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おまけ ※基本3人称
4.帰結 ※
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ルイはネクタイで視界を塞がれ、頭を固定された状態で口の中のペニスが誰のものかを当てろと言われ、必死に考えていた。当てればペニスの根元をキツく締め付けているリングと尿道を塞いでいるプラグを外してもらえるのだ。
とはいえ、ルイを取り囲んだ上級生達に当てさせる気はない。先程から、何人かが入れ代わっている。ルイもそれには気付いているが、少なくとも今中に入っている人物を当てれば、と考えているのだ。
笠は大きいが、竿の部分はそれほど太くない。喉奥を突くようにされれば、唇に陰毛が触れた。長さはルイの口いっぱい程という事だろう。荒々しく口の中を動く様から、もしかしたら、と一人に絞り込んだ。
交代するために引き抜かれたタイミングで、絞り込んだ上級生の名前を上げる。
「マジかよ当たったぜ」
「お前短いからなぁ」
「おいっ!」
「まぁ、何にせよ。当たったんだからご褒美やんねぇとな」
ルイは後から膝裏を持ち上げて抱き上げられた。体重を背中に預け、開かされている股間に意識を集中する。ようやく、リングを外してもらえると嬉しかったのだ。だから、ルイのペニスは期待に震えている。
「ほら、大好きなちんこだぜ。悦べよっ」
「ひぁっ!」
もっとも、リングもプラグも外される事は無かった。抱き上げられていた状態からぐっと落とされ、あまり解されていなかったアナルに熱を捻じ込まれて、ルイはぎっちりとそのペニスを締め付ける。
「あぁあ、いっくら大好きだからってそんな締めんなよ。食いちぎるつもりかって、ったく」
ビリビリとした粘膜を擦る痛みが、性感として認識されるルイは、唐突に加えられた刺激に達していた。だが、強制的に堰き止められているペニスは射精はできず。それでも体を襲う絶頂感から、中の熱をきゅうきゅうと締め上げたのだ。
「ひぃんっ!」
「ほら、痛ぇから力抜けって言ってんだよ」
絶頂感でどうしようもなくなっているルイからゆっくりとペニスが引き抜かれる。既に快楽の果てに居る状態でじりじりと刺激を加えられ続けて、僅かな動きの中から何度も刺激を拾い上げていた。
「あ、あぁん、やぁ、いぅ、いっく」
「いやぁ、イけないだろ」
「リングはともかくプラグも入ってるしなぁ」
イき続けながら悶えているルイの姿を見ながら、上級生達は自身のペニスを扱いていく。目隠しをされていても、自分の顔や体にかかる物が何なのか解るルイは首を振って何度も取って欲しいと訴えた。
「やぁっいき、たいっ、もっ、いきたいのぉ」
「しかたねぇな」
耳元で溜息が聞こえ、リングが外される。
「あんぅ…」
ぐっと背中を押され四つ這いにされた。もう一度深く捻じ込まれた熱が、引き抜かれるのと同時にプラグも抜かれる。悲鳴のような嬌声を上げて、ルイは失神した。
目を覚ますと、体は清められており、初めて風呂を貸してくれた上級生の部屋のベッドの上だと解る。
部屋はカーテンの布を通した光で、薄暗くも見える程度には明るい。身を起こして首を回し服を探すが、寝室の何処にも見当たらなかった。カーテンの向こうは昼のように明るいと思ったが、時計はまだ九時を少し過ぎたところだ。起こした上半身を再びベッドに横たえて、ルイは瞼を閉じる。
初めは、彼に抱かれるだけだった。
大浴場にも行ったが、同級生を避けようとするルイは何度か入りそびれ、そういう時に彼の元で風呂を借り、その対価として奉仕を繰り返したのだ。彼に抱かれたいがために風呂に入りそびれた振りをした事もあったが、それでも、週に二度あるかという頻度だった。
