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しおりを挟む真夜中。
明かりの消えた室内。
ぐっすり眠っているアルトゥールに忍び寄るチェシャーキャットの黒い影。
「ウヘヘ……♡」
小さな獣はヨダレを垂らしながら肉球をワキワキさせて無垢な少年の寝顔をいやらしく眺めている。
「ん、ここは『ドゥフフ……♡』が適切か? 汗かきながらスケベ顔でドゥフフするとエロシーンが盛り上がるよな」
美味しすぎるシチュエーションに思わず実況しちまったぜ。
せっかくミャオンの小さい体なんだ。
寝ているアルきゅんにいっぱいイタズラしちゃお♡
こんなのカワイイ獣枠の特権だろ?
ただのスキンシップさ。
エロゲ世界で小動物になれたこと自体、エロいことをしろって言われてるとしか思えん。
だってミャオンは『催眠』スキルを持ってるんだぜ?
これはもう催眠系エロをやれってことじゃん。
一緒に寝てたらたまたまアレやソレに当たっちゃって、気付いたらアルきゅんが感じやすいエッチな体になっていた……とか普通だろ。
よくあることだな。
よし、理由もバッチリだ!
だがしかし、夜のエロイベントは無慈悲に幕を閉じた。
「何だいお前さん、その子を手籠めにするのかい?」
「のわっ!? ビックリしたな、ジャバウォックかよ」
夜の客人が来てしまった。
エロイベントに浮かれてすっかり忘れてたぜ。
「クフフ、お邪魔するよ」
「マジで邪魔だぞ」
「私はそこでおとなしく見物しているから、好きにしたらいいさ」
「ええ~……うーん。じっくり楽しめそうにないからいいや」
人に見せられるほどのテクニックを俺は持っていない。
ただくすぐって遊ぶなんて小馬鹿にされそうだ。
スケベなアホヅラを見られるのも癪だし。
ハァ……。
御託を並べて下心に踏ん切りをつけた。
「ほぉ、お前さんの主様は礼儀が成っているねぇ」
「俺はいらないって言ったんだけど、お友達は大事にしろってな」
「クフフ、お友達かい」
アルきゅんが用意したクッキーをジャバウォックは嬉しそうに食べている。
お茶は今夜も自分で淹れさせた。
チェシャーキャットに給仕はできないからな。
俺の分もついでに用意してもらった。
「アルきゅんはマットレスもないベッドで寝てるんだぞ。
あんな薄っぺらいボロの布団でな。
茶菓子なんて買わず、その金を貯めさせたかったな」
「ふうむ。お前さんの主様はマットレスが欲しいのかい?」
「本人は作る気らしいけど、今のままだと何年もかかりそうだ。
どこかにそこそこキレイなやつ、落ちてないか?」
中古の寝具なんて嫌だけど、浄化魔石でどうにかできないかな。
「私はこの地区の空き家をぜんぶ知っているがね、前の住人が置いていったやつがあったと思うよ」
なんだと?!
俺はジャバウォックからその情報を詳しく教えてもらった。
持つべきものは夜の怪物だな。
「すげー助かるよ! お前っていい怪物だな。
誰かに付け込まれないように注意しろよな」
「そうともさ。お前さんにいいようにされているものねぇ」
ジャバウォックはクフフと笑った。
優しさに付け込んで悪いとは思うけど、この世界で俺が頼れる知り合いはまだこいつしかいない。
気を悪くしないでほしい。
俺のクッキーを一枚やるよ。
「ついでに聞きたいんだが、ジャバウォックはギフトについて何か知ってるか?」
「ギフトならだいたい知っているよ。何てギフトだい?」
「チンPoフルだ」
「ちんぽふる?」
ジャバウォックは難しい顔つきでブツブツ記憶を辿っている。
ほか二つのギフト名も聞いてみたが、反応は同じだった。
「そんな名前のギフトは初めて聞くよ。どれも聞いたことがないねぇ」
「お前にもわからないか。
ギフトって、この世界の住人はみんな持ってるものなのか?」
「ああそうだよ。私にも『漆黒の畏怖』というギフトがある」
ほう。厨二臭いな。
ミャオンのは『一撃の猟牙』だったし、二つのギフト名と比べると『チンPoフル』は異色に映るな。
「ギフトは神殿の女神がひとりにひとつ与えてくださる」
「神殿?」
「レフトボールと呼ばれているね。
ブルンアイランドの対の島、ボロンアイランドにある神殿さ」
確か王城はライトボールだったな。
レフトとライトのボールに、ブルンとボロンか。
だいたいわかったぞ。
発想が小学生みたいな趣深いエロゲだ。
ふーん、面白いじゃん。
PCでプレイしたかったぜ。
ギフトについては図書館で調べる予定だと言うと、ジャバウォックもそれがいいと言う。
図書館なら間違いないだろうと。
「だがあそこの本の大半はデタラメさ。
司書のマーベリックはホットワー厶が好物でね、差し入れすればきっと助けてくれるだろう」
「そうなのか。いろいろありがとうな」
質問が済むとお茶を新しくして、昨晩と同じように中身のないおしゃべりを楽しむ。
ジャバウォックは俺の話を何でも楽しそうに聞いてくれるから、話していて気分がいい。
日が昇る時間が近づくと、別れが惜しくなる。
まだ遊んでいたいとか、そういう感覚は久しぶりだ。
ジャバウォックにはクッキーの残りを土産に持たせてやった。
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