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第04章 奴隷狩り

02 捜索依頼

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 ポリーからの手紙に返事を書いてから2週間が過ぎた。
 あれから、いくつかの街を越えつつ、今はウルベキナ王国王都を目指している。
 これは、やはり文明文化というものが集約するのが王都だからである。
 その国の首都を見ればその国の最新の文明が分かるからだ。

 てなわけで、俺たちは街へ向けて街道を歩いていた。

「娘を返せー」

 そんな叫び声とともに、藪からおっさんが鍬を構えてダンクスに襲い掛かった。

「うぉっと、あぶねぇ」

 ダンクスもおっさんが近くにいるということは分かっていたが、まさかいきなり襲われるとは思わず慌ててよけた。

「ダンクス、何かしたの?」
「しねぇょ!」

 シュンナがダンクスを揶揄するがほんとにいきなりなんなんだろうか、わからん。

「娘を、返せ!!」

 なおもダンクスに襲い掛かるおっさん、俺とシュンナは首をかしげながらもそれを眺めていた。

「いや、お前らも助けろよ!」

 そんな俺たちを見たダンクスがそう叫んだ。

「自分でできるだろ」
「そうそう」
「おまえらなぁ。よっと」

 ダンクスもこのままじゃらちが明かないと思ったようで、おっさんの猛攻を何とか鍬を受け止めることで制した。

「うわぁぁあああ」

 それでももがくおっさん、ほんといったいどうしたんだ。

「ねぇ、おじさん。落ち着いて、その人見た目は怖いけど悪い人間じゃないわよ」

 ここで、ようやくシュンナがそう言っておっさんを止めたのだった。

「確かに悪人面ではあるけどね」
「へぇっ」

 俺たちの言葉におっさんはようやく素っ頓狂な言葉を出しながら止まった。

「落ち着いたか、おっさん」
「え、ええと」

 まだ状況がよくわかっていないように見えた。

「だから、その人見た目は怖いけど善人よ、一応ね」
「一応ってなんだよ」
「細かいことはいいの」
「はぇ、えっ」
「つまり、勘違い」

 俺は短く結論付けた。


 それから数分してようやくおっさんが落ち着きを取り戻した。

「す、すみませんでした」

 土下座の勢いで頭を下げたおっさん。

「いや、気にするな」
「そうそう、だいたいダンクスがこんな顔なのが悪いんだし」
「悪かったな」

 この時ばかりはダンクスの強面が割を見たのであった。

「それで、いったいなんで俺を襲ったんだ」

 ここにきて事情を聴くことにした。

「は、はい、実は2日ほど前のことですが、山菜取りに出かけた娘がさらわれたのです」

 そんなところだとは思った。

「そ、それは災難だったな。それで、俺をその犯人と思ったわけか」
「は、はい、申し訳ありません」
「いや、それはもういいけどよ」
「そうそう、気にしないで、とにかくまずは移動しない。ここらは見たところ魔物はいない見たいだけど、いつ何が来るかわからないし」
「だな、探知でも動物しかいなさそうだけど固まってても仕方ない」
「ああ、そうだな。おっさんあんたの村はどっちだ」
「あっ、はい、あちらです」

 俺たちはとりあえずおっさんの村へ行くことにした。

「それにしても、危なくなぇかこの辺りだって魔物だっているだろ」

 ダンクスが尤もな話を聞いた。
 地球じゃないんだから、ただのおっさんが1人で村から離れるって正直自殺行為でしかない。

「いえ、この辺りは昔から魔物はほとんどいないのです。それに盗賊とかもいませんし、だから娘も友人と山菜取りに出かけて……」

 そう言っておっさんはさめざめと泣き始めた。

「なるほどねぇ。まぁ、ない話じゃないわね。でも、だからといって絶対安全ってわけでもないってことだものね」

 シュンナの言う通り、いくら魔物が闊歩している世界といっても所狭しと魔物がいるわけじゃない、時には魔物が全くいない地域だって存在している。
 また、この辺りは昔から盗賊もいないという、だからこそ危険はなく娘2人だけで山菜取りに出かけても危険はないとおっさんたちは判断していた。
 しかし、その長い年月の油断が今回誘拐という事態となったわけだ。

「あれが、私の村です」

 しばらく歩いていると、前方にのどかな村が見えてきた。どうやらおもな産業は家畜みたいで、村の中に牛やヤギなどが目に入ってきた。

「のどかね」
「だな」
「ああ」

 そうつぶやいていると、前方から1人のおっさんが走ってきた。

「コウリ、お前また探しに行っていたのか? 1人で行くなといっただろ」
「すまない。でも……」
「お前の気持ちは俺だってわかる、もしかしたら……」

 そう言ってもう一人のおっさんがこちらを見たが、このおっさんの言い分から考えるとおそらくもう1人の娘の親父さんだろう。
 一方はさらわれ、一方は助かったというわけか。

