おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限

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第01章 最低な始まり

05 テッカラでの目的

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 翌日。

「ふわぁ、さぁてと、飯食ったら、さっそく行くかな」

 というわけで、適当に飯食って、すぐに立ち上がり出発することにした。

 さて、そんな俺が向かっている所は、昨日見つけた冒険者ギルドだ。
 といっても、別に冒険者になろうと思っているわけではない。
 確かに、前世の記憶があるので、冒険者に憧れ的なものがあるのは事実だけど、冒険者になると最低1年は街中での仕事しかさせてもらえなく、3年は登録した街でしか仕事ができなくなるらしい。
 つまり、ある程度したところで別の街に移動する。ということができない。
 というのを、俺を売ったやつが言っていたのを覚えている。
 
 俺としては、そんな1つの街に3年もとどまるなんてことをしたくない。
 そんなわけで、俺は冒険者になるつもりはない。
 じゃぁ、なんで冒険者ギルドに向かっているのかというと、答えは簡単だ。

 俺の現在の目的は、自分の名前を知ること。
 以前説明した通り、現在俺に名前はない。
 もう一度ちゃんと説明すると、俺の首にはまっていた奴隷の首輪の機能に”真名の剥奪”というものがある。
 この真名というのは、この世界において、生まれてから最初に付けられた名前となる。
 これを剥奪することで、その人物を誰でもない”物”へと変える。
 っで、普通なら自分の真名を忘れるなんてことはないから、奴隷の首輪が外れ、自身がその名を認識することで改めて真名が刻まれるはずだった。
 しかし、先述したように、俺は幼いころに両親を失い、俺を引き取ったクソ一家から名前を呼ばれたことなど一度もない。
 いつも、”おいっ”とか”お前”、そんな風にしか呼ばれなかった。
 だから、俺の記憶には自分の真名がない。
 だったら、別の名前を自分で考えればいいんじゃないかと思うかもしれないが、思い出してほしい、俺にはちゃんと両親がいて、
 つまりだ、俺にはちゃんと両親が真名を付けてくれていたんだ。
 そのため、俺がどんな名を考えたとしても、それが真名となることはない。
 そして、この真名だけど、厄介なことにこれがないと偽名すら名乗れない、という事実がある。
 どういうことかというと、俺も使うがこの世界には”鑑定”という能力がある。
 その結果どんな名前を付けても、名前の欄には『なし』としか表示されない。
 もちろん、この鑑定は誰もが持っているような能力だはないから大丈夫だとは思うが、万が一ということもある。
 てなわけで、その真名を知るには、会いたくはないが俺を売ったやつに会う必要がある。
 尤も、そいつが知っているとは限らないけどな。まぁ、そうなったらそうなったで、今度はそいつから故郷の村を聞き出せばいいだけだ。
 さすがに、村長なら知ってるだろ。

 そんなわけで、ギルドへとやって来たわけだ。
 今現在の問題としては、あの野郎がまだいるかってことだな。

 俺が売られてからたぶんまだ3年程度、奴はまだギリこの街にいるはずだ。
 とはいえ、冒険者は危険と隣り合わせ、魔物にやつが殺されている可能性もあるし、自身の限界を感じてさっさと故郷に逃げ帰った可能性もある。
 さすがの俺も、誰かに祈らずにはいられない……。

 俺はそう考えながら、ギルド内を見てみる。
 ギルドの中は、まず正面に受付があり、そこには美女が数人座っていて、冒険者たちの相手を次々にこなしている。
 こういうところってどの世界も一緒なんだな。
 俺が前世で読んだり見たりした異世界物の光景そのものであった。
 次に左側を見る。そこには、掲示板のようなものがあり、その前で冒険者たちが真剣な表情で見ていた。
 依頼の掲示板ってところか、これもよくあるやつだな。
 っで、右側は酒場、ではなく休憩とか打ち合わせをするのか、椅子が並んでいたり、机がいくつか並んでいたりの光景だった。
 俺としては興味はあるのでいろいろと観察したいところだが、下手にきょろきょろすると目立つし、絡まれても面倒だ。
 ということで、端の方に向かい前世で培った能力、”話しかけるなオーラ”を出しつつ、簡単な認識阻害の魔法を発動させる。
 ちなみに、この認識阻害の魔法だが、全く気が付かれないようにするというものではなく、にくくするだけの魔法だ。
 まぁ、それと前世からの能力と合わせえば、基本絡まれることはないようだけどな。
 さて、奴は来るか……おっ、ありゃぁ、よしっ!

 俺は内心、小躍りしたい気分となった。
 なんといっても、今俺の前には、忘れもしない俺を売り払いやがったクソ野郎がいる。
 今すぐ、飛びついてぶん殴ってやりたいところだが、今は我慢だ。
 こんなところで暴れれば面倒なことになるのは明白、だったら、奴が何か依頼を受け街の外に出たところが良いだろう。
 というわけで、俺はやつから目を離さないように観察していった。

 どうやらあの野郎、しっかりと冒険者人生を楽しんでいるらしい。
 奴の周囲にはガタイのいい少年と、それなりに可愛いんじゃないかという少女が2人いた。
 そんな連中を観察する。
 ガタイが良い奴は、その背中に背負っている大きな盾から考えると、タンク役ってところか。
 少女の2人のうち1人はシスターみたいな恰好をしているところを見ると回復役かな、っで、最後の1人はローブを身にまとっていることから魔法使いかな。でも、その腰にはダガーが2本ぶら下がっているから、接近戦も行けるタイプかな。
 そんな仲間とともに楽しんでいやがるクソ野郎、しかも見た感じどうやら魔法使いの少女とできているのか、ことのほか仲がよさそうだ。
 人を地獄に突き落としておいて、てめぇはよろしくやってるってか、ざけやがって。
 奴を見れば見るほど腹が立ってしょうがない。
 ほんと、今すぐにでも恨みをぶつけたい気分だが、ここは元大人としても我慢だ。
 漏れ出そうな怒りのオーラで気が付かれないように深呼吸をする。

 すぅー、はぁー、よしっ。

 こうして、俺が怒りを抑えている間にやつらは依頼を見つけたのか受付へと向かって行った。
 その後、ギルドを出ていくやつら、俺もまたそんなやつらを追いギルドを出ることにした。
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