三ヶ月程経った頃だろうか、彼の部屋に行くと、見知らぬ上級生がもう一人居たのは。退き返そうとしたが、いつものように少々強引に風呂場へ押し込められた。戸惑いながらも体を洗っていると、見知らぬ上級生が入ってきて、彼の代わりに奉仕をするよう言われる。
その後も、何度かそんな事があった。彼以外の上級生は五人ほどだったろうか。不定期に彼の元へ行くと、二回に一度は違う誰かが居る事が続き、二ヶ月ほど経った頃、彼と彼以外の上級生二人に奉仕をするようになっていた。
複数での性交に抵抗の無いルイは、その事自体はあまり気にしなかったが、彼の態度だけは気になる。彼は、ルイではなく他の上級生の事を窺っているようだった。
ルイの中で、徐々に行為への忌避感が沸き、彼の元へ足が遠のきだす。
だが、頻度が減っていって二ヶ月。ルイの部屋に迎えが来るようになった。
風呂を借りるという名目が無くなり、気付けばルイの都合ではなく、相手の都合に合わせる事になる。時には、何故か、昼の校舎内で奉仕を頼まれる事もあり、朝から数人に抱かれるような事もあった。
そして、数日前からは、連日連夜複数人と性交を繰り返すようになっており、まともに授業を受けることも出来なくなっている。
まず朝起きる事が出来ず遅刻してしまい、その上、授業中も疲労感から居眠りを繰り返した。だが、授業に出ないと部屋にやって来る上級生の誰かと性交をする事になり、休めない。そのため、ふらつきながらも校舎に向かい、教室で椅子に座っていた。
(ここに居たら、眠れるかな)
誰も来ない事を祈りながら、ベッドの上で膝を抱えて丸くなる。
温かな優しいものを手に入れる手段だったはずなのに、近頃は優しく褒められるよりも、酷く扱われ罵るような言葉をかけられる事が増えた。
体が辛いと訴えても、行為を止めてもらえず。本気で嫌がっても道具を使って苛められる事さえあった。行動を制限されたりする事も、感覚を高めるためというより、ルイが嫌がる事を無理矢理させるためのように感じる。そもそもまともな学園生活が送れずにいるなど、害されている以外の何ものでもあるまい。
誰かと一緒に居るための、温かな優しさを手に入れるための、そのための手段だったはずなのに。
(なんで…僕、何か間違えたのかな)
瞼を閉じてしまえば、自然と眠気に引き込まれる。今はもうただ、眠りたかった。
電気を点けた寝室のベッドの上で、ルイのやつれた寝顔を見下ろして、彼はそろそろかと考える。ルイを、自分だけのものにするための我慢だ。でも、そろそろ良いかもしれない、と。
初めは、面白い玩具を見つけたつもりだった。だが、怯えた小動物のような話し方をしたのに、打って変わったような甘える抱かれ方をする。その落差に興味が湧いた。誰かと共有するのが嫌だと思うほどには強い執着で、何人かに回せと声を掛けられたが、しばらくは無視をする。そして、ふと、思ったのだ。ルイの体を、こんな抱かれ方を仕込んだのはどんな奴だろうかと。そこから、彼はルイの事を調べた。
そして、ルイを自分だけのものにする方法を考え付いたのだ。
ルイは、ふと意識が浮上した時。頭を撫でられているのが解った。優しい手つきに安堵して、そっと瞼を持ち上げる。
「起きたか」
彼が今までで見た事もないような優しい笑みを浮かべていた。
ルイは思わず笑みを返す。
「うん」
この笑みが、優しい手が、これが欲しいものだと思い出した。離れていこうとする手を掴んで、もう一度頭を撫でて欲しいと強請る。彼はルイの望み通り、優しく声を掛けながら頭を撫でてくれた。
しばらくして、体を洗おうと囁かれ、ルイは肩を竦ませる。だが、彼は大丈夫だと囁くだけだ。
「痛いか?」
風呂場で丁寧にアナルの様子を確認されているルイは真っ赤になりながらも首を縦に振った。
「ちゃんと、薬を塗るからな、大丈夫だぞ」
