(株)よつめやくのいち

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第二章:彼女達の事情

二話:ニップアクセ(中)

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 こうして、結婚とは無縁に過ごしていた彼女は、義姉の出産を良い契機と捉え、御柱様の元で生きる事を考え始める。
 ところが、時を同じくして、もはや尼にと考え始めた彼女の元へ縁談が舞い込んだ。
「シナ。これは、とても良いお話だ」
 その縁談を伝えに来た兄は、いつになく真剣に妹へ説き始めた。
「お相手は、海青屋の大旦那様だ。この度成人する御子息に屋主としての立場を譲り、ご隠居生活を始めるそうでな、おそらくこの縁談は身の回りを世話する後妻として求められている」
「後妻…」
「ああ。後継は必要無いし、既に隠居生活を決められた海青屋さんは、女を求めておる訳でもあるまい。なにせ、先妻が亡くなられて十六年。一度も後ぞえの話はなかったそうだから」
「はぁ…なるほど」
「お前が、御柱様の元へ行きたいというのなら、止めはしない。だが、結婚がしたくない訳ではないのだろう?」
 兄は姉達の名前を出し、聞いている、と付け加えた。
 確かに、シナは夢を見ている。できるものならば、結婚したいと思い続けていた。姉達へ、その思いを吐露したこともある。
「あの………このお話は、一度、御柱様の御堂へ参ってからお返事をしても構いませんか?」
 確かに、自分にとって、きっと最後の好機なのだろうと思えたが、それでも、シナは即答は出来なかった。
「んん…そうだな………いや、解った。私の方から海青屋さんに話をしよう」
「ありがとうござます」
 そうした訳で、彼女はこの尼寺へやって来て、修行と、もし叶うならば他の女性達の胸を確認したいと考えていたのだった。
(確かに、いろんな女性が居るし、共同浴場があるから確認はできるか)
 シナの話を聞いて、オズはコクコク頷いて感心していた。
 ところが、更に話を聞くと、結局自分の胸を晒すのが嫌で、共同浴場はまだ使った事が無いらしい。
(あらら…ふむ…あまり決めつけは良くないんだが、シナさんに必要なのは肯定な気がする)
 今のオズは、この世界の神様である御柱様の威光をもって訪れた稀人という、大層特別な人間なのだ。その説得力を今使わずどうするというのか。性に悩める女性の声を集め、共に解決しようと努力する事こそ、よつめやくのいちの在り方である。
 しばし沈思黙考したオズは、顔を上げると、稀人の威光を最大限利用する事にした。
「ご心配には及びませんよシナさん!」
 ニプ系箱から、十センチ四方の枠を取り出す。向かって右辺に目盛が、下辺にカラーチャートがあり、上辺にカップ数を書き込む空欄が書かれた枠である。左辺は手で持つように空白だ。
「こちらをご覧下さい」
「はい。なんでしょう?」
「乳輪の大きさと色を確認する枠です」
「え!?」
「この目盛が大きさ、下の色彩が色を表します。見てもらえれば解るように、大きさも色もものすごく幅がありますよね。ちなみに、この黒い線が私の乳首の大きさと色です」
 実は、よつめやくのいちの社員は全員この枠を使って自分の乳輪の大きさと色をサンプリングしている。元々は黒ずみがちな乳首をピンクに変えるクリームの使用感を感じてもらうための販促品だ。
「稀人様の…」
「はい」
「こんなにいろんな色や大きさが…」
「乳首だって、顔と同じです。家族で似る事もあれば全然似ない事もあるんです。人それぞれ、どんな色でも大きさでも形でもその人の素敵な乳首です」
 シナはどこか憑き物が落ちたような顔で枠のカラーチャートをなぞっている。もしかしたら自身の乳輪の色を確認しているのかもしれない。
「それから、これ、大事な事なんですけど」
「はい」
「胸は性器ではありませんが、立派な性感帯なので、胸を触る事が気持ち良いのはおかしな事じゃないです」
「………本当ですか?」
「本当です!」
 オズは、はっきりと断言した。
「そりゃ、やっぱり個人差はありますけど。世の中には足の裏を刺激されるのがたまらないという人や、耳の穴、口、指、脇とか、それぞれ最高に気持ち良い場所が性器以外にもあったりなかったりします。それは人それぞれ違くて構わないんです。だって、違う人間なんですから。泣いたり笑ったりするツボが人それぞれなように、気持ちイイとこだって、人それぞれです」
 拳を振り上げて力説するオズを、ジッとシナが見つめている。
「私…おかしくありませんか?」
「これっぽっちもおかしくないですよ!」
 オズの断言に、乳輪測定枠を抱き締めてポロポロと涙を零すシナは、不思議な事に、幼い少女のように見えた。
「ありがとうございます………私、決心がつきました」
 そう微笑んだ夜。
 シナは、海青屋との縁談話を受ける旨の手紙を兄に出した。
 ちなみに、性感帯である胸を飾るニップアクセについては、稀人の強い勧めもあったので、利用していく方針である。
(それにしても、胸に装身具だなんて、稀人様の世界は、開放的でいらっしゃるのね。作りも繊細だし…あの図録にもたくさんの種類が載っていたわ…)
 オズの世界でも、広く見せる事を前提とした一般的なアクセサリーではないのだが、普及活動に勤しむ彼女が推しまくったため、ちょっとした誤解が生まれていた。
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