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〜兄弟の絆〜
悲しい真実
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私はゼンナギというおばあさんの知り合いのボディーガードを三人連れて、ロビナスという場所に向かっていた。そのロビナスにマルクスさんらしきエルフが住んでいるかもしれなかった。このルーン大国に来て初めてマルクスさんの有力な情報を掴んだことで、私は嬉しくて仕方がなかった。
(これでカイトにお兄さんのマルクスさんを合わせてあげることができるかもしれない)
カイトの喜ぶ顔を想像するだけで、心が高鳴った。
鬱蒼と茂る林の中を私と三人のボディーガードはひたすら歩いた。山道を上がるにつれて『ゴオーー!!』という轟音が徐々に大きくなって聞こえてきた。
木々の間から川が流れているのがチラチラ見え始めたと思っていたら、すぐに川の近くに出てきた。ここから先の川の左右は切り立った断崖になっていて遠くに大きな滝が見えた。
「すごく大きな滝……」
滝の壮大さに私がつぶやくと横に居たヘイジというボディーガードが答えた。
「ここからじゃまだ滝の一部しか見えないんだよ」
「え? これで一部なの?」
「ああ、まだまだこんなもんじゃないぞ、上からの景色のほうが、ここより何倍も絶景だよ」
そう言うとヘイジはこっちだ、ここから上に行く道がある、と言って歩き出したのでついていこうとすると、川のほとりで茜という花が密集して咲いているのが見えた。茜は小さな草花だが輪生する四枚の葉っぱが目立つ。前世でよく家族で行った植物園で見かけることが多かったので、少し懐かしく感じた。
私達は再び鬱蒼と茂る林の中をあるき出した。林を抜けると突然目の前に滝の全貌が見えた、半月状の切り立った崖から大量の水が流れ落ちる。目に見える限りの大地が割れてその裂け目に大量の水が飲み込まれていく、とてつもなく大きな滝がそこにあった。
50メートルはあるだろうか、滝壺を覗いても水しぶきによって真っ白になっていて何もみえない。
「すごい。こんな光景見たことないわ」
「ロビナスの滝、通称グレートフォールと呼ばれている」
体の大きなヘイジは大声で叫んでいたが、滝の音に声がかき消されてほんの少ししか聞き取れなかった。私は返事をすることも忘れて滝壺に見入った。
「あまり覗き込むなよ、落ちたら助からないぞ」
「でも、お友達は助かったのよね」
「それはたまたま運が良かっただけだ、俺がこの滝のことで知っているのは、滝壺に落ちたら二度と助からんということだ」
「そ、そうなの?」
「大量の水に押されて落ちたら二度と上がって来れないから、死体も見つからない」
私は滝壺を見た、たしかにものすごい水量に息を呑んだ。
(本当にそうかも知れない)
「これからどうします?」
「さあな、この辺りに居ると思ったんだが?」
ヘイジは辺りをキョロキョロと見回した。
「とりあえず今日はもう遅いから、この辺りで野宿をしてエルフの捜索は明日にしよう」
私達は滝の近くで野宿をすることになった。
その日の深夜になにかの気配で目が冷めた。まだ辺りは真っ暗で焚き火の僅かな明かりがうっすら周りの景色を浮かび上がらせていた。起きたばかりでボーッとしている中で三人を探したが周りに誰もいないことに気づいた。
(どこに行ったのだろう?)
