汚い奴ら

福会長

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自分の装いなど気にも留めず、振り乱したであろう髪をそのままにして、必死に響が向かった先にあったのは、一軒家にしては大きめの彼女の自宅であった。




「…た、ただいま」




明らかに焦りの色を見せている顔には、゛詰んだ ゛と書いてあった。




彼女のヤケに響く声が玄関にこだましたところで現れたのは、彼女の母、草間 佳恵子であった。



「おかえり。今日の学校は楽しかった?」




佳恵子は、人好きしそうな優しそうな笑顔を浮かべていた。



「…まぁまぁだったよ。」



響が視線を合わせずにそう答えると、すかさず佳恵子は、少し悲しそうな顔で、



「いつもより遅い帰りだったから、友達と遊んでいるとばかり思ってたけど、違かったの?何か嫌なことでもあった?あるなら今すぐお母さんに話して!」




段々と語気を荒くして響に近寄った。
まるでそうなることが分かっていたかのように響は、深く息を吐くと、途端に冷めた目を佳恵子に向けた。




理由は分からないが、彼女は母とこういう会話をするのが望ましくなくて急いで帰路に辿ったようであった。




「お母さん、何も無いよ。すぐそうやって何かと気にするのやめて?そんなにいじめられそうに見えるの私。」



冷たく言い放つと、玄関から一歩も動かずに母佳恵子を見据えた。




「…ッ!ただ心配しただけじゃない!大事な娘のことを心配するのの何がいけないの?!そうやって響はいつも私を突き放すんだから!!!お母さんをなんだと思ってるのよ!!!!」




ここの一連だけを見ていれば、完全に響が悪いだろう。しかし、これは響と佳恵子の最近の会話としては日常茶飯事だった。



そして、彼女の母佳恵子は、かなりの心配性であり、子供ぽさを持つ女性であった。




「最近いつもそうじゃん。少しは落ち着いて自分のために行動したら良いのに、、、」




佳恵子が苛立っているのを分かってか、逆撫でするような事を次々と佳恵子に向けて放つ響。
佳恵子が泣きそうな顔で反論するも、続く彼女の罵詈雑言のような説教。

自分の母に宛てるにしては相応しくない言葉の数々。


そこに耳を塞いだ佳恵子は、大きな声でこう叫ぶ。





「心配の何がいけないの。響はお母さんのこと嫌いなんでしょ!もうやだ、、、家出する!」






決まって彼女たちの会話はこれで終いになる。




なぜ響が、母佳恵子に対してあのような事を言うのかというとそれは、一年以上前に遡る。
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