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第26話 GF発覚!?
しおりを挟む「毎日が週末だったらいいのに」
「ほんとそれ。でも、そういうわけにもいかないんだよなぁ。……じゃあな、颯也。いつも通りに迎えに来るから」
また一週間が始まった。
但し、これまでの週明けとは雰囲気が異なる。恋人同士になって初めて迎える月曜日の朝は、バラ色の休日から一転して、いっそうブルーが濃い。
家を出る間際まで何度もキスとハグを繰り返して、しばしの別れを惜しんだ。
「うん。待ってるね。理仁亜、行ってらっしゃい」
「颯也も、行ってらっしゃい」
出勤前、俺はいつものように颯也を大学へ送り、遠ざかる彼の後姿を見送っていた。
「ん?」
突如視界に、颯也に小走りで近づく一人の学生が現われた。
颯也が気づいて立ち止まり、挨拶を交わしていた。とても親しげな様子だ。
「むむ…… (ざわっ) 」
心がざわついたのは、その学生が小柄な可愛らしい女子だったからだ。
赤系統のチェックのブラウスにデニムのスリムパンツといういでたちで、髪は颯也よりも短いショートヘア。全体的にボーイッシュな印象だ。颯也を見上げる横顔は快活に微笑み、かなりの美人であることが遠目にも窺えた。
そんな彼女に、颯也もまた笑顔を返している。いい雰囲気だ。
ガールフレンドだろうか?
俺は車を停めたまま、二人の姿が見えなくなるまで、ずっと見入っていた。
* * *
その日は仕事が手に着かず、凡ミスを連発して上司から説教された。
颯也があの可愛い女子と仲良くキャンパスライフを謳歌している!?
偶然目にしてしまった光景に、俺の心のざわつきは収まるどころかモヤモヤと膨れ上がり、時間が経つにつれて居ても立ってもいられない気持ちになっていった。
俺の颯也が、俺だけの颯也が、あの女子と……!
確かに、颯也には俺のような年上の男よりも、あの可愛い女子の方がお似合いだろう。それに颯也はいい男だ。普通にしていればきっとモテるはずだ。だから、女友だちの一人や二人いてもおかしくはないと思う。
しかし! 颯也と俺は共に化石になろうとまで誓い合った熱烈な仲なのだ。それなのに、そこに俺の知らない何者かが介入して良いのか? 否である。俺は断固として拒否する。颯也の笑顔が俺以外の特定の誰かに向けられることなど許したくない。
ああっ、この感情は嫉妬だ。俺は激しく嫉妬している。切ない。とても切ない。
まるで……そう、俺は恋する乙女だ。今すぐにでも花弁を毟って恋占いでも始めそうだ。
スキ……キライ……スキ……キライ……スキ……すき……焼き……。
たまにはすき焼きも食べたいな。よしっ、今夜はすき焼きだ! ……って、いつの間にか夕食の献立になっている!?
颯也を想って胸が焦がれる。人を本気で好きになるということが、こんなにも苦しいものだとは知らなかった。
だとしたら、麗羅との恋愛は何だったのだろう? 毎日が楽しく何の憂いもなかった学生の日々。麗羅は自分の彼女ではあるが、バスケットボール部のマネージャーでありアイドルでありマスコットであるという認識で、彼女が誰と仲良く喋っていようと嫉妬することなどなかった。
いったい、俺はどうしてしまったのだろう? この胸の苦しさは何だ?
それに、颯也に想いの全てを伝えきれていない気がするのは、何故だろう?
そういえば、俺は今まで彼に直接言ったことがあったかな?
愛している、と。
つづく
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