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〜兄弟の絆〜
デミタスの襲撃
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私は一人ダイニングテーブルに座っていた。
いや、座っていたというよりも座らされていたという表現のほうが正しいだろう。
ふと視線をテーブルから上げるとカイトが台所に立っている。先程からぎこちない包丁さばきにハラハラしていた。
見かねて手伝おうとすると良いから良いから、と言って無理やりテーブルに追いやられてしまう。
男性が料理をしている姿は父親以外見たことがなかったが、男性が料理をする後ろ姿がこんなにも魅力的に映るとは思わなかった。
包丁とまな板が当たる度に鳴るコンコンという音や、鍋がグツグツと鳴る音に癒やされた。
自分で料理をしている時は気づかないが、多分料理という行為は自分は誰かに愛されていると伝わる最大の愛情表現なのかもしれない。
誰かが自分のために何かをしてくれる単純だが愛情をこれほど効率的に伝える事のできる行為はあまり無いだろう。
私はカイトの後ろ姿を見て幸せに包まれていくのを感じた。
これが家族というものか、結婚することに憧れが無かったわけではないが、これまであまり必要性を感じていなかった。でも毎日これほど幸せを感じられる瞬間があるのならば結婚も良いのかもしれない。
カイトの後ろ姿をうっとりと見ていると、ほら出来たぞ、と言って作った料理を私の目の前に持ってきた。
丼にご飯を入れてそこに豚の角煮のような塊肉を数個入れてその上からトロトロのアンを掛けてネギとごまを振りかけた。魯肉飯のような見た目の料理だった。
「すごい! 美味しそう!!」
「ああ。ウィロー飯て言うんだ」
「ウィロー飯?」
私はそう言うとスプーンを手にして一口食べてみた。塊肉がよく煮込んでいてスプーンが触れただけでホロホロに崩れた。ご飯にしみたアンと肉の旨味が合わさってものすごく美味しかった。
「すごい! 美味しい!!」
私がウィロー飯を絶賛するとカイトは嬉しそうにそうだろ、と言った。
「こんなに美味しい料理が作れるならもっと早く作ってくれればよかったのに~~」
「これは兄ちゃんの料理なんだ」
「え?」
「兄ちゃんが考案して作った料理なんだ」
「お兄さんが作ったの?」
「ああ。兄ちゃんの店はウィロー飯店だったんだ」
「じゃ……、作らなかった理由って……まさか……」
「ああ。兄ちゃんを思い出してしまうから……」
「そうだったの?……なぜ?……それなのに……」
「食べてほしかったんだ、ティアラには……兄ちゃんの店の味を……」
「そんな……辛いのに……」
「良いんだよ。それよりも兄ちゃんの料理を美味しいと言ってくれてありがとう」
「うん。本当に美味しいわ! この料……理?!」
カイトの姿が視界から消えた。気づいたときにはカイトの腕の中だった。
私はカイトに優しく抱きしめられた。
カイトは私の耳元で優しく力のこもった声で囁いた。
「決めたよ、ティアラ。これからガルボの倉庫に行くよ」
「え? カルボって? 貧民街の?」
「ああ。ティアラを今すぐルーン大国に連れて行ってくれるように頼んでくるよ」
「え!? そんなこと……」
カイトの気持ちは嬉しかったが、少しモヤモヤした感情が湧いてきた。これは……おそらくカイトと離れたくないという思いが……私の中にあるのだろう、私がどう答えていいか迷っているとそんな私の心境を察して優しく諭すように言った。
「分かってくれティアラ、すぐにここから離れるんだ」
「でも……、そんな急に……」
「分かった。それじゃ……俺も一緒にルーン大国に行こう」
「本当? 一緒に来てくれるの?」
「ああ。約束するよ。だからティアラはロイの家で待っていてくれ」
「ロイの家?」