「おい、コウリそいつらは?」

 最初のおっさん、コウリに俺たちが何者かを聞いてきた、尤も主にダンクスを見てだけどな。

「この人たちは、その犯人と間違えて、でも親切にも送り届けてくれたんだ」

 コウリは少しばつが悪そうに言った。

「ああ、そうか、そいつは悪かったな。こいつもいろいろあっ気が立っていたんだ」
「いや、俺たちは別に気にしてないぜ。それで、ちょっと聞きてぇんだけど」

 ダンクスはそういうと事件について詳しく聞いていった。
 ダンクスの奴、どうやら元騎士としての血が騒いだらしいな。
 まぁ、俺も少々気になるからその話を詳しく聞いてみた。
 それによると、今から2日前の午前中、コウリの娘モニカともう1人ロリエで山菜取りに出かけた。場所は俺たちがコウリに襲われた周辺だったという。
 これは特に変わったことではなく週に数回は繰り返していることだった。
 その日、2人は少し離れた場所で山菜をとっていた。
 これもまたいつものことだったそうだ。
 だが、そんなときロリエが悲鳴らしきものが聞こえたことで、恐る恐るその声のしたほうに向かった。
 そして、ロリエが見たものは友人であるモニカが、3人の男たちにさらわれているところだった。
 ロリエはモニカを助けたいと思いつつも、恐怖が勝り何もできずただ物陰に隠れるしかできなかった。
 これは仕方ない、俺たちみたいに戦えるのならまだしも、普通の村人であるロリエにそれを求めるのは酷というものだろう。

「なるほどな、状況は分かった。あとは犯人の特徴は分かるか」
「はい、ロリエによると、犯人は3人ともあなた方のような恰好をしていたというのです」
「3人ともか、もしかして俺たちを勘違いしたのって」
「ダンクスの顔だけじゃなかったみたいね」
「え、ええその、すみません」
「いや、いいさ。それでそいつらはそのあとどうしたんだ?」

 これが重要だ。モニカをどこに連れて行ったのかということだ。

「はい、ロリエによりますと、犯人は馬車に乗り込みキエリーヴのほうへ向かったそうです」
「キエリーヴ?」
「森の中じゃなく?」
「は、はい、我々もロリエから話を聞いてすぐにその場所に向かいましたが、確かに街に向かっているようでした」

 どういうことだ人をさらって、直で街へ向かったってのか、いや、それは無理だろ。
 以前聞いた話だと、盗賊などが人をさらった場合まず拠点へ連れていき闇商人へ売るはずだ。
 直接街へ向かうなんてありえない。
 なにせ、普通に捕まるからな。
 だとしたら、盗賊とは違う別の何かということだろう。
 まぁ、そいつらの恰好も俺たちみたいに普通の旅人か冒険者のような恰好だったらしいしな。
 そんなまともな格好をしている盗賊なんて聞いたことないし。
 うーん、わからん。

「話を聞いている限りだと、どうやら盗賊の類ではないようだな」
「ええ、そうね。それは間違いなさそう。スニルはどう思う?」
「俺もそう思う、でも一体どんな奴らなんだ?」
「なんにせよ。一応現場を見てみる必要はありそうだな」
「そうしましょうか」
「それしかないか」

 話を聞いているうちに俺たちはこの事件を調べてみる気になっていた。

「あ、あのもしかして娘のことを」

 俺たちが話しているとコウリが恐る恐るといった風に聞いてきた。

「ああ、ここまでかかわった以上気になるからな」
「そうね。確かに気にはなるわよね」
「まぁ、そういうことだ。っで、聞きたいんだけど、娘の特徴を教えてくれ」
「あぁ、ありがとうございます。ありがとうございます」

 コウリを含めた村人たちは拝み倒さんばかりに俺たちに礼を言ってきたわけだが、そういうのは見つけて保護してから言ってほしいものだ。

 それから、俺たちは村を離れもう一度襲われた場所まで戻り聞いた現場へと向かったのだった。

「2日前じゃ、あまり手がかりは残ってないかもな」
「そりゃぁね。あれからいk柄の馬車だって通っただろうし」
「だな。魔力の痕跡もほとんど残ってないな」

 俺の言った魔力の痕跡というのは、人や魔物などといった魔力を宿すものが魔法という形で魔力を使った際、または魔法を使わなくとも興奮するとある程度の魔力を帯びるわけだが、その時に痕跡としてその場に残る。
 普通はこの痕跡をたどることはできないが、俺ならばある程度は可能となる。

「多少は残ってるんだろ」
「ああ、多少はな」
「どっちに行ってる」
「街だな。キエリーヴの方角だ」

 俺が指さしたほうはには俺たちが今回目指している街があり、痕跡はそちらに向かっていた。

「なら、俺たちも街へ向かってみるか」
「だな」
「そうね」

 というわけで、俺たちは予定通りキエリーヴの街へ向かうことにした。



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「あれが、キエリーヴか、なんていうか普通だな」
「そりゃぁ、さすがに街ぐるみってわけじゃないだろうしね」
「痕跡はどうだ」
「一応、あそこに続いているみたいだな。といっても、かなり弱いから多分としか言えないが」

 一応痕跡を追ってはいるが、それはかなり弱くほとんどわからない。それでも、おそらくコウリの娘モニカであろう痕跡は明らかに街へ入っている。

「とにかく街へ入ろう」
「そうするか」

 はてさて、どんな街か、モニカはどこに行ったのか。
 まぁ、おそらくだがすでにこの街にはいないと思うけどな。
 それでも何らかの情報ぐらいはあるかもしれないから、ちょっと調べてみるか。

 そう思いながら俺たちはキエリーヴの街へ入っていった。

「いたって、普通の街だな」
「これといってないわね」
「そうだな」

 キエリーヴはどこにでもある普通の街であるのは間違いない。
 そう思いつつ俺たちは適当にぶらつき、何か情報はないかと簡単な聞き込みをしてから宿をとったのだった。
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