創星のエクソダス

白銀一騎

文字の大きさ
上 下
28 / 35
異世界惑星探求編

脱出ポットの攻防

しおりを挟む
 エレオノーラとカレンは突然の出来事で焦っていた。少し前からエレオノーラとカレンが乗った脱出ポットの電源が入って、あちこちの計器類からモーター音がしていた。

 カレンは心配になり扉を開けようとしたが、外からロックがかかっているらしく開かなかった。

「あれ?……開かないわ?」

 カレンがエレオノーラを見るとエレオノーラも扉を開けようとノブを掴んで操作したが、やはり扉はビクともしなかった。やがて船内のモニターが点灯すると数桁の数値が表示されていた。カレンは数値を見てこのポットの行き先なのかもしれないと思った。

「な……何か今にも動きそうね」

「ま……まさか? 外と連絡とってみるわ」

 エレオノーラがモニター前のコンピュターを操作しようとした時、モーター音が一層大きくなり、激しい振動によりカレンとエレオノーラはバランスを崩して壁に腰を打ちつけた。

 カレンは近くの手すりを掴むとゆっくりと体をおこして近くの窓から外の景色をみた。二人の乗っている船から勢いよくエンジンが噴射していて、地上がどんどん遠ざかっているのが見えた。カレンはエレオノーラに今の状態を伝えようとした。

 次の瞬間キャー!、という悲鳴が聞こえたので、見るとエレオノーラの近くに男が立っていた。カレンは咄嗟に立ち上がり男に気が付かれずに背後に回ると、男の背中に蹴りを入れた。男は背中にいきなり蹴りを入れられた反動で壁に顔面から突っ込んだ。

 ギャー!、という悲鳴とともに顔面を抑えてうずくまった。カレンは男の前で仁王立ちになって威嚇した。男はカレンを見ると右手でぶつけた鼻を抑えて、左手でカレンを制しながら弁明した。

「ち……違う! お……俺は君たちの味方だ……」

 カレンは男にファイティングポーズをとりながら聞いた。

「あなた何者? どこから入ったの?」

 カレンが男の目の前でシャドーボクシングをすると男はヒィー、と言って身構えた。よほどカレンの不意打ちが効いたのだろう。男が何か喋り始める前に口を開いたのはエレオノーラだった。

「う……嘘…あなた、ウロボロス海賊団の一員だった人ですよね」

「何!!」

 カレンは咄嗟にエレオノーラの手を取ると自分の後ろに匿った。カレンが男の顔面に蹴りを入れようと構えたところで男は土下座をして、ご…誤解だよ……頼むから話を聞いてくれ、と懇願した。

 カレンは攻撃体制をとったまま、男の話を聞いてみることにした。

「わ……私の名前はグレンと言います。私はスペースプラネットというTV局のクルーで、今ウロボロス海賊団に極秘で潜入取材しています。あ…あなたを拉致したのは事実ですがすぐに仲間が解放する手筈になっていたんです、信じてください」

 グレンはそういうと身分証のようなものを提示してきた。カレンには何が書いてあるのか分からないためエレオノーラに見てもらった。エレオノーラはその身分証らしきものを見ると本物みたいね、と言った。

 カレンはグレンを睨みつけて本当でしょうね!、と念を押した。

 男は本当です信じてください、と言って頭を床につけた。

「なんでここにいるの?」

 エレオノーラはグレンが可哀想になり話しかけた。グレンはホッとした顔になり二人に話はじめた。

「この宇宙船が動き出したので、咄嗟にここにテレポートしたのです」

「テレポート?」

「はい。この様に」

 グレンはそう言うとカレンの目の前から消えてみせた。カレンがどこに行ったのかキョロキョロしていると後ろから声がした。カレンが振り返るとグレンが立っていた。

「へえー、便利な能力ね」

 カレンは感心したように言った。グレンも褒められて嬉しそうにありがとうございます、とお礼を言った。

「この船はどこに向かっているの?」

「わかりません。コックピットに行けば何かわかるかもしれません」

 グレンはコックピットに行くと何やら操作をして行き先を確認し始めた。

「PKM○=05××という星に向かっています?……こ…これは……」

「どうしたのそこに何があるの?」

 カレンがグレンに問いただした。グレンは手帳を取り出して確認するとやっぱり、と言った。

「ウロボロス海賊団がエレオノーラさんを拉致して、そこに送る予定だった星です」

「何? なんでそんなところが入力されているの?」

 カレンが聞くとグレンは首を左右に振って分からないという仕草をした。

「海賊が行き先を入力したの?」

 カレンがそう言うとエレオノーラは信じれらないと言った口調で話した。

「この脱出ポットのセキュリティーレベルは宇宙最高の最新技術で作られています。インバルト星の王族以外で行き先を入力できるものはいません」

 エレオノーラはそこまで言うと落胆した様に肩を落とした。グレンはカレンに向かって聞いてきた。

「貴方たち二人を脱出ポットに誘導した人物がいましたが、あの方はグランヴィル氏で間違いないですよね」

「グランヴィルおじ様……」

 エレオノーラは掠れた声でそう言うとショックだったようでそれ以来、口を閉じた。

 グレンはやっぱり、と言うと端末を取り出して入力した。カレンは何が起こったのか分からずグレンに聞いた。

「何? どう言うこと?」

 グレンはカレンに聞かれはっきりとした口調で話した。

「グランヴィルという人物が、海賊と裏で手を組んでいるかもしれない。インバルト星のセキュリティーが作動しなかったのもそいつがシステムを切断していたからだったと推測できる」

「まさか?」

 カレンは肩を落として元気のないエレオノーラになんと声をかけていいか分からなかった。暫くの間沈黙が続いた後に船内にアラームが鳴り出した。

「何? どうしたの?」

 カレンが不安になりグレンに聞いた。グレンはモニターを確認すると静かな口調で二人に言った。

「二人とも席に付いて、惑星に到着したようだ!」 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

処理中です...