「ああ。もう君を一人でこの家には残しておきたくないんだ。ガルボに話をつけたらすぐに戻るから心配するな」
そう言うとカイトは私をロイの家に預けると一人で貧民街のガルボの倉庫に行ってしまった。
◇
カイトは貧民街に入るとガルボの倉庫に向かった。すでに日が暮れて辺りは薄暗くなっていた。この前ここに来た時は人々の喧騒が聞こえていたが、今日は何故か誰も住んでいないかのように静まり返っていた。何か有ったのか? カイトは少し嫌な予感がしたので、急いで倉庫に向かった。
程なくしてガルボの倉庫の前まで着いた。外から中の様子を伺ってみたが、中に人の気配が感じられなかった。カイトは呼び鈴を鳴らそうと鉄の門に手をかけた時、少し門が動いた。まさかと思い鉄の門を押してみるとそのままギィィーー、と音を立てて開いていった。扉に鍵がかかっていなかった。以前ここに来た時に自分が門を破壊したことを思い出した。
その時に扉と一緒に鍵も壊してしまったか? そう思いながらそっと敷地に入っていった。誰かガルボの手下が出てくるだろうと思っていたが、誰も出てくる気配がなかったのでそのまま倉庫の中に入った。
倉庫の中の光景に目を疑った。血溜まりの上に男が数人倒れていた。倒れてる男たちの奥に椅子に縛り付けられているガルボがいた。ガルボは顔中を殴られて顔面が血まみれになっていた。
「ガルボ!! どうした!? 何があった!?」
ガルボに駆け寄った。ガルボは気がついて血まみれになった顔をゆっくり上げた。激しく殴られて瞼の上を切って血が目に入っていた。腫れ上がった目を薄く開けるとなんとかカイトの顔を見ることが出来た。
「あ……あんた? カ……カイトか?……」
「大丈夫か? 今外してやるからな」
ガルボの拘束具を外して床に寝かせた。床に寝かせると弱々しい声で訴えて来た。
「は……早く……帰れ……、テ……ティアラが危ないぞ……」
「なに!? どういうことだ?」
「デミタスって奴に全部バレた……、ロ……ロイの家族も危ない……」
「何だと!! ティアラ!!」
カイトはまたティアラを一人で残してきたことを後悔した。
◇
私がロイの家につくとロイの家族は暖かく迎え入れてくれた。
「ティアラ!!!」
リンは私の顔を見るなり飛んできた。
「彼奴等に見つからなかったのね? 良かったーー!」
「本当に無事で良かった。心配したぞ」
夫のロイも喜んでくれた。
「あっ! ティアラお姉ちゃんだーーー!」
「一緒に遊ぼぉーー」
ロイとリンの子どもたちが私を見つけて駆け寄ってきた。
私は二人の子どもたちと一緒に遊んだ。
「お姉ちゃんは疲れているんだから無理言っちゃだめよ!」
「は~~い! お姉ちゃんまたあの美味しいサラダつくって~~~♡」
「言ってるそばからあなた達は~~!」
「良いのよ。リン、そんなに喜んでもらえて嬉しいわ~~。とびっきり美味しいサラダ作るね♡」
「わ~~~い! やった~~~!」
リンの台所に行くとオリジナルのシーザーサラダを作った。二人の子供は美味しそうに頬張った。二人の笑顔を眺めながらいつまでもこの笑顔を眺めていたいと思っていた時、玄関が開いてマチルダが慌てて飛び込んできて叫んだ。
「みんな逃げろ!! デミタスに全部バレた!! 奴らがすぐにここにやってくるぞ!!」
マチルダと目が合った。
「ティアラ!? 大変だ、早くここから離れろ!」
マチルダはそう言うとロイの家の中に入ってきて、一緒に逃げる準備を手伝った。しばらくして家の外を見たロイは何かに気づいてマチルダに言った。
「マチルダ」
「ん? どうした? 早く逃げる準備を……」
ロイの方を見てなぜ呼ばれたのか分かった。家の側までデミタスたちがやってくるのが見えた。
「畜生! 早く逃げよう!」
慌てているマチルダにロイは諭すように言った。
「マチルダ、君だけでも逃げろ」
「は? 何を言ってんだ? みんなで一緒に行くぞ」
「幼子を連れて彼奴等から逃げるのは無理だ。それは君が一番よく知っているだろう」
