とあるお抱えの不測

nionea

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 スイの脳裏を、つらつらと今までのカシオニアとの閨事が過る。

 三年前。
 貪るように口付け合って、舌を絡め、吐息と共に離れた口から唾液が糸を引く。その様に顔を赤らめ、カシオニアはもうそれ以上どうすば良いのか解らないという様子で固まっている。
 やり方を知らない訳ではないだろう。ただ今までの行動を自省しているのだ。触れたい、撫でたい、舐めたい、吸いたい、そういう欲求のままに手を出して、相手を傷付けるのを怖がっている。口付けと、目の前の誘うような表情に、すっかり下腹部は血を滾らせているのだが、寝台の敷布を握り締めて堪えていた。
 妙に行動的かと思えば突然羞恥心で固まるカシオニアを見つめて、スイも、どうしたものか、と考えている。
「殿下」
 スイは呼びかけて寝台に膝を載せるが、明らかな昂りで天幕を張っているカシオニアは、スイの顔を見つめて固まったままだ。そっと手を伸ばして、触れるが、びくりと体を震わせただけで、特に動きはない。
 見つめ合いながら距離を縮められ、服越しに器用な指で正確に自身の形を辿られ、カシオニアの腰が引ける。
「殿下、逃げないで下さい」
 切なく懇願する声を右の耳に落とされて、カシオニアの右手がおずおずとスイの頬に触れる。
「お嫌ですか?」
 肩に顎を乗せるようにされているため表情は見えなが、カシオニアはスイの声に泣きそうな震えを感じる。触れた頬の手に更にスイの手を重ねられ、位置を入れ替えてぎゅっと握り込む。
「嫌な訳がない。ただ、その気恥ずかしくて…」
「では、このまま顔を見ないようにしていますから、力を、抜いて下さい」
「ああ」
 カシオニアは答えたものの上手く硬直を解く事はできなかった。
「っあ、スイ! んっ、ふぁっ…あっ」
 いつの間にか寛げられ、直接スイの指に扱かれる刺激に浮かされて、肩に縋る様にしながら射精を迎えた。スイの肩口に顔を埋めていたカシオニアは、スイの顔がにやりとした笑みを浮かべていた事を知らない。
(可愛いな、殿下)

 二年半前。
 寝台で上半身を起こし、足の間で這うように伏せているスイの頭に手を置いて、カシオニアは慌てた。
「スイっ駄目だっ、っつ…ぁ」
 会陰を指で押すようにされながら鈴口を軽く吸われ、カシオニアはあえなく射精してしまう。
「っ」
 口の中に受け止めたものを見せつけるように手のひらに吐き出す姿に、一度は萎んだはずの硬さが戻るのをカシオニアはどこか切り離されたような感覚で認識した。吐き出したカシオニアの精にまみれた手で、スイが自身に触れて扱き上げている。その淫らな様を目で追う事の方が、重要だったのだ。
「スイ?」
「殿下、一緒に、握りこんで下さい」
 すっかり射精直前の状態に戻ったカシオニアのものと自身を擦り合わせながら、スイはカシオニアの手をそこに導いた。
「ふっ、あぁ」
「ん、上手ですよ殿下、そのまま扱いて下さい」
 カシオニアの両手の中で、二人のものが擦れ合う。カシオニアが何とか必死に手で扱いている前で、スイは同じように手を添えながら、その手でできた穴の中を腰を動かして前後もしている。
「あぁ、いい、はぁ…殿下、そろそろ」
「え…! あぁ…」
 スイが添えていた手を離し、カシオニアに抱きつくようにもたれかかる。吐息混じりに、イきます、と囁かれて、カシオニアは射精した。
 続いて射精を迎えたスイは呆然とするカシオニアを見つめて微笑むのだった。
(本当に、可愛らしい)

 二年前。
 弓なりにしなる背を見下ろして、双丘の間に己をあてがいながら、カシオニアはふぅっと荒くなる息を押さえ込むように努めた。
「殿下、そのまま、腰を沈めてください」
 振り返って言われ、その括れたような肩から腰への線にぞくりとした震えが走る。息を整え、ゆっくりと進むつもりであったのに、亀頭を包み込む熱と柔らかさに中程まで一気に押し進めてしまう。
「っ…」
 スイが息を詰めたのが解り、カシオニアは慌てて上体を倒して耳元へ近付く。
「すまないっ辛くないだろうか」
「平気、です…だから、そのまま奥まで、突いて」
 首を回して口付けられ、突いてという艶めいた懇願の言葉通りに、衝動のまま腰を進めてしまう。一度衝動に身を任せると、止まることはできなくなった。カシオニアは、スイの内壁が引き抜く度に絡みつき、歯の根が浮くような腹の中がざわつくようなそんな快楽に飲み込まれていく。
「はぁ、はっ、んっ…ぁんっ、あ…」
 気が付けばスイの腰を掴んで打ち付けるように前後していた。
「スイ…、スイっ!」
 すぐそこに迫る限界を感じて、もう一度顔が見たいとスイの頤へ手を伸ばす。だが、顔を己の方に向ける前に引いた刺激で果ててしまう。カシオニアが中に出してしまった事に慌ててまだ残っていた先を引き抜くと、とろりと自身の精がスイの内ももを伝って落ちる。
「まだ」
「え?」
 声に、スイの下半身を凝視していた視線を上に向ける。体をひねって伸ばした手で、スイがさっきまでカシオニアを飲み込んでいた場所を開くように示す。
「まだ、イってないから、もう一回…」
「っ!」
 結局三回目の射精後に二人ぐったりと寝台に寝転んだ。
 余裕無く果てた事を恥じるような言い訳を聞きながら、スイは赤いカシオニアの耳を撫でていた。
(可愛いなぁ)
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