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第07章 魔王
03 アベイル
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魔族とは青い肌を持ち頭に人それぞれの角を有する姿をしており、人間の中で最も魔法に長けた種族となっている。
その魔族がなぜこのような島の奥地でひっそりと、というべきか街を築いているのか。その理由はダンクスたちや獣人族、エルフたちによって聞いている。それをちょっとまとめてみよう。
今から1万年ほど前、まだキリエルタ教はなく人族も他種族を排斥するようなことをせずにそれなりに仲良くやっていた。しかし、ある日、魔族の王である魔王が世界征服をもくろんだ。こう聞くとまるで魔族がよくあるファンタジーもののように悪とおもえるだろう。しかし、実際には単純に時の魔王が悪に染まり、それに逆らうことができない者や同意した者が引き起こした事態に過ぎない。そして、問題は魔族は魔法に長けた種族というだけではなく身体能力すらも人族よりも上であったことで、魔王が最初に滅ぼそうとしたのが人族だった。それから始まった魔族による人族の蹂躙、これには人族もたまらなず、多くの被害者が出たのは言うまでもないだろう。
事態を重く見た当時の教会で、ある儀式魔法が開発された。その魔法こそ勇者召喚、これは異世界(といってもこの世界の神様が管理する別の世界)から適任者を召喚し、大いなる力を与えるものだった。そうして、俺も知るような物語のごとく勇者はついに魔王を討伐、人族を救ったという。この話は1万年たった今でも人族の間で語り継がれており、ダンクス、シュンナ及び父さん、母さんは幼いころから童話として聞かされているものだった。ちなみに俺はまともな幼少期を過ごしていないためにこの話4人から聞かなければ知らなかった。だからだろう、魔族に会うとなった時、俺とまだ聞いていなかったサーナ以外が若干緊張していた。尤も、4人には俺が魔族とはどういう種族かということは話しているために若干程度で済んだといってもいいだろう。それほど、人族にとって魔族とは恐怖の対象なのだ。
んで、その魔族がなぜここにいるかという話だが、これは勇者に魔王が討伐され、そのついでに多くの魔族が返り討ちとなったが、中にはうまく逃げ延びた者たちも多くいたという。つまり、その逃げ延びた者たちが、この島に流れ着きここ奥地で小さな村を作りそこからこの街アベイルとなったという。余談だがこのアベイルというのは、サーナの由来でも使ったハッシュテル語で隠れ里という意味となる。
「綺麗よねぇ。聖都と比べてもすごくきれい」
「確かにな」
「魔族は魔法に長けた種族だからな。その分頭脳も人族と比べても良いんだよ」
魔法を使うには呪文の詠唱にはじめ多くの知識が必要になる。俺の場合はメティスルが保管してくれているので問題ないが、普通の人となるとそれなりに勉強しなければならない。といっても、扱える属性が1つか2つぐらいなのでそこまで必死こいて学ぶ必要はない。
「だからこんなすごい街ができたのね」
「ああそうだな。魔族は怖いものだと教わったからなぁ。まさかこんなすげぇ街を作ってるなんてな」
母さんと父さんも魔族の街に見とれながらもそういった感想を言っている。
「それで、どうする? いつものように別れる?」
俺たちは街へ着くといつもそれぞれが適当にぶらついている。今回もそれで行くかということをシュンナが聞いてきた。
「そうだなぁ。それもいいが大丈夫か?」
魔族に対する恐れは幼いころに刷り込まれたもので、そう簡単に払しょくできるものではない。実際街へ入ってから母さんは父さんと俺から離れないし、シュンナも何もない風を装っているが表情が若干硬い、ダンクスだけはいつも通りだけどな。でも、内心は少しビビっているのはそれなりに一緒に過ごしている俺にはよくわかる。
「うーん、確かにちょっと、ね」
「ああ、そう、だな」
「ミリアとヒュリックはやっぱり怖い? まぁ、あたしも気持ちはわかるけど」
「スニルから聞いているから、わかるっちゃわかるんだが、どうしてもな」
「そうね。小さいときに両親から聞かされていたから、でもそれはシュンナやダンクスも同じでしょ」
「まぁね」
「お。おう、そうだな。特に俺なんてガキの頃魔族だって言われて逃げられてたしな」