「そ……それは……」
「早くいけ、今なら君一人なら逃げ出せる」
「そんな……」
「早く行け! 俺たちは大丈夫だ!」
ロイの言葉にマチルダは仕方なく家から出るとロイに言った。
「私に少し考えがある。すぐに戻るからティアラを絶対に彼奴等に渡すなよ」
「ああ。任せろ俺たちの命に変えても守ってみせる」
ロイはそう言うと奥さんのリンに目で合図を送った。リンは頷くと私の腕を掴んで付いてくるように言った。
私は家の奥の納戸のような所に通された。
「ティアラ、ここに隠れて」
「え。リン達は? 一緒に隠れましょう」
「ダメよ。ティアラだけ入って。全員で隠れても家中を探されるといずれ見つかってしまうわ。でも、ここにティアラがいることは彼奴等は知らないはずだから、ティアラは隠れていればやり過ごせるかもしれない」
「いやよ! そんなの嫌です!」
「良いのよティアラ。あなたがここに居てくれたから私達家族は生きているんだもの。あなたがみんなを救ってくれたのよ、あなたはこの世界に必要な人間なの」
「いや……嫌よ……」
私は泣きながら拒否したが、リンはそんな私を優しく抱きしめた。
「お願いティアラ。言うことを聞いて、私達は大丈夫だから……あなたを守りたいの……お願い。私達のことは気にしないで……」
「でも……」
「早く入って!」
リンは私を無理やり納戸の中に閉じ込めると外から鍵を掛けた。
「リン! やめて! ここを開けて! 私だけ助かるなんて嫌よ~~。うぅぅ~~」
すぐにリンは見えなくなった。私は声がかれるまで叫んだが、納戸が開くことは無かった。
マチルダは家を出ると遠くにデミタスたちがいることに気がついて、すぐにその場から逃げ出した。
デミタスたちは家から出てきた人影を発見した。
「誰かロイの家から出てきたぞ?」
「デミタス様、捉えますか?」
「やめろ、あいつはマチルダだ。おまえたちではあいつには追いつけん! そんなことよりもできるだけ大人数でロイの家を包囲したい」
「はい。わかりました」
「ありの子一匹逃がすなよ」
いや、座っていたというよりも座らされていたという表現のほうが正しいだろう。
ふと視線をテーブルから上げるとカイトが台所に立っている。先程からぎこちない包丁さばきにハラハラしていた。
見かねて手伝おうとすると良いから良いから、と言って無理やりテーブルに追いやられてしまう。
男性が料理をしている姿は父親以外見たことがなかったが、男性が料理をする後ろ姿がこんなにも魅力的に映るとは思わなかった。
包丁とまな板が当たる度に鳴るコンコンという音や、鍋がグツグツと鳴る音に癒やされた。
自分で料理をしている時は気づかないが、多分料理という行為は自分は誰かに愛されていると伝わる最大の愛情表現なのかもしれない。
誰かが自分のために何かをしてくれる単純だが愛情をこれほど効率的に伝える事のできる行為はあまり無いだろう。
私はカイトの後ろ姿を見て幸せに包まれていくのを感じた。
これが家族というものか、結婚することに憧れが無かったわけではないが、これまであまり必要性を感じていなかった。でも毎日これほど幸せを感じられる瞬間があるのならば結婚も良いのかもしれない。
カイトの後ろ姿をうっとりと見ていると、ほら出来たぞ、と言って作った料理を私の目の前に持ってきた。
丼にご飯を入れてそこに豚の角煮のような塊肉を数個入れてその上からトロトロのアンを掛けてネギとごまを振りかけた。魯肉飯のような見た目の料理だった。
「すごい! 美味しそう!!」
「ああ。ウィロー飯て言うんだ」
「ウィロー飯?」
私はそう言うとスプーンを手にして一口食べてみた。塊肉がよく煮込んでいてスプーンが触れただけでホロホロに崩れた。ご飯にしみたアンと肉の旨味が合わさってものすごく美味しかった。
「すごい! 美味しい!!」
私がウィロー飯を絶賛するとカイトは嬉しそうにそうだろ、と言った。
