【休止中】エロゲ世界に転生した俺が主人公のナビ役だった件

毛玉(kedama)

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「武器を作るなんて、神様に言われなければ思いつきませんでした。
 武器は武器屋さんで買うものだと教わっていましたから」


 夕食にいつもの野菜スープをアルきゅんは作っている。
 今日も食材や油を支給の窓口で貰ってきていた。

 アルきゅんと俺はダークフォレストで途切れてしまった会話の続きをしていた。


『役人のおっさんの反応からして、普通はそうなんだろうな』


 ちょび髭のドン・ファンファンは釘バットをアルきゅんに作ってほしいとは言わなかった。
 作り手にもう一つ作らせるという発想には至らないらしい。
 武器は武器屋で買うものだと、固定観念があるせいか?


『あいつに作ってやるのには何かライセンスが必要だったのか?』

「アイテムの譲渡には生産系のギフトと販売のライセンスが必要なはずです。
 ファンファンさんは購入を考えていたのだと思います。
 僕は魔物退治をしている新米で、明らかに販売ライセンスの所持者ではありません」


 ほう。
 販売ライセンスってのはレベルを上げないと取得できないジョブライセンスのことか。
 金を渡すから作れとは言わないんだな。
 取引のルールが何かあるんだろう。


『あれ? それならアルきゅんのチンPoフルは、モノ作り系なのか?』

「わかりません。そもそもスキルがない状態でアイテムは作れませんし、箒を武器に変えたことも不思議です」


 ……ん?


『アルきゅんは料理も布団も作れるよな?
 スキルがなくてもモノ作りできてるってことじゃないのか?』

「スキルで作ったアイテムと普通に作ったモノは異なりますよ?」

『んん?』


 アルきゅんの説明によると、モノ作り系のギフトはスキルでアイテムを瞬時に生み出すことができるらしい。
 材料となる素材を用意してスキルを使うと、一瞬で加工されるのだそうだ。
 そこには道具も工程もない。
 さらに強化や付与、レベルによる品質の向上まであるという。


「神様は不思議に思われないのですか?
 僕はスキルもないのに箒を武器に変えたことが不思議です。
 神様の指示に従ったら、箒が素材になってしまったかのようでした……」

『箒は普通、素材にならないのか?』


 謎の食材の皮を剥きながらアルきゅんは難しい顔になった。
 自分が感じる違和感をどうにか伝えたいらしいが、俺には何が変なのかがわからない。


「箒は素材で作られた、『清掃道具』というアイテムです。
 なので箒を作り変えても箒以上の性能にはならないと思っていました。
 これは神様のお力なのですか?」

『俺の力? 俺は何もしてないぞ。たぶん』


 俺の能力と呼べそうなのは、メニュー画面からステータスを見ることと、ミャオンと入れ替わることと、アルきゅんと会話することくらいだと思う。
 食事も睡眠もいらないのは特殊能力なのか?
 それはまぁ今はどうでもいいか。

 アルきゅんが深刻になってる理由が俺にはよくわからない。


『なぁ、アイテムと素材ってどう見分けるんだ?』

「え?」


 え? って、何でそういう反応になるんだ?
 アルきゅんにはステータスなるものは見えてないと言っていた。
 俺が見れるのはアルきゅんとミャオンのステータスだけで、箒が材料かアイテムかなんてわからない。
 そういうのは鑑定スキルとかで見れるんだろうか?


『だってさ、長さを変えて釘で加工したし、形状が変われば変化があって当然だろ?』

「確かにそうです。ですが、箒の効果は『清掃』にあるじゃないですか。
 魔物を一撃で倒す箒なんて聞いたことがありません」


 ほう。
 穂先を外した状態でも箒として作られたものの能力は、あくまで清掃だということか。
 アルきゅんの言う『アイテム』ってのは、効果が付与されたスキル加工品ってことなのかな。

 アイテムとしての箒が武器にならないのは、見た目が変化してもデータそのものはスキルなしには変えられないってことかもな。
 アルきゅんの反応からして、この世界の住人はアイテムと素材を無意識に使い分けていそうだ。
 武器屋のファンシーグッズに誰も疑問を抱かないのは、武器アイテムとして分類されているからなのかも。


『ハゲのおっさんのオータニはどうなるんだ?』

「あの方は最初から武器として素材をスキル加工していました。
 つまりあの方のギフトはモノ作り関連ということです。
 武器に合ったスキルも育てているはずなので、あの方のオータニは僕のより強い武器になったと思います」


 ふむ。
 モノ作りのギフトを持ってるハゲのおっさんがオータニを完成させるのは至極当然のことで、ギフトのないアルきゅんが手作業で箒を加工して武器に作り変えたことは異常なのか。
 やっぱりゲームデータを書き換えたことになるのかな。


『もしも道理に反したことが起こっていた場合、何か問題ってあるのか?』


 グリッチ行為に当たるのかもしれないが、俺たちにとって何も不都合はないと思うけど……


「女神様に対する冒涜にならないでしょうか」


 ……。


 それはアウトだな。

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