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第02章 旅立ちと出会い

03 新たな旅立ち

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 幼いころから虐待を受け、違法に奴隷にされたいわゆる元違法奴隷の俺。
 無実の罪を着せられて、犯罪奴隷にされた元犯罪奴隷のダンクス。
 信じていた仲間に裏切られて、多額の借金から借金奴隷にされた元借金奴隷のシュンナ。

 そんな不当な理由でなった元奴隷3人で、ともに旅をすることとなった。

「まぁ、とりあえず飯にするか」
「おっ、いいのか? 腹減ったぜ」
「確かに、おなか減ったよね。奴隷だとあまりご飯もらえないし」
「そうなんだよな」
「そうそう」

 俺たちは元奴隷だけあってこういった話が合うんだろう、お互いにうなずきながらそうだそうだと言い合う。

「っと、とりあえずこれにするか?」

 そういって、俺が取り出したのは巨大な寸胴鍋だ。

「うぉ、でかいな」
「……ほんとね、スニル大丈夫?」
「ああ、何とかね」

 鍋の大きさを見たことでその重さを想像したのだろう、シュンナがそういって気遣ってくれたが、実際問題取り出す瞬間は重さを感じないので問題ない、まぁ、すぐに重さがかかってくるからすぐにおろさないといけないけどな。

「よくこんな鍋があったな」

 一方でダンクスは鍋の大きさによく存在したなと驚いている。

「いや、村にもこんなものはなかったから、俺が作ったんだよ」
「作った? どうやって」
「大地魔法の”錬成”って魔法があるんだけど、それを使えばね。ほい、ダンクス」
「おう、悪いな。メティスルだっけ、何でもありだな」
「まぁ、魔法に関してはな。はい、シュンナも」
「ありがと、ほんと、すごいよね。それ」

 鍋からこれまた”収納”から取り出した皿に取り出し2人に手渡してから、自分の分も皿にとりわけ自身の前に置く。

「そんじゃ、食うか、いただきます」
「おう、って、なんだそれ?」
「前世の世界の国でのあいさつだな。食事って言うのは、野菜にしろ肉にしろ魚にしろ元は命あったわけだろ、その命をいただいて自身の生きる糧にするから、その命に感謝していただきますってことと、後は食事を作ってくれた人に対しての感謝の気持ちを込めた言葉だよ」
「へぇ、なるほど、命をいただきますか、その国の人たちはそういうのを大切にするんだね」
「だな。あの国はあらゆるものに神様が宿るって言われていて、その神様に感謝する文化が根付いているんだよな」
「神様に感謝か、まぁ、あたしたちもこの世界の神様に感謝しないといけないかもね」
「どうしてだ?」
「だって、神様がスニルをこの世界に送ってくれたから、あたしたち奴隷から解放されたんじゃない」
「ああ、そういうことか、じゃぁ、神様とスニルに感謝だな」

 食事の挨拶からなぜか俺が感謝されることとなった。

「神様はともかく、俺はいいって」

 とまぁ、こうして3人での夕飯は終わったのだった。
 ちなみに、シュンナとダンクスは遠慮しながらもそれぞれ結構な量食べた。
 まぁ、俺もこっちに来てからずいぶんと量を食うようにはなったけどな。

 そうして、腹も膨れたところで本日は寝ることとなった。
 俺もそうだが、やはり奴隷として過ごしてきてあのブラッドベアとの攻防、疲れもあったんだろう、俺たちはぐっすりと眠りについた。

 余談だが、本当に余談だが、寝る場所はダンクスが床、これは単純にダンクスがでかすぎて俺がテントに持ち込んだベッドでは寝られないからだ。そして、シュンナがベッド、じゃぁ、俺はどこで寝たかというと、実は俺もベッドだった。
 そう、つまり俺はシュンナと一緒に寝たことになる。
 言っておくけど、俺が言い出したことでもないし、俺としてはダンクス同様床で寝るつもりだった。
 だが、シュンナとダンクスによりそれは却下された。
 その理由は俺が子供だからだが、いや、俺中身はおっさんなんだけど……そういったが、肉体は子供でしかもこれまでの12年のことを考えると、ベッドで寝ろと強く言われてしまった。
 とはいえ、女であるシュンナを床で寝かせるのは俺もダンクスも反対した。
 その結果として、シュンナの提案で俺とシュンナがベッドを使うこととなったというわけだ。
 俺もいやいや、と抵抗したが現在俺の肉体は小さく痩せている。何が言いたいかというと、俺はものすごく軽い、そのためダンクスなら片手でひょいっと持ち上がるし、シュンナでもあっさりと持ち上げることができるのが今の俺だ。だからこそ、あっさりとベッドに運ばれてしまった。
 まぁ、そのあとは疲れからかすぐに熟睡したけどな。
 というか、俺は今肉体が12歳でも幼いころからの虐待によってか、性欲が全くないんだけどな。




