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〜シンデレラガール〜

魔法の使い方

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 私は放課後アルフレッドの住んでいるアークガルド城で魔法の訓練をすることが日課となった。

 それというのも一週間後に魔法科の試験が予定されて、試験の成績が芳しくないと退学処分になるというのである。今のままだと間違いなく私は退学になると思い最近は毎日のようにアルフレッドと魔法の練習をしていた。

 私は異世界の聞き慣れない言葉により呪文の詠唱がうまくできなかった。周りの同学年の生徒はいともかんたんに炎を飛ばしたり、水を空中に浮かべたりしていたが、私には全くできなかった。

 アークガルド城の中庭で疲れて、しゃがみ込んだ私にアルフレッドは優しく声をかけてきた。

「ティアラ、魔法を使うことで一番重要なことは何かわかるか?」

「先生は呪文の詠唱が一番重要と言っていたわ」

「そうだ。魔法は呪文の詠唱が重要だけど、なぜ詠唱が重要かわかるか?」

「え? そ……それは……わからないわ?」

「最も重要なのは呪文の詠唱によってイメージを構築することにある」

「イメージ? 構築?」

「俺たち魔法使いは呪文を詠唱することにより魔法のイメージを頭に浮かべてそれに魔力を注いで力に変えるんだ」

「? イメージができればいいの?」

「そうだ。イメージさえしっかり出来ていれば、呪文の詠唱はそれほど重要じゃない」

「え? そうなの? 分かったわ、ちょっとやってみるわ」

 魔法は呪文を唱えないと発動しないと思っていたのに、イメージが重要とは思っていなかった。

 私は、炎をイメージしょうと思い、昔からよく理科の実験で使用していたアルコールランプをイメージした。あの青白くゆらゆらと揺れるランプの炎はイメージしやすかった。すると手のひらがに光の粒子が集まったかと思うと、青白い炎がゆらゆらと出てきた。

「や……やった! 炎が出たわ!」

「やったな。ティアラ、その調子だ。しっかりとイメージを持つことが大事なんだ」

 私は炎を出したり消したりして遊んだ。炎をいつでも出せるようになったことが嬉しかった。

「よし、今度はそれを投げて的に当ててみろ」

「わ……分かったわ」

 私は手のひらに丸い火の玉をイメージした。すると青白い火の玉が手のひらに出てきた。

「よし! いいぞ! それじゃその火の玉をあそこの空の酒樽に向かって投げてみろ」

 アルフレッドはそう言うと二十メートルほど離れたところにある空の酒樽を指差した。私はうなずいて酒樽に向かって火の玉を投げた。

 私の投げた火の玉は酒樽に当たると跳ね返って地面に落ちてそのまま消えてしまった。

「いいぞ。次は酒樽を爆発するイメージを加えてみろ」

「爆発?」

「そうだ、何か爆発するようなものを想像するしろ」

 爆発……爆発……、と言われて昔見た映画で爆弾が爆発するのを思い出してそれをイメージして、先程のように火の玉をイメージした。すると今度は真っ赤に燃えた火の玉が手のひらに出てきた。

「な……なんだ? それは? ちょ……ちょっと、待って…………」

 アルフレッドはびっくりして叫んだが、私はすでに酒樽に向かって火の玉を投げていた。火の玉は放物線を描きながらゆっくり飛んでいき酒樽に当たった。

『ドォカアアアーーーーーーーーーーン!!!!!』

 爆音とともに酒樽はバラバラになり燃え上がった。私はその爆風で吹き飛ばされて気を失った。

 ◇

「テ……ティアラ……おい……しっかりしろ!」

「う……うーん……」

 目を覚ますとアルフレッドが心配そうに顔を覗き込んでいた。

「こ……ここは?」

「城の中だよ、ティアラ何があったか覚えているか?」

「えーっと、私が投げた火の玉が爆発して……」

「そうだ、君は吹き飛ばされてその衝撃で気を失った」

「ああ、そうだった。まさかあんなに爆発するとは思っていなかった」

「普通あんな爆発のイメージはできない。お前はやっぱり普通じゃないな」

 私は前の世界のテレビや映画などのメディアというもので、爆弾が爆発する様を映像で見ていた。おそらくこの世界の人々はメディアが無いので実際に映像で見たことがなくイメージできないのだろう。でも私は実際に映像で見ている分、はっきりしたイメージを持つことができる。以前みたアクション映画の爆発シーンを想像しただけでとんでもない爆発となってしまった。

「イメージしたことでこんなに威力が出てしまうのね」

「そうだ、はっきりしたイメージがあればあるほど威力が出てしまう」

 そこまで考えて私はハッとした。自分はもっと恐ろしいものを映像で見ていることに気づいた。

 日本人なら誰もが意識する兵器の実験映像を見ていたことに気づいた。あんなものをイメージしたらどうなるのだろう? 気をつけなければ、この国を破壊してしまうかもしれない。

 私は怖くなり爆発魔法を使うのは控えようと思いそれ以上は考えるのをやめた。
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