ダンクスの場合その強面から逆に魔族と恐れられていたようだ。尤も魔族の姿は一応物語で語られているらしいからダンクスがそれではないということはその子供もわかっている。つまりからかっていただけだな。
「それは災難だったな」
「全くだぜ。でもまぁ、俺もほんとにガキの頃から院長とかに言われ続けたからなぁ」
「となる、とりあえず一緒に動いておくか」
「そうしましょか」
「だな」
というわけで俺たちは一緒に街中を歩くことになった。
6人で街をぶらついていると、周囲からちらちらとみられている。やはり魔族の街において俺たちのような人族は珍しいのだろう。でも、この視線は悪感情ではなくただの好奇心みたいだから特に嫌な気はしないな。
そう思いながら街を歩きつつ、武器屋を眺めたり雑貨屋を眺めたり、通りにある屋台を巡ったりと思い思いに楽しんだのだった。
「そろそろ、宿を探す?」
「そうだな。確か1軒だけあるって話だったよな」
ここアベイルには魔族以外のエルフや獣人族はほとんど住んでいないが、彼らがここを訪れないわけではない。そんな彼らが泊まる宿として1軒だけ宿が作られている。そんな情報をエルフたちから聞いていた俺たちはその宿へと向かうことにしたのだった。
「あらっ、いらっしゃい。ああ、あなたたちね。人族の旅人なんて珍しいってみんな話しているわ。さぁ、どうぞ入って」
宿に入るとさっそく恰幅の言い40から50ぐらいの女性が話しかけてきた。ぱっと見どこにでもいる感じのおばちゃんなんだけど、その姿はやはり魔族なのでなんか妙な気分だ。
「ええと、泊まれるかしら」
「ええ、もちろんよ。お部屋はいくつ必要?」
「2つでお願い。男女で別れるつもりだから」
「そう、それじゃぁ、こちらへいらっしゃいな」
あっさりと宿をとることができたようで、女性の先導を受けて階段を上がっていく。
「それじゃ、この部屋は女の子が使ってちょうだい。比較的綺麗な部屋よ。それで、男の子はこっちね」
どうやらシュンナたち女性陣にはきれいな部屋をあてがってくれたらしい。それじゃ俺たちの部屋はというと、特に汚いというわけではなく人族の街にあった宿よりはとともった部屋だった。こういうところでもなんかこう、人族って劣っている気がするな。街の文明文化もどちらかというとここのほうが優れているように思えたし。
「なんか、こうしてみると魔族のほうが発展しているような気がするなぁ」
ダンクスがそうつぶやいたが、まさに俺も同じことを考えていた。
「ほんとねぇ」
「はははっ、言えてるな」
「そうかもね。料理の方はそこまで変わらない気はするけど、道とかも綺麗だったしね」
「ああ、確かに、あっちの道はいまだに砂地って感じだしな」
人族の街での道路と言えば、踏み固められた砂って感じだった。聖都や王都といった場所になると中央にある大きな通りだけは石畳が敷かれていたが、馬車の往来で凸凹だった。それに対してここアベイルはちゃんと舗装されているんだよな。もちろんアスファルトというようなものではなくコンクリみたいなものだったけれど、それでも定期的に直しているのかちゃんと平らな道だった。
「雑貨とかも結構いいものがったわね」
「そうそう、いっぱい買っちゃったよ」
余談だがここアベイルで使われている通貨は当然ながら人族で使っているものとは全くの別物だ。ではどうやって金を手に入れたのかというと獣人族たちからハンターたちを退けたことへの報酬としてもらったものだ。それしかないから実はそれほどの量がない。といっても数日程度なら街で好き勝手過ごすほどはある。
「明日はどうする。いつもの通りか?」
「そうね。そうしましょうか」
「ええ、今日一日回ってみたけれど、魔族の人たちもずいぶんと友好的だったしね」
「だな。思っていたよりも普通の人たちだったからな」
「まっ、魔族が怖いってのは人族が過去の記憶からそう言っているだけだしな」
「魔族もまた、俺たちと同じ人間だよ」
「それは痛感したな」
そう言うことで、明日はいつものようにそれぞれがばらばらとなって過ごすこととなったのだった。
翌日、俺たちはいつものようにそれぞれが街の散策に出かけることとなった。
「じゃぁ、お昼にね」
「おう」
昼飯は一緒に食うことにしているために、午前中の散策を終えたら待ち合わせの場所に集合することにしている。
「それじゃ、俺たちも行くか」
「ええ、スニルまたあとでね」
「ああ」