何かわからないが不安になり、すぐに立ち上がると三人を探した。
滝の近くまで歩いてきたが、誰もいない。辺りを見回していると滝の轟音に混じってなにか声のようなものが聞こえてきた。
「んーーーんーーー!!」
それは誰かが唸っているような声だった。声のする茂みの奥に入っていった。奥に進むと真っ暗なのかにぼんやりと誰かが倒れて居るのが分かった。近づくとそれはヘイジだった。
「んーーんーー!」
ヘイジは口を猿ぐつわで塞がれて、動けないように全身を縄で縛られていた。誰か殴られたのか顔が腫れて全身の至るとこから血が滲んでいるのが分かった。
「誰が……こんな事を……」
すぐにヘイジの口から猿ぐつわを外した。
「お嬢ちゃん! 早くここから逃げろ! あいつは危険だ!」
「え?」
「早く! 俺たちの事はいいから! ここから逃げろ!」
「一体何があったんですか?」
「あいつは化け物だ! ここには来るべきではなかった」
私はとりあえずヘイジさんの縄を解いて、ボロボロになったヘイジさんと一緒に歩こうとしたとき、「グゥアーー!!」ヘイジさんはうめき声を出して倒れた。右足を痛そうに触っているのを見ると足が変な方向へ曲がっていた、ヘイジさんの右足は骨が折れていて歩ける状態ではない。
「俺達のことはいいから早くここから逃げろ!」
「でも……」
「早くしてくれ! お願いだ!」
ヘイジさんに懇願されて仕方なく私はゆっくりとその場を離れようとしたとき、後ろの藪の中から誰かが飛び出してきた。
「き、貴様は!!」
ヘイジは飛び出してきた男を見て叫んだ。その人物は無精髭に耳が尖っていて、黒髪で頬に深い十字の傷がある、中年のエルフだった。このエルフが目的の人物に間違いないと思った。
「お前たちは何者だ? ここで何をしている?」
男は鋭い目つきで私を睨んだ。
「マルクスさんというエルフを探しているんです、知りませんか?」
「なに! マルクスだと!!」
私がマルクスという名前を出した途端、エルフは鬼のような形相で私に詰め寄った。
「お前は何者だ? マルクスという名前をどこで知った?」
エルフは私の首に手を掛けてきた、私はあまりの怖さにその場から動けないでいた。後から気づいたことだが、どうやらこのエルフの魔法で動けないようにされていたようだ。
「マルクスを探るやつは誰だろうと全員生かしておけない」
私はエルフの男が自分の首に掛けた手に徐々に力が入っていくのと同時に、段々と意識が薄れていくのを感じた、その時。
「やめろ! ルディさん!!」
いきなり声が聞こえたと思ったら、首を締めているエルフの力が緩んだ。
「お前は……、ダンテか? どうしてここに来た?」
私は声の方を見るとダンテが立っいていた。どうやらダンテとこのルディというエルフは知り合いのようだった。
「ルディさん、その娘を殺してはだめだ」
ルディという年配のエルフは私を見るとダンテに聞いた。
「誰なんだ? この娘は? なぜマルクスを探している?」
「その娘はカイトが愛している女性だそうだよ」
「なに? そうだったのか……、カイトは元気にしているのか?」
「ああ。なんでもギルティークラウンになっているそうだよ」
「あの泣き虫がギルティークラウンに? フフフ……、さすがマルクスさんの弟だ、血は争えないな」
ダンテと話しているルディーは楽しそうだった、先程までの鬼のような殺気が無くなった。
「それでなぜ今になってマルクスを探しているんだ?」
「さあ? それはこの子に聞いてみないことには……」
二人が私を見た。
「カイトにマルクスさんを合わせてほしいんです。お願いします、マルクスさんの居場所に案内してください」
私はルディーと呼ばれたエルフにお願いした。ルディーはすごく悲しそうな顔をした。
「カイトが会いたがっているのか?」
「はい。ずっとマルクスさんと会いたいと願っています」