ZZZZZZZZZZZZZzzzzzzzzzzzzZZZZZZZZZZZZZzzzzzz




 そんなこんなで翌日、俺は柔らかいものに包まれたまま目を覚ました。

「……起きたか?」

 背後からそんな声が聞こえてきた。

「……起きたけど、動けない」
「だろうな」

 俺と会話をしているダンクスは小声だ。というのも俺を抱き枕のように抱きしめているシュンナが、まだ眠っているからだ。

「う~ん、あれっ? ああ、そうか、おはよ」
「あ、ああ」
「おう、シュンナも起きたか?」

 俺がちょっと身じろぎしたからか、シュンナも目を覚ましたようだ。
 そして、俺を抱きしめていることに気が付いてそう挨拶をしつつようやく放してくれた。

「ふわぁあ、久しぶりによく寝た」
「まったくだぜ」
「それはよかった。えっと、飯にするか」
「だな」

 それから、俺が”収納”から取り出した朝食を食べることにしたわけだが、シュンナもダンクスも俺と同様いただきますといって食べていたのが、なんだかうれしかったのは秘密だ。

「さてと、じゃぁ、さっさと出発するか?」

 ダンクスがそういったが、俺は待ったをかけた。

「その前に、2人とも着替えたほうがいいだろ」
「ああ、確かにこのままってわけにはいかないよね」
「そうか、俺は、別にこのままでもいんだが」
「いや、そんなもの着てたら、奴隷って言ってるようなもんだろ」

 シュンナとダンクスが現在着ているのは襤褸、この襤褸は奴隷商が奴隷に身に付けさせるもので、奴隷以外で身に付けるものはそうそういないだろうと思う。
 そんな襤褸を着たままでいればせっかく奴隷の首輪を外したのに、誰かに見つかったとたん奴隷に戻される可能性が高い。
 そんなわけで、2人には着替えてもらった方がいいだろう。

「でも、何か着るものあるの」

 シュンナがそう聞いてきたので、俺は”収納”から両親の服を取り出した。

「とりあえず、これを、こっちは母さんのでこっちは父さん」
「えっ、いいの?」
「ああ、いいよ。ていうかこれしかないし、俺が持っていても仕方ないし」

 俺が両親の服を持っている理由は単純に、何か使えるかもしれないと思ったからだが、まさか、こんなに早く使う時が来ようとは思わなかった。

「そう、ありがと、あとで、洗って帰すからね」
「そうだな」
「別に、いいんだけど、わかった」

 ということで、着替えることとなり俺とダンクスはテントの外に出た。

「……小せぇな」
「……だろうな」

 ダンクスはさっそく父さんの服を着たわけだが、思った通り小さい、父さんも大柄だったと聞いていたし、実際に服も結構でかい、それでもダンクスはそれよりさらにでかいので入らない。
 いや、まぁ、下は何とか入ったんだけど上が無理だ。まず、腕が入らない、無理やり着ようとするとまるで拘束具だったよ。

「しゃぁねぇ、上はこのままでいいだろ」
「だな」

 ダンクスはズボンのみ履き、上半身は裸のままにした。
 この格好日本じゃ滅多にいないが、この世界それなりに結構いて、テッカラでも何人か見かけたから問題ないだろう。

「シュンナは、まだか?」
「みたいだな。まぁ、たぶんシュンナもダンクスと同じようなことになってると思うけど」
「だろうな。あれじゃ、そうそうないだろ」

 俺とダンクスがそんなことを話していると、テントの中からシュンナの声がした。

「もう、いいわよ」

 入ってもいいということなので、俺とダンクスはテント内に入っていった。
 そうして、見たのは思っていた通りで下のズボンは母さんのがぴったりだったみたいだけど、問題は上で、ダンクス同様シャツは入らなかったらしく胸に先ほどまで身に付けていた襤褸だとおもうけど、それをさらしのように巻き、その上から上着を着ている状態だ。
 その上着も、当然前を閉めることができず胸が飛び出してるけどな。
 でも、まったくおかしさは感じない。

「この格好だとあまり派手には動けないけどね。それより、ダンクスも入らなかったんだ」
「ああ、これも小さくてよ」

 そういいつつダンクスはズボンに指をあてる。

「確かに、ピチピチじゃない。それじゃ、みっともないし、あっ、こうしたら」

 シュンナが言うように、ダンクスのズボンはかなりきつそうに見えるし、実はしっかりと上部のボタンが止まっていない。
 それがみっともないので、隠すためにとこれまたさっきまでダンクスが身に付けていた襤褸をダンクスの腰に巻いた。
 これで、一見すると問題ないように見える。

「おっ、サンキュ」

 ダンクスもそれは感じていたようでこの提案をありがたく受け取っていた。

「まぁ、とりあえず、整ったしそろそろ出発するか」
「そうするか」
「そうね」

 こうして、俺たちはテントを片付けた後、カリブリンに向けて歩き出した。
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