(株)よつめやくのいち

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第二章:彼女達の事情

二話:ニップアクセ(上)

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 オズが、ユキエにベビードールを紹介し、ウメノと丈直しなどを話し合っていた時。
「胸だけを隠すようなものも、あるのでしょうか?」
 ウメノがぽつりとつぶやいた。
「胸ですか? まぁ、コスは色々ありますけど」
「実は…会っていただきたい女性が居るのですが」
「ええ、勿論。私でお力になれるのでしたら誰とでも」
 営業鉄則。法的にアウトじゃなかったらとりあえず断らない。を実践しつつ頷く。
 すると、数分後に会う事になったのは、嫁入り前というのはちょっと信じられない、艶っぽさを持った女性だった。
「シナと申します」
「あ、どうも、オズです」
 どこか、ロマンポルノの未亡人のようなエロスを漂わせているシナは、ぱっと見で大きい、と判断できる胸を持っていた。
(巨乳コンプレックスかなぁ…?)
 ひとまず胸を見つめてしまう事の無いよう、目を合わせて話を始める。
 ウメノの事前情報によれば、シナは胸を人に見せるのが嫌で、結婚話を断り続け、三十二歳の未婚処女であるらしい。
(胸かぁ…顔と性器と同じで個人差の激しいパーツだからなぁ。コンプレックス持ってる人って結構多いんだよな。コンプレックス、とまではいかない悩みも多くて、女性とエロを並べたら絶対外せないテーマだし。どういう風に話し易い状況を作るか)
 オズとしては、いきなり服を脱いで、
「私の胸はこんな感じ、貴方は?」
と、やっても良いのだが、それで胸を出せる性格ならば、どこかで結婚していただろう。
(んーまずは、胸を隠すグッツを紹介してみるか)
 オズは、ベビードール以外にも様々なコスチュームが乗った着用写真付きカタログを一緒に見ようと誘ってみた。
(そもそも日本は昔着エロ文化だったから、ここもそうかと思ったけど、意外と違うみたいだから、着エロ意識をお伝えしてみよう)
 そういう気持ちでカタログを見始めたオズだったが、シナは、存外コスチュームには興味が無いようだった。これは、外したな、と考えていたが、一瞬そんなシナの目が熱を込めて見つめたページがあった。
(ん? ここは…コスっていうか立役者のニップレスさんのページ………もしや!)
 オズは段ボールの一つから、ニプ系と書かれた箱を取り出す。
「ちなみに、シナさん…こんなのご興味あります?」
 人で撮るには色々規制があるのでマネキンに付けさせている、ニップアクセサリーのカタログと、着用手順を示すために人が載っているトリセツを渡してみた。
「これ! あ、いえ…」
 明らかに興味を示したシナに、オズは笑顔で頷いて見せる。
「ご心配には及びません。私はどうせ一年後には消えていなくなる稀人。皆さんのどんな悩みも誰にも漏らしは致しません。ドンとぶつけて下さい!」
 しばらく言葉を探すように考え込んでから、シナはつっと顔を上げ、口を開く。
「実は――」
 シナは、白天国の国主が住まう都へ続く大街道の一つが通る、西小都、という栄えた都の出身だ。
 都でも上位の、地方の者から見ればとてつもない豪商と呼べる大店で、兄、姉、姉、に続いて少々歳が離れて産まれた。
 物心付く頃には、姉達がそわそわと夢見ているように、いつかお嫁に行くものと自分でも思い過ごしていたが。大人の仲間入りをする直前頃から、自身の胸の事が気にかかって仕方なくなる。
 周りの少女達と比べて自分の胸は何だか大きい、というところから疑惑は始まった。無論、初めは大人である母や姉達と比べればまだ小さかったので、ちょっと成長が早いだけだと考えたが。すぐに初潮を迎え、一年ほど経つ頃には、家族の誰よりも大きくなっていた。
 晒しで押さえ込んだりしても服が着崩れそうになる大きさは、
「あら良いじゃない! 男は胸が大きい方が好きなんだから! 何処も嫁にくれって縁談話が舞い込むわよ!」
と、いう叔母の言葉で慰められるものではなかった。
 それに、シナには、その大きさを思い悩む事情が有る。
(どうしよう)
 彼女が自分でも持て余すような大きな胸以上に気にしていたのは、自身の乳輪の大きさだった。
 そして、それよりも気にしていたのは、胸の感度である。
(絶対…普通じゃない)
 身内の着替えを見かけた際に、自身の胸と乳輪が大きい事は理解した。
(胸ばかり触ってたからこんな風になったのよきっと)
 性的興奮を覚える事も、それを発散する事も、何一つタブー視はされていない。だが、彼女は自分が胸が気持ち好くてそこばかりいじっているから、乳房も乳輪も大きくなったのだと思い込んだ。
(性器でもない場所を触って気をやるなんてなんて…変態だと思われてしまう)
 結婚して、夫になった相手から、胸を見られて、もし変態だと罵られたら、きっと自分は死にたくなるのではないか。そう考えるとどうしても結婚へ踏み切れなくなっていった。
 やがて、彼女の元には叔母の言葉通り多くの縁談が舞い込んだ。
 彼女はその縁談話がとても嬉しかった。お嫁さんになる、という将来をただの一度も疑った事のない彼女にとって、自分を嫁に欲しいと言ってくれる相手が沢山いるというのは、本当に嬉しい事だったのだ。
 しかしながら、その喜びがあればこそ、反転する未来を思うと恐怖で何もできなくなった。
 そして、踏み切れないまま月日は過ぎ、気が付けば縁談話は失くなり、家の誰もシナの結婚に触れなくなる。幸いにも経済面で何の不安も無いことから、父母や兄は無理に嫁に出す必要は無いと考えてくれており、彼女が家に居続ける事を許してくれた。
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