私が答えると、そうか、と言って黙ってしまった。しばらくの沈黙が続いたがその沈黙を破ったのはダンテだった。
「ルディーさん真実を話そう。これ以上カイトを騙すことはできないよ、そのうち彼の耳にも届くだろう」
「だが……、それは……」
「この娘からカイトに話してもらおう、それが一番彼を傷つけない方法だよ」
ダンテに言われてしばらく考えた後、ルディーはダンテに言った。
「そ、そうだな。これ以上隠すことは難しいか……、やむを得ないか……」
二人がゴソゴソ小声で話しているのを聞いて、居ても立っても居られず聞いてみた。
「あの……、マルクスさんはどこに居るんですか?」
するとルディーは悲しそうな顔をして重い口を開いた。
「マルクスは…………、死んだ。デミタスに殺されたんだ」
そう言われた瞬間、私はショックで言葉を失った。
その後、ルディーの口から語られるマルクスさんの話を聞いて私は涙した。
それはとても悲しい一人のエルフの話だった。
(これでカイトにお兄さんのマルクスさんを合わせてあげることができるかもしれない)
カイトの喜ぶ顔を想像するだけで、心が高鳴った。
鬱蒼と茂る林の中を私と三人のボディーガードはひたすら歩いた。山道を上がるにつれて『ゴオーー!!』という轟音が徐々に大きくなって聞こえてきた。
木々の間から川が流れているのがチラチラ見え始めたと思っていたら、すぐに川の近くに出てきた。ここから先の川の左右は切り立った断崖になっていて遠くに大きな滝が見えた。
「すごく大きな滝……」
滝の壮大さに私がつぶやくと横に居たヘイジというボディーガードが答えた。
「ここからじゃまだ滝の一部しか見えないんだよ」
「え? これで一部なの?」
「ああ、まだまだこんなもんじゃないぞ、上からの景色のほうが、ここより何倍も絶景だよ」
そう言うとヘイジはこっちだ、ここから上に行く道がある、と言って歩き出したのでついていこうとすると、川のほとりで茜という花が密集して咲いているのが見えた。茜は小さな草花だが輪生する四枚の葉っぱが目立つ。前世でよく家族で行った植物園で見かけることが多かったので、少し懐かしく感じた。
私達は再び鬱蒼と茂る林の中をあるき出した。林を抜けると突然目の前に滝の全貌が見えた、半月状の切り立った崖から大量の水が流れ落ちる。目に見える限りの大地が割れてその裂け目に大量の水が飲み込まれていく、とてつもなく大きな滝がそこにあった。
50メートルはあるだろうか、滝壺を覗いても水しぶきによって真っ白になっていて何もみえない。
「すごい。こんな光景見たことないわ」
「ロビナスの滝、通称グレートフォールと呼ばれている」
体の大きなヘイジは大声で叫んでいたが、滝の音に声がかき消されてほんの少ししか聞き取れなかった。私は返事をすることも忘れて滝壺に見入った。
「あまり覗き込むなよ、落ちたら助からないぞ」
「でも、お友達は助かったのよね」
「それはたまたま運が良かっただけだ、俺がこの滝のことで知っているのは、滝壺に落ちたら二度と助からんということだ」
「そ、そうなの?」
「大量の水に押されて落ちたら二度と上がって来れないから、死体も見つからない」
私は滝壺を見た、たしかにものすごい水量に息を呑んだ。
(本当にそうかも知れない)
「これからどうします?」
「さあな、この辺りに居ると思ったんだが?」
ヘイジは辺りをキョロキョロと見回した。
「とりあえず今日はもう遅いから、この辺りで野宿をしてエルフの捜索は明日にしよう」
私達は滝の近くで野宿をすることになった。
その日の深夜になにかの気配で目が冷めた。まだ辺りは真っ暗で焚き火の僅かな明かりがうっすら周りの景色を浮かび上がらせていた。起きたばかりでボーッとしている中で三人を探したが周りに誰もいないことに気づいた。
(どこに行ったのだろう?)