「こんなに美味しい料理が作れるならもっと早く作ってくれればよかったのに~~」
「これは兄ちゃんの料理なんだ」
「え?」
「兄ちゃんが考案して作った料理なんだ」
「お兄さんが作ったの?」
「ああ。兄ちゃんの店はウィロー飯店だったんだ」
「じゃ……、作らなかった理由って……まさか……」
「ああ。兄ちゃんを思い出してしまうから……」
「そうだったの?……なぜ?……それなのに……」
「食べてほしかったんだ、ティアラには……兄ちゃんの店の味を……」
「そんな……辛いのに……」
「良いんだよ。それよりも兄ちゃんの料理を美味しいと言ってくれてありがとう」
「うん。本当に美味しいわ! この料……理?!」
カイトの姿が視界から消えた。気づいたときにはカイトの腕の中だった。
私はカイトに優しく抱きしめられた。
カイトは私の耳元で優しく力のこもった声で囁いた。
「決めたよ、ティアラ。これからガルボの倉庫に行くよ」
「え? カルボって? 貧民街の?」
「ああ。ティアラを今すぐルーン大国に連れて行ってくれるように頼んでくるよ」
「え!? そんなこと……」
カイトの気持ちは嬉しかったが、少しモヤモヤした感情が湧いてきた。これは……おそらくカイトと離れたくないという思いが……私の中にあるのだろう、私がどう答えていいか迷っているとそんな私の心境を察して優しく諭すように言った。
「分かってくれティアラ、すぐにここから離れるんだ」
「でも……、そんな急に……」
「分かった。それじゃ……俺も一緒にルーン大国に行こう」
「本当? 一緒に来てくれるの?」
「ああ。約束するよ。だからティアラはロイの家で待っていてくれ」
「ロイの家?」
「ああ。もう君を一人でこの家には残しておきたくないんだ。ガルボに話をつけたらすぐに戻るから心配するな」
そう言うとカイトは私をロイの家に預けると一人で貧民街のガルボの倉庫に行ってしまった。
◇
カイトは貧民街に入るとガルボの倉庫に向かった。すでに日が暮れて辺りは薄暗くなっていた。この前ここに来た時は人々の喧騒が聞こえていたが、今日は何故か誰も住んでいないかのように静まり返っていた。何か有ったのか? カイトは少し嫌な予感がしたので、急いで倉庫に向かった。
程なくしてガルボの倉庫の前まで着いた。外から中の様子を伺ってみたが、中に人の気配が感じられなかった。カイトは呼び鈴を鳴らそうと鉄の門に手をかけた時、少し門が動いた。まさかと思い鉄の門を押してみるとそのままギィィーー、と音を立てて開いていった。扉に鍵がかかっていなかった。以前ここに来た時に自分が門を破壊したことを思い出した。
その時に扉と一緒に鍵も壊してしまったか? そう思いながらそっと敷地に入っていった。誰かガルボの手下が出てくるだろうと思っていたが、誰も出てくる気配がなかったのでそのまま倉庫の中に入った。
倉庫の中の光景に目を疑った。血溜まりの上に男が数人倒れていた。倒れてる男たちの奥に椅子に縛り付けられているガルボがいた。ガルボは顔中を殴られて顔面が血まみれになっていた。
「ガルボ!! どうした!? 何があった!?」
ガルボに駆け寄った。ガルボは気がついて血まみれになった顔をゆっくり上げた。激しく殴られて瞼の上を切って血が目に入っていた。腫れ上がった目を薄く開けるとなんとかカイトの顔を見ることが出来た。
「あ……あんた? カ……カイトか?……」
「大丈夫か? 今外してやるからな」
ガルボの拘束具を外して床に寝かせた。床に寝かせると弱々しい声で訴えて来た。
「は……早く……帰れ……、テ……ティアラが危ないぞ……」
「なに!? どういうことだ?」
「デミタスって奴に全部バレた……、ロ……ロイの家族も危ない……」
「何だと!! ティアラ!!」
カイトはまたティアラを一人で残してきたことを後悔した。
◇
私がロイの家につくとロイの家族は暖かく迎え入れてくれた。
「ティアラ!!!」
リンは私の顔を見るなり飛んできた。
