【休止中】エロゲ世界に転生した俺が主人公のナビ役だった件

毛玉(kedama)

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 ミャオンを休ませるため、魔物退治の前に買い物へ行くことになった。


『図書館にはまだ行かないのか?』

『図書館は決まった日にしか開かないので、次の開館日に行きましょう』


 そろそろ『チンPoフル』について知っておきたいが、それはまだ先になりそうだ。
 昨晩ジャバウォックに聞いてみるべきだったな。
 だらだら性癖を語り合って時間を無駄にしちまったぜ。
 だがジャバウォックとの会話は楽しかった。
 ギフトについては急いでも俺の成仏が早まるだけだし、のんびりやればいいや。


『おぉ、屋台がある! 食いもの……なのかアレ?』

『ホットワー厶ですね。潰して蒸して食べるんです。
 僕はパンに挟んで食べるのが好きです』

『へぇー……』


 屋台に吊るされた巨大な芋虫にドン引きする。
 昨日の武器屋はなかなかファンシーだったが、アルきゅんの家の区画にあるこの商店市場はギリシャ味をギリギリ保っていた。
 一部サイバーパンクな怪しい店もある。

 アルきゅんは店を回って新しい茶葉と菓子とパンを買った。
 パンはアルきゅんの顔よりデカいのを買っていた。
 ナイフで切って少しずつ食べるそうだ。
 塩をふった油をつけると美味いらしい。
 俺はアルきゅんにお願いして一番安い箒を一本買ってもらった。


『そういやアルきゅん、この国の水ってどうなってんだ?』

『お水ですか?』

『家で使ってる水はどこから来てるんだろうと思って。
 だってここ、空に浮かぶ大陸だろ?』


 どこかに雨水を貯めているんだろうけど、家の外に貯水タンクや井戸らしきものはない。
 風呂場の手押しポンプは呼び水もなしに水が出るし、原理が不明だ。
 まぁ大陸が浮かんでるくらいだからな。

 よそのファンタジー世界だと浮島にも滝とかあるよな。
 この世界の浮遊大陸に川はあるんだろうか。
 マットレスは泳いでないだろうか。


『南の森に雲を吸い込む魔法のタンクがあるそうです。
 水は雲から作られて、そこから地下の管を通して各地区に無料提供されています』

『無料なの? 水道代がいらないのはいいな』

『飲み水に使う浄化魔石は個人で買わなければなりませんから、お水にお金がかかると家計が厳しいですね。
 魔石は消耗品なんです。照明や加熱用などの生活に必要な魔石代は馬鹿になりません』


 なるほど。
 水道光熱費の代わりに魔石代があるのか。


『なら下水の処理は? あ、トイレは魔石だったか。
 風呂水は洗濯に使ってたし……それでも排水溝に流れる分があるよな』

『下水はゴミと一緒に地上に落とされます。
 なので地上の環境はあまり良くないと思うのです』


 この国の罪人ってゴミや下水と同じ扱いなのか。
 しかし地上の民ってずいぶん劣悪な環境にいるんだな。
 それともそういう環境を好む分解者みたいな生き物なんだろうか。
 畑を耕してるなら、大きなミミズかもしれない。


『向こうに近々行われる刑の執行目録がありますが、見ていかれますか?』

『え……?』


 商店市場の広場の中心に巨大な薔薇のモニュメントがあり、罪人の刑に関する目録が貼られていた。
 数名の名前と犯した罪とそれに対する罰が書き連ねてあるらしい。


『どんな罪があるんだ?』

『ほとんどが不敬罪ですね。女王様に対する不敬の行為が罪とされています』

『不敬罪? どんな行為が不敬にあたるんだ?』

『中央区の仕立て屋さんは、白いドレスを献上したことが理由のようです』


 は?