何かわからないが不安になり、すぐに立ち上がると三人を探した。
滝の近くまで歩いてきたが、誰もいない。辺りを見回していると滝の轟音に混じってなにか声のようなものが聞こえてきた。
「んーーーんーーー!!」
それは誰かが唸っているような声だった。声のする茂みの奥に入っていった。奥に進むと真っ暗なのかにぼんやりと誰かが倒れて居るのが分かった。近づくとそれはヘイジだった。
「んーーんーー!」
ヘイジは口を猿ぐつわで塞がれて、動けないように全身を縄で縛られていた。誰か殴られたのか顔が腫れて全身の至るとこから血が滲んでいるのが分かった。
「誰が……こんな事を……」
すぐにヘイジの口から猿ぐつわを外した。
「お嬢ちゃん! 早くここから逃げろ! あいつは危険だ!」
「え?」
「早く! 俺たちの事はいいから! ここから逃げろ!」
「一体何があったんですか?」
「あいつは化け物だ! ここには来るべきではなかった」
私はとりあえずヘイジさんの縄を解いて、ボロボロになったヘイジさんと一緒に歩こうとしたとき、「グゥアーー!!」ヘイジさんはうめき声を出して倒れた。右足を痛そうに触っているのを見ると足が変な方向へ曲がっていた、ヘイジさんの右足は骨が折れていて歩ける状態ではない。
「俺達のことはいいから早くここから逃げろ!」
「でも……」
「早くしてくれ! お願いだ!」
ヘイジさんに懇願されて仕方なく私はゆっくりとその場を離れようとしたとき、後ろの藪の中から誰かが飛び出してきた。
「き、貴様は!!」
ヘイジは飛び出してきた男を見て叫んだ。その人物は無精髭に耳が尖っていて、黒髪で頬に深い十字の傷がある、中年のエルフだった。このエルフが目的の人物に間違いないと思った。
「お前たちは何者だ? ここで何をしている?」
男は鋭い目つきで私を睨んだ。
「マルクスさんというエルフを探しているんです、知りませんか?」
「なに! マルクスだと!!」
私がマルクスという名前を出した途端、エルフは鬼のような形相で私に詰め寄った。
「お前は何者だ? マルクスという名前をどこで知った?」
エルフは私の首に手を掛けてきた、私はあまりの怖さにその場から動けないでいた。後から気づいたことだが、どうやらこのエルフの魔法で動けないようにされていたようだ。
「マルクスを探るやつは誰だろうと全員生かしておけない」
私はエルフの男が自分の首に掛けた手に徐々に力が入っていくのと同時に、段々と意識が薄れていくのを感じた、その時。
「やめろ! ルディさん!!」
いきなり声が聞こえたと思ったら、首を締めているエルフの力が緩んだ。
「お前は……、ダンテか? どうしてここに来た?」
私は声の方を見るとダンテが立っいていた。どうやらダンテとこのルディというエルフは知り合いのようだった。
「ルディさん、その娘を殺してはだめだ」
ルディという年配のエルフは私を見るとダンテに聞いた。
「誰なんだ? この娘は? なぜマルクスを探している?」
「その娘はカイトが愛している女性だそうだよ」
「なに? そうだったのか……、カイトは元気にしているのか?」
「ああ。なんでもギルティークラウンになっているそうだよ」
「あの泣き虫がギルティークラウンに? フフフ……、さすがマルクスさんの弟だ、血は争えないな」
ダンテと話しているルディーは楽しそうだった、先程までの鬼のような殺気が無くなった。
「それでなぜ今になってマルクスを探しているんだ?」
「さあ? それはこの子に聞いてみないことには……」
二人が私を見た。
「カイトにマルクスさんを合わせてほしいんです。お願いします、マルクスさんの居場所に案内してください」
私はルディーと呼ばれたエルフにお願いした。ルディーはすごく悲しそうな顔をした。
「カイトが会いたがっているのか?」
「はい。ずっとマルクスさんと会いたいと願っています」
私が答えると、そうか、と言って黙ってしまった。しばらくの沈黙が続いたがその沈黙を破ったのはダンテだった。
「ルディーさん真実を話そう。これ以上カイトを騙すことはできないよ、そのうち彼の耳にも届くだろう」
「だが……、それは……」
「この娘からカイトに話してもらおう、それが一番彼を傷つけない方法だよ」
ダンテに言われてしばらく考えた後、ルディーはダンテに言った。
「そ、そうだな。これ以上隠すことは難しいか……、やむを得ないか……」
二人がゴソゴソ小声で話しているのを聞いて、居ても立っても居られず聞いてみた。
「あの……、マルクスさんはどこに居るんですか?」
するとルディーは悲しそうな顔をして重い口を開いた。
「マルクスは…………、死んだ。デミタスに殺されたんだ」
そう言われた瞬間、私はショックで言葉を失った。
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