父さんと母さんも2人して街へ出かけていく、最初のころは俺についてきていた2人ではあるが、最近はこうして2人で出かけるようになってきた。これは2人がいつまでも俺にくっついていてもいろいろ問題があると考えた結果となっている。まぁ、俺もすでに14だからな日本なら中学生、思春期真っ只中それなのに両親がべったりではちょっとまずいしね。そんなわけで俺も1人でのんびりと街へと繰り出していった。ちなみにダンクスは今朝早くにすでに繰り出している。
「さて、どこ行くかな……見るべきところは昨日のうちに見ちまったし、となると適当にぶらつくか」
そういうことで適当に街中をぶらつくことにしたわけだが、ほんと道がしっかりしていると歩きやすいな。それに道の真ん中に馬糞とかも落ちてないし、人族の街ってたまに馬糞が普通に落ちてるんだよな。とはいえ馬車や馬が全く歩いていないというわけではなく、定期的に清掃人がやって来て道などを掃除して回っているようだ。こういった役割の仕事は人族の世界ではほとんどいない。というか新人冒険者の仕事となるが、ほとんど受ける奴がいないためにずっと掲示板に張られているものなのだそうだ。
そんなことを思いつつも再び歩き始めるとやはり周りから見られている気配がする。
「あれ? スニルじゃないか。一人か?」
すると突然声を掛けられた。おかしいこんなところに俺を知る奴はいないはずなんだが、そう思いつつ声のしたほうを振り返ってみると、そこにいたのは獣人族の男、名前は忘れたが東獣人族の集落で見たことがある。
「ええと……」
「はははっ、俺のことは知らないだろう。俺は東のワッツってもんだ。お前のおかげで息子が助かったんだよ。あの時はちゃんと礼を言えなかったからな。改めて礼を言わせてくれ。それに俺たち獣人族を救ってくれた。本当にありがとな」
「えっ、あっいや、いいよ」
いつも言うが俺は自分がやりたいことをやっただけで、こうして礼を言われるいわれはない。
「ははつ、あの時と同じことを言ってきたな。まっなんだ、こっちはそれだけ感謝しているってこった」
「そう」
それから少しワッツと話をしてから別れたのだった。
それから昼になり別れていたみんなと合流して一緒に昼飯を食った後、再び適当に別れたのだった。
「結構楽しかったよね」
「ああ、武器屋もよかったぜ。さすがドワーフ製だぜ」
「ごはんもおいしかったよね」
宿に戻って夕飯を食べながらそれぞれ街に関する感想を述べている。
「失礼、少しよろしいでしょうか?」
飯を食い終わり落ち着いたところで、突然そう言って1人の魔族が声を掛けてきた。
その魔族がなぜこのような島の奥地でひっそりと、というべきか街を築いているのか。その理由はダンクスたちや獣人族、エルフたちによって聞いている。それをちょっとまとめてみよう。
今から1万年ほど前、まだキリエルタ教はなく人族も他種族を排斥するようなことをせずにそれなりに仲良くやっていた。しかし、ある日、魔族の王である魔王が世界征服をもくろんだ。こう聞くとまるで魔族がよくあるファンタジーもののように悪とおもえるだろう。しかし、実際には単純に時の魔王が悪に染まり、それに逆らうことができない者や同意した者が引き起こした事態に過ぎない。そして、問題は魔族は魔法に長けた種族というだけではなく身体能力すらも人族よりも上であったことで、魔王が最初に滅ぼそうとしたのが人族だった。それから始まった魔族による人族の蹂躙、これには人族もたまらなず、多くの被害者が出たのは言うまでもないだろう。
事態を重く見た当時の教会で、ある儀式魔法が開発された。その魔法こそ勇者召喚、これは異世界(といってもこの世界の神様が管理する別の世界)から適任者を召喚し、大いなる力を与えるものだった。そうして、俺も知るような物語のごとく勇者はついに魔王を討伐、人族を救ったという。この話は1万年たった今でも人族の間で語り継がれており、ダンクス、シュンナ及び父さん、母さんは幼いころから童話として聞かされているものだった。ちなみに俺はまともな幼少期を過ごしていないためにこの話4人から聞かなければ知らなかった。だからだろう、魔族に会うとなった時、俺とまだ聞いていなかったサーナ以外が若干緊張していた。尤も、4人には俺が魔族とはどういう種族かということは話しているために若干程度で済んだといってもいいだろう。それほど、人族にとって魔族とは恐怖の対象なのだ。
んで、その魔族がなぜここにいるかという話だが、これは勇者に魔王が討伐され、そのついでに多くの魔族が返り討ちとなったが、中にはうまく逃げ延びた者たちも多くいたという。つまり、その逃げ延びた者たちが、この島に流れ着きここ奥地で小さな村を作りそこからこの街アベイルとなったという。余談だがこのアベイルというのは、サーナの由来でも使ったハッシュテル語で隠れ里という意味となる。