彼は、本当にいつもの彼なのだろうか。そんな疑問を抱くほど、優しい声と手つきだった。丁寧にルイの体を洗い、点々と残る擦過傷や打ち身にも手当を施してくれる。
その夜。ルイは彼の腕の中でその心臓の音を聞きながら眠った。体は怠く、関節が軋んで、ところどころ痛みもあったが、ルイの短い生涯で、最も温かで穏やかな入眠の瞬間だ。誰かの存在に自分の全てを預けるような安心感の中で、深く、深く眠りに落ちた。
翌日。目を覚ましてから、ルイの生活は一変する。
まともに授業に出られるように戻った。ただし、自分の部屋ではなく、彼の部屋から通い、彼の部屋に帰って来る毎日だが。
そして、彼以外とは触れ合わなくなった。性交はもとより、彼以外とはろくに言葉も交わさない日々だ。もっとも、同級生とは、初めから挨拶さえしない仲であったし、上級生は一方的にルイに声をかける事がほとんどだったので、あちらから話かけられなければ当然言葉を交わす事は無い。教師や職員などの大人とも、挨拶以外は交わさない、そんな状態だ。
湯船の中で後ろから抱き締められながら、ルイはうっとりと閉じていた瞼を開く。体を捻って後を向く。
「どうした?」
「何でもない」
そう答えながらも、手を伸ばして、体の向きを変えて抱きついた。ルイは今の自分が一番幸せだと考えている。たった一人の温かな腕と、優しい笑み、自分の存在を認めてくれる言葉。
彼の手が臀部に伸びて、お湯の中で左右に開くように掴まれる。ルイが慌ててお湯が入ると訴えれば、もう出ようと額にキスを落とされた。前までなら、きっと嫌がる様を面白がってお湯が入るようにされただろう。あるいは他の人間がそれをやり、彼は止めもしなかった。
だが、今は違う。その理由も、ルイはもう解っていた。
「ルイ、愛してる」
「僕も」
愛を告げる言葉と、柔らかなキス。丁寧で優しい愛撫の度に、ルイは彼の愛を理解する。複数の熱でもたらされる体への刺激を遥かに凌駕する満足感。たった一人、自分を愛してくれている人間と、自分が愛している人間と、交わる瞬間。
「あ、だめぇ」
指で泣き所を押しつぶされ、ルイは涙を浮かべて首を振った。
「痛かったか?」
そっと指を退かしながらかけられる彼の声に首を振り、伸ばされた手に頬を摺り寄せる。
「ちがうの、すぐ、いっちゃうから」
気持ちは良い。だが、すぐに何度も果ててしまうのが嫌だった。時間をかけて、ゆっくりと、彼の腕の中で抱かれていたいのだ。
「じゃあこっちだな」
くすりと揶揄うように笑っているが嫌な気持ちはしない笑みで、彼は指を引き抜いて、ルイのぷくりと膨れてしまっている乳首に触れる。
「あぁ…んぅ」
左右の乳首を口と手で交互に愛撫され、ルイは小さく喘ぎながら腰を振った。小さくも完全に立ち上がったペニスはその動きに合わせて腹の上に透明なカウパーを撒き散らす。
「れぇもう…おねぁい、なかぁさわってぇ」
自分の胸元にある彼の頭に向かって、ルイは呂律の回らない舌で必死に強請った。良いのか、と聞いてくる声に何度も肯き、足に力を入れて腰を浮かせて見せる。
「いいのぉ、ルイのなかぁいっぱぃあいしてぇ」
待ち望んだ熱が中をいっぱいに広げるだけで、仰け反りながら果てるルイは、笑みを浮かべる彼に向かって手を伸ばす幸福に溺れていた。
□fin
とはいえ、ルイを取り囲んだ上級生達に当てさせる気はない。先程から、何人かが入れ代わっている。ルイもそれには気付いているが、少なくとも今中に入っている人物を当てれば、と考えているのだ。
笠は大きいが、竿の部分はそれほど太くない。喉奥を突くようにされれば、唇に陰毛が触れた。長さはルイの口いっぱい程という事だろう。荒々しく口の中を動く様から、もしかしたら、と一人に絞り込んだ。
交代するために引き抜かれたタイミングで、絞り込んだ上級生の名前を上げる。
「マジかよ当たったぜ」
「お前短いからなぁ」
「おいっ!」
「まぁ、何にせよ。当たったんだからご褒美やんねