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〜シンデレラガール〜

大門の攻防

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 レンと信者たちがにらみ合いを続ける中、アークガルド王は堂々と大門の上に立ってアスペルド教団の信者たちの前に現れた。

 アークガルド王を見た信者たちは一斉にどよめいたが、ロマノフが右手を上げると徐々にどよめきが収まった。大門前がシーンと静まり返る中、ロマノフが喋り始めた。

「アークガルド王よ、おとなしくティアラをこちらに差し出す決心がつきましたか?」

「アスペルド教団よ。悪いがティアラを差し出すことなどできない」

「な……何だと! それではアークガルド王国はこのアスペルド教団と戦争をするということでよろしいのですか?」

「そういうことになるな」

「馬鹿な! アークガルドの民が大勢死ぬことになるのだぞ!」

 ロマノフは狼狽した。自分の予想ではアークガルド王は、おとなしくティアラを差し出すと思っていたのに予想と違う相手の反応に思わず叫んだ。

「あなたは愚かな王として歴史に汚点を残すことになるのだぞ! それでも良いのか?」

 アークガルド王は狼狽しているロマノフとは対象的に堂々とした口調で答えた。

「確かに戦争になれば多くの民を犠牲にした王として歴史に名を刻むことになるだろう。多くの人から蔑まれ笑いものにされ後世に愚かな王として語り継がれることになるだろう」

 アークガルド王は右手を胸に当て大声でアスペルド教団の信者たちに言った。

「アスペルド教団の者共よ! 儂を見ろ! お前たちの目の前の男の顔がそんな覚悟もできていない顔に見えるのか! 誰がなんと言おうともティアラは渡さん! たとえ貴様たちと戦争をしてもこの決断は変わることはない」

「な……何という愚かなことを……覚悟しろよ! この先、後世まで、俺とあんたは笑いものになるぞ」

 ロマノフはそう言うと信者たちに命令した。

「アスペルド教団の敬虔けいけんな信者たちよ! 我らの神の命によりアークガルドを攻め滅ぼすぞーー!!」

「「「うぉおおおおーーーー!!」」」

 ロマノフが大声で叫ぶと城の周りを取り囲んでいた信者たちが一斉に両手を上げて唸り声を上げた。いよいよ戦争が始まると、その場に居た誰もが覚悟をした。

「やめてーーー!!」

 私は気がつくと大門の上で叫んでいた。

「お……お前……いつの間に……」

 アルフレッドが私を大門の下に連れて行こうと近づいて来たので、私は大門の上の手すりの上に立った。

「おい! 待て! バカ野郎!!」

 アルフレッドの手が届く寸前で大門の上から飛び降りた。大門の上は地上から30メートルはあるので、大怪我するだろうが、構わないと思った。

「あぶない!!」

 レンはそう言うと飛び降りた私を受け止めようとしてくれていた。大門の中間まで来た時に宙に浮いている感覚があった。気がつくと私の落下速度がゆっくりとなっていて体から光が出ているのを感じた。

「な?……何だあれは? ま……まさか?」

「おお! セイントアウラ(聖女のオーラ)だーーー!!」

「こ……これは……聖女様の誕生だーーー!!」

 私は体から流れ出るオーラを感じながらゆっくりと地上に降りていた。アスペルド教団の信者たちは私の降りてくる姿をみて口々に聖女様!と叫んでいた。

 地上のレンが両手を広げて私を受け止めてくれた。私はそのままレンに抱きしめられていた。

「ティアラ! 大丈夫か?」

「ええ。ありがとう」

「全く、お前は相変わらず、無茶なことをするな」

「ごめんなさい、私のせいでこのまま戦争が始まってしまうと思うと居ても立っても居られなかったの」

「馬鹿だな。お前は何も心配することはないんだ。俺が守ってやると言っただろ」

「ありがとう、レンでも私をこのまま教団に連れて行って」

「は? 何を言ってるんだ! そんなことはできるわけないだろ!」

「レン。お願い……。私はこの世界に来て本当に今までにないくらい。みんな優しくしてくれて充実した生活ができたのがすごく嬉しかった。この国の人を私のせいで不幸にしたくないの、お願い私一人の命で救えるなら本望だわ」

「分かったよ。ティアラ。それがお前の望みなら俺が連れて行ってやるよ」

「本当に? ありがとうレン」

「その代わり俺もずっと一緒だからな」

「え? だめよ。私一人で行くわ。あなたは生き残って妹さんの面倒見てあげて」

「だめだ。お前とどこまでも一緒に行くんだよ。たとえ地獄に落ちるとしても一緒だ!」

「なんで? あなたは私の分まで生きて、お願いよ!」

「まだ気づかないのか?」

「え?」

「お前が居ない世界に生きても意味がないからだよ!! お前の居ない未来に何の希望も持てないからだよ!!」

 レンの腕の力が強くなって私は強く抱きしめられた。

「いいんだよ。ティアラ。一人ぼっちで行かせやしない。寂しいだろ。俺と一緒に行こう」

 私はレンの優しさに包まれた。このまま腕の中でいつまでも優しさに包まれていたいと思った。

『ドドドド!』

 いきなり馬車が人混みをかき分けてロマノフと私達の間に割って入って来た。
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