【休止中】エロゲ世界に転生した俺が主人公のナビ役だった件

毛玉(kedama)

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 チンPoフルとは何なのか。


『さきほど神父様にもお尋ねしたのですが、神父様は僕の神様が導いてくださるとおっしゃっていました』


 それでアルきゅんは俺を神様だと勘違いしてるのか。
 たぶん神父は遠回しに『知らない』と言ったんだな。
 なるほどな……

 俺が説明書を読んでなかったからこうなっているわけだ。
 面目ない。
 てか、今時のゲームならゲーム内に案内とかないのか?
 例えばメニューとかに……


 メニュー画面はどこですかぁー?!


 と心の中で叫んだら、『ピュコン!』と機械音がした。


『うわ、何か出た!』

『え?』

『あ、いや、ちょっと待っててね』

『はい』


 視界に薄暗いフィルターが掛かって何か表示が出てきた。
 ひとつずつ確認したいし、アルきゅんにはこの後の予定を進めてもらうことにする。


 どうやら俺はアルきゅんの周辺に浮かぶ仕様らしく、彼の行動に自動でついて行けるようだ。
 やはり俺は彼のナビゲーター的存在らしい。
 神父はナビの存在を知っていたんだろうか。
 『神様が導いてくださる』ってナビのことじゃん。
 『神』じゃなく『ナビ』って言ったんじゃないのか?
 どっちにしてもゲームの知識がほとんどない俺はポンコツだがな。


 教会から出たアルきゅんは大きな荷物を抱えていた。
 今日から住まいが変わるのだとか。

 ギリシャ風の白っぽい住宅街を進んで行き、並びの家のひとつを確認して、持っていた鍵で中に入る。
 部屋には使い古されたベッドやテーブルが備え付けられていた。
 アルきゅんは荷物の整理をはじめる。

 その間俺のほうでわかったのは、アルきゅんの現在のステータスとギフトの名前だけだ。
 スキルの枠はあるけど、今は空っぽだ。
 スキルポイントの累計欄にギフト名が書かれているし、ポイントが貯まればスキルが取得できるんだろう。
 今のスキルポイントはゼロだ。

『チンPoフル』がスキルポイントの収集にかかわる何かであることまでがわかった。
 つまり、ほとんど何もわからなかったわけだ。
 ちなみにアルきゅんには、そうした情報画面は一切見えていないらしい。


「それはつまり、神様にも僕のスキルポイントの取得方法が具体的に何かはわからない、ということでしょうか」

『そうなんだ。役立たずでごめんな。
 この世界と関係のある単語だったから選んでみたんだけど、あとの二つも知らない言葉だったしな』


 選択肢にあった残りのギフト名も一応聞いてみたが、アルきゅんの知らない言葉だった。
 主人公のギフトはこの世界では特別なんだろうか。

 ちなみに、アルきゅんのサポートをするのが俺の役目らしい、とだけは伝えている。
 この世界のことを俺がぜんぜん知らない事も正直に話した。
 アルきゅんのことは生まれた時から見ているが、それはアルきゅんが考えているようなものじゃないし、生い立ちとか育ってきた環境は何も知らないとも。
 無能さをさらしたようなものだけど、隠していると迷惑になりそうだしな。


「この世界と関係のある言葉ですか……
 でしたら図書館で調べてみればわかるかもしれません」

『おお、図書館があるのか。ギフトのことをまとめた本があるかもしれないな』


 新居に移ってからアルきゅんは、声を出して会話をしてくれるようになった。
 俺の方は体がないから脳内直通の念話のままだ。


 しかしこうして思考できるんだから、俺の脳みそはどこかに存在しているんじゃないかと不安になる。
 俺の体が今もどこかで無事に生きていることをそれは意味しているんじゃないのか……?

 あのまま生きていたら一生孤独な人生だったし、人としての生に未練はない。
 部屋のコレクションが焼けてしまったのなら、元に戻りたくないまである。
 目が覚めて病院のベッドの上で全身火傷の瀕死状態とかマジでごめんだ。
 このままここでアルきゅんを見守りながら成仏を待ちたい。
 人生の最期にA兎先生の推しキャラそっくりな可愛い子と過ごせるなんて、最高かよ。



「神様にお名前はないのですか?」


 すっかり打ち解けたところでアルきゅんに尋ねられた。


『うん、それがそのね~、思い出せなくてさ』

「そうなんですか……神様って呼んでいても平気ですか?」

『もちろんだ。神様なんて大層なもんじゃないけどな。
 あだ名だとでも思って気軽に呼んでくれ』


 自分の名前を思い出せないとか、ウソです。
 しっかり覚えている。
 神様ポジションでいるほうが気が楽だから、このまま行かせてもらうことにした。

 だってこれ、18禁のエロゲ世界だろ?
 いたいけなショタが性に溺れていくのを、これから俺は見守るわけだよね。
 予告で見ただけでも今後数人とのおせっせが待っている。

 人としての名を明かしたら、俺の名でアルきゅんが助けを求めたりしたら、俺の倫理観は耐えられそうにない。
 口しか出せない以上、物理的には助けられないからな。
 ゲームをゲームとして楽しむために、俺は次元の異なる存在でいたほうがいいだろう。
 ここはヒューマンバイオレンスではなく、不遇エロコメディで頼むぜ。

