【休止中】エロゲ世界に転生した俺が主人公のナビ役だった件

毛玉(kedama)

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「このお菓子、とっても美味しいです!」


 アルきゅんが笑顔でラスクを頬張っている。
 ほっぺをモグモグさせてる姿はまるでハムスターのようだ。
 可愛いほっぺをツンツンしたいが今の俺はナビポジに戻っている。

 朝食の前に砂糖ラスクの作り方を教えてみた。
 ジャバウォックの土産にクッキーを持たせたが、アルきゅんの分を抜いておけばよかったと反省したんだ。
 貧乏性のアルきゅんのことだ、クッキーなんて滅多に食べないだろう。
 バターのかわりに謎の油を使ったすごく簡単なやつだが、アルきゅんはとても喜んでくれた。


「ジャバウォックさんは博識なんですね。今夜は僕もご挨拶しますね」

『寝てていいよ。だってあいつ真夜中に来るんだぜ?』


 アルきゅんはマットレスの情報のお礼がしたいようだ。
 博識ねぇ……空き家の中身を知ってると博識なのか?
 確かにジャバウォックはいろいろ知ってるみたいだけど、ともあれあいつはイケメンなんだよ。
 二人を会わせたくない。

 アルきゅんにはまだまだピュアでいてほしいからな。
 俺にセクハラされて困ってるくらいがいいと思う。
 恋愛とかしないでほしい。
 俺を置いて行かないで……

 って何を考えているんだ。
 十三歳男児の恋の可能性を奪うとかダメだろ。


「お二人の邪魔はしません。寝る前に挨拶だけさせてください」

『あぁ、うん……わかった。でも、夜更かしは基本ダメだぞ?』

「……はい」


 アルきゅんがムスッとしてしまったので、ラスクをたくさん食べてもらった。
 客人へのマナーに厳しい男児なんだ。


 ミャオンは部屋の隅で寝ている。
 ミャオンの睡眠時間が朝から昼までに固定されつつあるが、午後もちょいちょい休めるから問題ないだろう。
 入れ替わって食ったお茶やクッキーについては、博識なジャバウォックさんが注意しないから平気だろう。
 ワンダーランドの魔獣だしな。


 お昼までにギリシャな商店市場へ行って、釘を買ってもらった。
 アルきゅんはパンと砂糖を買って、今夜の茶菓子にさっそくラスクを作るらしい。
 毎晩あいつに茶菓子を用意する気なんだろうか。
 アルきゅんの食費を余計なことに使ってほしくないのになぁ。


『その辺になってる木の実でも喜ぶと思うぞ?』

『ナッツもお茶請けにいいですね。マンドラゴラの種は美味しいです』


 マンドラゴラに種ってあるの?
 ともあれ客人へのもてなしにはこだわりがあるらしい。
 施設でちゃんとした教育を受けてるんだな。
 中卒の俺とはぜんぜん違うぜ。


 家に荷物を置いてから、今度は地域の加工場へ向かった。
 というのもアルきゅんが大工道具を持っていなかったからだ。
 地域の加工場はいわゆるシェア工房のことで、加工用の道具を自由に使わせてもらえる場所らしい。
 この地区は成人して間もない若者が多いから需要があるんだろうな。

 今日はアルきゅんの専用武器を改造するぞ!



「これをこのくらいに切ってほしいのですが」

「はいよ。道具の使い方、見ていくか?」

「お願いします」


 マッチョなスキンヘッドのおっさんが箒の柄をバットくらいの長さに切ってくれた。
 ぐるぐる回っている足こぎのヤスリで切断部分も削ってもらう。

 加工場は木材工房みたいな場所だった。
 屋根に看板があるし、個人の工房を地域住民に開放してる感じだ。
 作業員は注文を受けた家具や道具の加工を行っている。
 柱や壁に注文票がたくさん貼ってあった。

 居住地区の通りで見かける男は小太りが多いけど、ここはガタイのいい男が多いな。
 アルきゅんに近付く不届き者への警戒は怠ってないからな。
 まだそういうイベントは起こってないけどな。


『持ち手の先端を残してくびれさせるんだ。ゴブレットの脚みたいにな。
 振った時にすっぽ抜けないようになるからな』
 
『わかりました』


 足こぎヤスリでグリップエンドっぽい形に削ってもらった。
 バットの形を整えたら、小さな作業台と金槌を借り、さっき買った釘をアルきゅんに打ち付けてもらう。


『先端をトゲトゲにな』

『トゲトゲですか? こんなふうに、このくらいの間隔ですか?』

『うん、いいね。殴られて痛そうな感じにしてくれ』


 俺のヘタクソな指示にアルきゅんが笑った。
 柄を切ってくれたスキンヘッドのおっさんが作業を覗き込んできた。


「楽しそうだな。坊主は何を作ってるんだ?」

「魔物退治用の武器です。本当はもう少し太いのがいいみたいなんですが」

「ほお。見たことのない武器だが、良さそうじゃねえか。
 よし、俺もひとつ作ってみるか」


 加工場のおっさんに異世界の知識を盗まれてしまったが、まあいい。


「で、こいつはなんて名前の武器なんだ?」

「ええと……」

『大谷だ』

「オータニです」


 ハゲのおっさんはオータニオータニと呟きながら材料を集め始めた。
 人気の武器になってこの世界でも有名になるかもな。



「ふぅ……できました!」

『お疲れアルきゅん。いいオータニだな』


 どうにかそれっぽいのが完成する。
 ハゲのおっさんもいつの間にか完成させていた。
 おっさんの方がずっと強そうだが、まぁいい。
 アルきゅんにぶんぶん振ってもらって具合を確かめる。
 ビュンビュンと、スイングの音が明らかに変わった。


『どうだ?』

『良くなったと思います。午後が楽しみですね!』


 可愛い系ショタが釘バットを振っている姿はなかなかにギャップ映えするな。
 オータニの活躍が楽しみだ。

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