけたままだった。確かにこれは飯を食う恰好ではないな。
「そうだな。ああ、じゃぁついでに風呂にでも入るか?」
「えっお風呂!」
「あるんですか?」
俺のふろという言葉に麗香と那奈が強く反応した。やはり日本人として外せないものだからな。
「あるぞ。というか俺が王をやっている国で作らないわけないだろう」
「やった、この世界に来てからずっと入れてなくて、入りたかったんです」
「私もそこだけは不満で」
「そうだよなぁ。俺はあまり風呂って好きな方ではなかったけど、いざ入れないとなると無性に入りたくなるし」
「日本人の性だからな、それじゃぁ……」
「あっあたしが2人を連れていくよ。あたしもご飯前にお風呂入りたいし」
「おう、それじゃ頼む」
「そんじゃ、俺は勇者と行ってくるぜ」
ということで戸惑う3人を引き連れ、てシュンナとダンクスはさっさと風呂へと向かっていたのだった。
「だ、大丈夫かな」
そんな3人の様子を見ていたポリーが心配そうにつぶやいた。
「大丈夫だろ、ていうかポリーはいかないのか、せっかくだし」
「そうね。ポリーちゃん私たちもいきましょ。スニルも以前言っていたでしょ裸の付き合いだって」
「う、うん、そうする」
こうしてポリーも母さんとともに風呂へと向かったのだった。
「スニル、俺たちもいくか」
「そうするか」
何やら取り残されてしまったような気がするので、俺も父さんとともに風呂へと向かったのだった。
とはいえ、男同士の風呂何かあるわけでもなくただただ時間が過ぎていった。しかし、女湯の方は違ったみたいで、全体的に仲良くなっている。特にやはり年が近いからか、那奈とポリー、麗香とシュンナだろう。考えてみたらこの組み合わせはともに年齢が1つしか違わない。那奈は15か16の高校1年に対して、ポリーは15だが日本では中学3年だからほとんど同じだ。そして、麗香とシュンナも同じく17か18の高校3年に対して、シュンナは19歳の日本では大学1年といったところだから、仲良くなって当然といえば当然だな。
尤も、那奈とポリーの関係性と麗香とシュンナの関係性は少し違うように思える。那奈たちはどちらかというと同い年の友人て風だが、麗香たちはなにか麗香がシュンナになついているという風だ。これはおそらく麗香はこれまで孝輔たちの姉として気を引き締めていた。そこにきてシュンナという年上であり、何よりいろいろと経験してきただけに、精神的により大人でありサーナの母親役を務めてきたことによる包容力を兼ね備えていることに起因していると思われる。つまりシュンナは麗香にとってのあこがれ的な存在となったのかもしれないな。まっ、なんにせよ仲良くなったようで何よりだ。
「風呂も終わったし、飯にしようか」
「だな、腹減ったぜ」
「はい、空きましたね」
「今日は何だろうな」
仲良くなった女性陣をよそに俺たちも男同士今日の夕飯についての話に花を咲かせるのであった。
そうして、食堂にやってきていざ食事である。
「それじゃ、麗香、孝輔姉弟と那奈を歓迎して、乾杯」
「乾杯!」
俺の音頭とともに皆が乾杯をして孝輔たちの歓迎の宴が始まった。
「うわぁ、なにこれ、おいしっ」
「はい、美味しいです」
「確かに、うまいな。これって教会で食ったものより圧倒的にうまい」
「だろうな。この国の飯はもとからあったものもあるが、俺が地球の調理法を教えたからな。今現在は双方のいいとこどり状態だからな」
「そうなんですか?」
「ああ、といっても俺もそこまで料理をしてきたわけじゃないから、知ってるレシピなんてかなり少ないからな。そうだ、3人とも何か知ってたらうちの料理人たちに教えてやってくれ。まぁ、調味料がまだほとんどないからできないものが多いけどな」
「ああ、そうなんですね。異世界ですもんね。醤油とか味噌とか米とか、やべっ、食べたくなってきた」
「ほんとにな。でも安心しろ醤油と味噌は大豆があったからな、今研究させてる。米もどっかないか探させてるからな。そのうち見つかるかもしれん」
「ほんとですか?」
食事の際はこんな会話をしていた。
「……それにしても、サーナちゃんは食事をしててもかわいいですね」
那奈がそうつぶやいて麗香がそれに深く同意している。という風にまったりした空気の中食事を勧めていったのであった。
こうして、食事を終えた夜まったりとしていると孝輔たちが声をかけてきた。
「スニルさん、えっと」
「今夜の話か?」
今夜の話というのはもちろん3人の意識を日本へ送るということだ。
「はい、ほんとに両親に会えるんですよね」
「ああそうだ。俺たちが接触した日の夜だからな。寝て気が付いたら真っ白な空間にいると思うけどそこが神界だ。一応俺も同行はするから安心しろ」
「は、はい」
両親に会えるからか、神界に行くからなのかわからないが緊張している様子だ。
「まっ、というわけだから今日はもう休むとしよう」
「はい」
そんなわけで、今日は再会に向けて休むことになった。