「綺麗よねぇ。聖都と比べてもすごくきれい」
「確かにな」
「魔族は魔法に長けた種族だからな。その分頭脳も人族と比べても良いんだよ」
魔法を使うには呪文の詠唱にはじめ多くの知識が必要になる。俺の場合はメティスルが保管してくれているので問題ないが、普通の人となるとそれなりに勉強しなければならない。といっても、扱える属性が1つか2つぐらいなのでそこまで必死こいて学ぶ必要はない。
「だからこんなすごい街ができたのね」
「ああそうだな。魔族は怖いものだと教わったからなぁ。まさかこんなすげぇ街を作ってるなんてな」
母さんと父さんも魔族の街に見とれながらもそういった感想を言っている。
「それで、どうする? いつものように別れる?」
俺たちは街へ着くといつもそれぞれが適当にぶらついている。今回もそれで行くかということをシュンナが聞いてきた。
「そうだなぁ。それもいいが大丈夫か?」
魔族に対する恐れは幼いころに刷り込まれたもので、そう簡単に払しょくできるものではない。実際街へ入ってから母さんは父さんと俺から離れないし、シュンナも何もない風を装っているが表情が若干硬い、ダンクスだけはいつも通りだけどな。でも、内心は少しビビっているのはそれなりに一緒に過ごしている俺にはよくわかる。
「うーん、確かにちょっと、ね」
「ああ、そう、だな」
「ミリアとヒュリックはやっぱり怖い? まぁ、あたしも気持ちはわかるけど」
「スニルから聞いているから、わかるっちゃわかるんだが、どうしてもな」
「そうね。小さいときに両親から聞かされていたから、でもそれはシュンナやダンクスも同じでしょ」
「まぁね」
「お。おう、そうだな。特に俺なんてガキの頃魔族だって言われて逃げられてたしな」
ダンクスの場合その強面から逆に魔族と恐れられていたようだ。尤も魔族の姿は一応物語で語られているらしいからダンクスがそれではないということはその子供もわかっている。つまりからかっていただけだな。
「それは災難だったな」
「全くだぜ。でもまぁ、俺もほんとにガキの頃から院長とかに言われ続けたからなぁ」
「となる、とりあえず一緒に動いておくか」
「そうしましょか」
「だな」
というわけで俺たちは一緒に街中を歩くことになった。
6人で街をぶらついていると、周囲からちらちらとみられている。やはり魔族の街において俺たちのような人族は珍しいのだろう。でも、この視線は悪感情ではなくただの好奇心みたいだから特に嫌な気はしないな。
そう思いながら街を歩きつつ、武器屋を眺めたり雑貨屋を眺めたり、通りにある屋台を巡ったりと思い思いに楽しんだのだった。
「そろそろ、宿を探す?」
「そうだな。確か1軒だけあるって話だったよな」
ここアベイルには魔族以外のエルフや獣人族はほとんど住んでいないが、彼らがここを訪れないわけではない。そんな彼らが泊まる宿として1軒だけ宿が作られている。そんな情報をエルフたちから聞いていた俺たちはその宿へと向かうことにしたのだった。
「あらっ、いらっしゃい。ああ、あなたたちね。人族の旅人なんて珍しいってみんな話しているわ。さぁ、どうぞ入って」
宿に入るとさっそく恰幅の言い40から50ぐらいの女性が話しかけてきた。ぱっと見どこにでもいる感じのおばちゃんなんだけど、その姿はやはり魔族なのでなんか妙な気分だ。
「ええと、泊まれるかしら」
「ええ、もちろんよ。お部屋はいくつ必要?」
「2つでお願い。男女で別れるつもりだから」
「そう、それじゃぁ、こちらへいらっしゃいな」
あっさりと宿をとることができたようで、女性の先導を受けて階段を上がっていく。
「それじゃ、この部屋は女の子が使ってちょうだい。比較的綺麗な部屋よ。それで、男の子はこっちね」
どうやらシュンナたち女性陣にはきれいな部屋をあてがってくれたらしい。それじゃ俺たちの部屋はというと、特に汚いというわけではなく人族の街にあった宿よりはとともった部屋だった。こういうところでもなんかこう、人族って劣っている気がするな。街の文明文化もどちらかというとここのほうが優れているように思えたし。
「なんか、こうしてみると魔族のほうが発展しているような気がするなぁ」
ダンクスがそうつぶやいたが、まさに俺も同じことを考えていた。
「ほんとねぇ」
「はははっ、言えてるな」
「そうかもね。料理の方はそこまで変わらない気はするけど、道とかも綺麗だったしね」