「彼奴等に見つからなかったのね? 良かったーー!」
「本当に無事で良かった。心配したぞ」
夫のロイも喜んでくれた。
「あっ! ティアラお姉ちゃんだーーー!」
「一緒に遊ぼぉーー」
ロイとリンの子どもたちが私を見つけて駆け寄ってきた。
私は二人の子どもたちと一緒に遊んだ。
「お姉ちゃんは疲れているんだから無理言っちゃだめよ!」
「は~~い! お姉ちゃんまたあの美味しいサラダつくって~~~♡」
「言ってるそばからあなた達は~~!」
「良いのよ。リン、そんなに喜んでもらえて嬉しいわ~~。とびっきり美味しいサラダ作るね♡」
「わ~~~い! やった~~~!」
リンの台所に行くとオリジナルのシーザーサラダを作った。二人の子供は美味しそうに頬張った。二人の笑顔を眺めながらいつまでもこの笑顔を眺めていたいと思っていた時、玄関が開いてマチルダが慌てて飛び込んできて叫んだ。
「みんな逃げろ!! デミタスに全部バレた!! 奴らがすぐにここにやってくるぞ!!」
マチルダと目が合った。
「ティアラ!? 大変だ、早くここから離れろ!」
マチルダはそう言うとロイの家の中に入ってきて、一緒に逃げる準備を手伝った。しばらくして家の外を見たロイは何かに気づいてマチルダに言った。
「マチルダ」
「ん? どうした? 早く逃げる準備を……」
ロイの方を見てなぜ呼ばれたのか分かった。家の側までデミタスたちがやってくるのが見えた。
「畜生! 早く逃げよう!」
慌てているマチルダにロイは諭すように言った。
「マチルダ、君だけでも逃げろ」
「は? 何を言ってんだ? みんなで一緒に行くぞ」
「幼子を連れて彼奴等から逃げるのは無理だ。それは君が一番よく知っているだろう」
「そ……それは……」
「早くいけ、今なら君一人なら逃げ出せる」
「そんな……」
「早く行け! 俺たちは大丈夫だ!」
ロイの言葉にマチルダは仕方なく家から出るとロイに言った。
「私に少し考えがある。すぐに戻るからティアラを絶対に彼奴等に渡すなよ」
「ああ。任せろ俺たちの命に変えても守ってみせる」
ロイはそう言うと奥さんのリンに目で合図を送った。リンは頷くと私の腕を掴んで付いてくるように言った。
私は家の奥の納戸のような所に通された。
「ティアラ、ここに隠れて」
「え。リン達は? 一緒に隠れましょう」
「ダメよ。ティアラだけ入って。全員で隠れても家中を探されるといずれ見つかってしまうわ。でも、ここにティアラがいることは彼奴等は知らないはずだから、ティアラは隠れていればやり過ごせるかもしれない」
「いやよ! そんなの嫌です!」
「良いのよティアラ。あなたがここに居てくれたから私達家族は生きているんだもの。あなたがみんなを救ってくれたのよ、あなたはこの世界に必要な人間なの」
「いや……嫌よ……」
私は泣きながら拒否したが、リンはそんな私を優しく抱きしめた。
「お願いティアラ。言うことを聞いて、私達は大丈夫だから……あなたを守りたいの……お願い。私達のことは気にしないで……」
「でも……」
「早く入って!」
リンは私を無理やり納戸の中に閉じ込めると外から鍵を掛けた。
「リン! やめて! ここを開けて! 私だけ助かるなんて嫌よ~~。うぅぅ~~」
すぐにリンは見えなくなった。私は声がかれるまで叫んだが、納戸が開くことは無かった。
マチルダは家を出ると遠くにデミタスたちがいることに気がついて、すぐにその場から逃げ出した。
デミタスたちは家から出てきた人影を発見した。
「誰かロイの家から出てきたぞ?」
「デミタス様、捉えますか?」
「やめろ、あいつはマチルダだ。おまえたちではあいつには追いつけん! そんなことよりもできるだけ大人数でロイの家を包囲したい」
「はい。わかりました」
「ありの子一匹逃がすなよ」
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