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寝た次の瞬間、4度目となる真っ白空間。
「まだ、だれも来てないみたいだな」
「よぉスニル。悪いな」
あたりを見ていると神様が急に声をかけてきた。4度目となるとなれたもので、特に驚くこともなかった。
「神様、いえ、それよりほかの3人は?」
「今来るだろ、ほれっ」
その瞬間真っ白空間に3人の人影が現れ、それぞれ自分の居場所を確認するためにきょろきょろしている。
「こっちだ」
「えっ、あっスニルさん、ここは?」
「ここが神界」
「そろったところでそろそろ行くぞ」
「あっはい、お願いします」
「?」
神様の言葉に反応する俺と、疑問符を浮かべる孝輔たちを淡い光が包んだかと思ったら、一瞬景色が暗転、すぐにまた真っ白空間へとやってきた。
「着いたぜ。ここが地球を管理する神の神界だ。おうXXXX神、今回は悪いな」
あっという間についたかと思ったら神様が何やら何もない空間に向かって挨拶をしている。ああそうか、地球の神様も地上に干渉しないようにしているから俺の目には映らないんだったな。
「えっと、スニルさんここは、それにさっきから誰と話を?」
事態が読み込めていたない麗香が代表して聞いてきたわけだが、ここら辺ほんとに麗香は姉だと思う。
「ここは地球を管理している神様の神界、んでさっきから俺が話しているのは異世界の神様だよ。俺は神様が直接転生させた存在ということでその姿を見て声を聴くことはできるけど、お前たちは人間の営みとして召喚されたわけだから神様も干渉できないからその姿を見ることはできないというわけだな。ちなみに、ここには地球の神様もいるみたいだけど、俺はその神様と接していないから俺にもその姿を見ることはできないみたいだ」
「そうなんですね。えっと、それで私たちは」
「スニル、話しているとこ悪いが、向こうさんも準備ができてるそうだぜ。呼んでいいか」
「はい、お願いします。麗香、孝輔、那奈、今お前たちの家族がここに来るぞ」
「えっ、今ですか?」
戸惑う麗香たちをよそに少し離れた場所に淡い光が数個出現したと思ったら、そこに5人の人影が現れた。
「あっ」
「お、お父さん、お母さん、それに侑李」
現れたのはもちろん3人の家族、麗香は口を押え、孝輔は目元をわずかに潤わせ、那奈に至っては涙を流して家族を呼ぶ。
「えっ、麗香、孝輔!」
「那奈!」
「お姉ちゃん!」
向こうも気が付いたようでわなわなと震えながら、それぞれの子供の名を呼ぶ、するとどちらからともなく駆け出し、お互いに強い抱擁。まさに感動の親子の再会である。
さて、とりあえず親子が再会したのはよかったが、問題はここからだ。この先俺は当事者というか原因というか、拉致犯一味というか、とにかく彼らに説明責任を果たさなければならない。人と話すのが苦手な俺としては実にハードルが高い仕事だ。でもま、これでも魔王、一国の王だからな。それなりに場数も踏んできた。なんとななるだろ。
「スニル悪いが頼んだぞ」
「はい」
麗香たちに神様が見えていないように、その家族も神様たちは見えていない、つまり彼らの矢はすべて俺に突き刺さるというわけだ。はてさて、どうなるものやら、今からちょっと憂鬱な気になってきたが、ここは逃げるわけにはいかない。面倒なことだ。
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二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
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俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
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俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
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宜しくお願いします。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
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田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
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王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
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