 すまないな、アルきゅん。
 二次元ショタは竿役のおちんぽ様に勝てない存在なんだ。


 それと、スキルポイントの取得方法だが、これについてはある程度予想している。
 選択肢にあった残り二つのギフト名からも、それ系の内容だと思われる。
 はっきりしたことが分からないから伝えるのは難しい。
 試してみるなんてもってのほかだしな。
 時が来るのを待とう。



『次は図書館?』

「いえ、今日はこれから魔物退治のライセンスを発行しに行きます」

『魔物退治って、経験値とか稼げるのか?』

「ええ。成人したのでレベルを上げなくてはなりませんから」


 魔物の退治に冒険者などの職業はないらしく、役所で『魔物退治』というジョブライセンスを発行してもらうらしい。

 アルきゅんの暮らすこのポロリン王国は、レベルに応じて国からの支給があるという。
 国民は役所からの仕事を請け負い、その仕事から経験値を稼いでレベルを上げるのだ。 
 レベルが上がれば賃金が増え、住まいや仕事内容を変えられる。

 アルきゅんは孤児で施設育ちだった。
 今いるこの小さな家は、王国から成人した民に与えられるものなのだそうだ。
 孤児院の子供は成人と同時に居住地区での暮らしを始めるらしい。

 十三歳で一軒家をもらえるなんて羨ましいな。
 俺の住んでいたボロアパートの部屋より広い。


『ずいぶん豊かな国なんだな』

『そうなのですか? 僕はここ以外の国のことは知らないので、あたり前だと思っていました』


 役所へ向かうアルきゅんに連れられて、王国の町並みを眺めていた。

 たしかここって、空に浮かぶ大陸じゃなかったっけ?
 大陸全土が王国なんだろうか。
 スチルイラストでは小さい島に見えたから規模が掴めない。

 町並みはギリシャの観光名所っぽい。
 白い土壁の家が並んでいる。
 ゲームの作り手が単調にしたんだろうな。


『おぉ……何だあれ美味しそうだな』

『うふふ。あれはライトボールと呼ばれる王城です。
 王城ライトボールはこの国の中心で、ブルンアイランドで最も高い場所らしいです』


 外に出たアルきゅんは念話で応えてくれている。
 ひとりでブツブツ呟くのはこの世界でもおかしいことなんだろう。

 遠くに見える王城は、ケーキと巻き貝を合体したみたいなデザインだ。
 あの城にはなかなか個性を感じるな。
 フリー素材かもしれないけどな。


 到着した役所は、アルケスナンの製塩所みたいな建物だった。
 異世界で地球の世界遺産を拝めるとはな。
 個性を感じた途端にこれだ。

 中に入るとびっくりするほど混んでいた。
 ここに来るまでの道のりは、小太りの男を数人見かけただけだ。
 モブはぜんぶコピペかと思ったら、こんなにいろんな種族がいたのか。


『獣人やエルフもいるんだな』

『ジュージン? エルフ? 何ですかそれ』

『え? 異種族じゃないのか?
 あそこの体毛が青い人とか、耳の長い金髪の人だ』

『イシュゾク、ですか? 初めて聞く言葉です』


 どうやら種族という概念はなく、『王国民』という属性で一括りになっているらしい。
 わかりやすいと言えばわかりやすいのか?

 しかし種族がないというのなら、獣人やエルフはガチャみたいにランダムに生まれるんだろうか。
 ゲームの設定上セックスはあるんだし、木から産まれてくるわけじゃないよな。


『なぁなぁアルきゅん、この世界の子供はどうやって産まれるんだ?』

「えっ?!」


 窓口に並んでいたアルきゅんは、声を出して真っ赤になる。
 周囲の王国民がビクッとなってアルきゅんから離れた。
 おや?
 混雑に乗じた痴漢イベントでもあったのか?


『にゃにをおっしゃっているのですかっ?!』


 動揺してるアルきゅんが可愛い。


『いや、遺伝とかの法則がどうなってんのかなって』

『イデン……ですか?』


 ワンダーランドなら、種族がごちゃ混ぜの世界でもおかしくはないのか。


『ごめん、忘れてくれ』

『……あの、赤ちゃんは、コウノトリさんが作ってくださいます』


 ……?

 これは何だ。
 アルきゅんがピュアで、そう思い込んでいるのか?


『結ばれた王国民のお家にやって来て、まず一人目の……その……赤ちゃんの種をお渡しするのです』


 真っ赤な顔でモジモジしながらトンデモ話を語り出した。


『お渡しした種からコウノトリさんは卵を産み、今度はもう一人の種を卵にかけるんです……』

『ん……?』


 一人目の種、二人目の種……?


『え……この国って、女はいないの?』

『え? もちろんいます。
 王城にいらっしゃる女王様が、この王国の女性です』

『ん……? 女王様以外は?』

『もちろんいません』


 ほーん……

 それってつまり、この世界って、実質男しかいないのぉ?


 周囲を見回すと、カウンターの向こうの役人も広間の国民も確かに全員男のようだ。


 ワンダーランド、最高だな!


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