『なんで?』

『女王様のカラーは赤ですから。仕方がないと思います』

『ふーん……』


 そういやワンダーランドのハートの女王って『首をはねろ!』の理不尽キャラだったな。
 そこを取り入れるなよ。

 俺が地上を知りたがるから、アルきゅんなりに注意を促してくれたんだと思う。
 とりあえず女王には関わらないようにしよう。




 家に帰って荷物を片付け、回復したミャオンを連れて魔物退治に向かった。
 今日は穂先を外した箒を持っていく。
 柄が太くて重たいやつを選んでもらったから、アルきゅんに打撃武器として使ってもらう。
 先端が膨らんでいて箒としては歪で安かったが、いい棍棒になりそうだ。


『ミャオンとの連携も練習しないとな』

「頑張ろうね、ミャオン」

「ナーン」


 最初は昨日の湧きスポットで生肉を狙った。
 コイツは跳ねる以外動きがないから練習に最適だ。

 バトルフィールドに入る。
 ミャオンの初陣、見せてもらおうか。


『最初はミャオンにやらせてみようぜ』

「はい! ミャオン、ポークアジルを攻撃して」

「ナーン!」


 ザシュッと爪で引き裂くエフェクトが入った。
 ポークアジルにヒビが入ってガラスが砕けるように消える。
 ミャオンのワンパンで倒してしまった。


「ミャオンすごい!」


 バトルフィールドが消えるとアルきゅんはミャオンを抱き上げて頭を撫でた。
 よしよし、これで毒薬も節約できるな。

 今日はもっと森の奥へ行きたいが、アルきゅんには棒での打撃訓練をさせたい。
 箒だった棒が武器扱いになるのかも知りたいし。


「次は僕の番ですね」


 俺が見れるステータス画面には装備の項目がない。
 素の攻撃力に武器の攻撃力が加わるのかもわからない。
 毒薬の威力も生肉にしか使ってないから他の魔物にも同じ程度に効くのかわからない。
 バトルフィールドではダメージ数が表示されないし。
 敵のレベルもHPもわからないから、戦って覚えていくしかない。
 ゲームとしては表示が不十分なんだよな。


 次の湧きスポットにいたポークアジルとバトルフィールドに入る。
 ミャオンはフィールド外で待機させた。


『頑張れアルきゅん!』

「はい、頑張ります! えい!」


 生肉にポコッと攻撃が入ったが、一発では倒れなかった。
 ターンが交代し、生肉が跳ねる。
 まるで鯉のモンスターだな。
 再びアルきゅんのターンになった。


「えい!」


 二発目もダメだ。
 アルきゅんの攻撃力が足りないのか?
 ダメージ数の非表示設定なんとかしろよ。
 現実的に考えれば数値が見えるほうがおかしいけどさ。


「えい!」


 三発目もダメだ。
 うーん……


「うぅ、えいっ! ……あ、やりました!」


 四ターン目でやっと生肉が砕け散った。

 これってどうなんだ? 失敗か?



『その棒、使ってみてどうだった?』


 棒の先っぽを尖らせて突くほうがいいのかな。
 魔物に近づいてほしくないから長いのにしたんだけどな。

 アルきゅんは棒をぶんぶん振ってみせた。
 武器を振る姿は凛々しくて様になるな。
 将来のイケメン王子なアルきゅんを妄想する。


『もう少し短くしたら強く叩ける気がします』

『ふむ。バットくらいの長さがいいのかもな』


 長すぎて力が分散するのか。
 棒の先に毒を垂らして使うことも考えたけど、液体が飛び散って危ない気がした。
 もったいないから改良してもう少し使ってみないとな。

 バットが何かわからないらしく、アルきゅんは首を傾げていた。
 この先はミャオンに任せよう。



『武器はそのままで、次からはミャオンの攻撃を先にしよう。
 少し奥へ進んで別の魔物を探すとするか』

「わかりました。ミャオン、他の魔物を探してくれる?」

「ナーン」


 そうか、ミャオンに探させればいいのか。
 アシスト魔獣は有能だな。
 どんどん俺の立場がなくなるぜ。

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