「ああ、確かに、あっちの道はいまだに砂地って感じだしな」
人族の街での道路と言えば、踏み固められた砂って感じだった。聖都や王都といった場所になると中央にある大きな通りだけは石畳が敷かれていたが、馬車の往来で凸凹だった。それに対してここアベイルはちゃんと舗装されているんだよな。もちろんアスファルトというようなものではなくコンクリみたいなものだったけれど、それでも定期的に直しているのかちゃんと平らな道だった。
「雑貨とかも結構いいものがったわね」
「そうそう、いっぱい買っちゃったよ」
余談だがここアベイルで使われている通貨は当然ながら人族で使っているものとは全くの別物だ。ではどうやって金を手に入れたのかというと獣人族たちからハンターたちを退けたことへの報酬としてもらったものだ。それしかないから実はそれほどの量がない。といっても数日程度なら街で好き勝手過ごすほどはある。
「明日はどうする。いつもの通りか?」
「そうね。そうしましょうか」
「ええ、今日一日回ってみたけれど、魔族の人たちもずいぶんと友好的だったしね」
「だな。思っていたよりも普通の人たちだったからな」
「まっ、魔族が怖いってのは人族が過去の記憶からそう言っているだけだしな」
「魔族もまた、俺たちと同じ人間だよ」
「それは痛感したな」
そう言うことで、明日はいつものようにそれぞれがばらばらとなって過ごすこととなったのだった。
翌日、俺たちはいつものようにそれぞれが街の散策に出かけることとなった。
「じゃぁ、お昼にね」
「おう」
昼飯は一緒に食うことにしているために、午前中の散策を終えたら待ち合わせの場所に集合することにしている。
「それじゃ、俺たちも行くか」
「ええ、スニルまたあとでね」
「ああ」
父さんと母さんも2人して街へ出かけていく、最初のころは俺についてきていた2人ではあるが、最近はこうして2人で出かけるようになってきた。これは2人がいつまでも俺にくっついていてもいろいろ問題があると考えた結果となっている。まぁ、俺もすでに14だからな日本なら中学生、思春期真っ只中それなのに両親がべったりではちょっとまずいしね。そんなわけで俺も1人でのんびりと街へと繰り出していった。ちなみにダンクスは今朝早くにすでに繰り出している。
「さて、どこ行くかな……見るべきところは昨日のうちに見ちまったし、となると適当にぶらつくか」
そういうことで適当に街中をぶらつくことにしたわけだが、ほんと道がしっかりしていると歩きやすいな。それに道の真ん中に馬糞とかも落ちてないし、人族の街ってたまに馬糞が普通に落ちてるんだよな。とはいえ馬車や馬が全く歩いていないというわけではなく、定期的に清掃人がやって来て道などを掃除して回っているようだ。こういった役割の仕事は人族の世界ではほとんどいない。というか新人冒険者の仕事となるが、ほとんど受ける奴がいないためにずっと掲示板に張られているものなのだそうだ。
そんなことを思いつつも再び歩き始めるとやはり周りから見られている気配がする。
「あれ? スニルじゃないか。一人か?」
すると突然声を掛けられた。おかしいこんなところに俺を知る奴はいないはずなんだが、そう思いつつ声のしたほうを振り返ってみると、そこにいたのは獣人族の男、名前は忘れたが東獣人族の集落で見たことがある。
「ええと……」
「はははっ、俺のことは知らないだろう。俺は東のワッツってもんだ。お前のおかげで息子が助かったんだよ。あの時はちゃんと礼を言えなかったからな。改めて礼を言わせてくれ。それに俺たち獣人族を救ってくれた。本当にありがとな」
「えっ、あっいや、いいよ」
いつも言うが俺は自分がやりたいことをやっただけで、こうして礼を言われるいわれはない。
「ははつ、あの時と同じことを言ってきたな。まっなんだ、こっちはそれだけ感謝しているってこった」
「そう」
それから少しワッツと話をしてから別れたのだった。
それから昼になり別れていたみんなと合流して一緒に昼飯を食った後、再び適当に別れたのだった。
「結構楽しかったよね」
「ああ、武器屋もよかったぜ。さすがドワーフ製だぜ」
「ごはんもおいしかったよね」
宿に戻って夕飯を食べながらそれぞれ街に関する感想を述べている。
「失礼、少しよろしいでしょうか?」
飯を食い終わり落ち着いたところで、突然そう言って1人の魔族が声を掛けてきた。
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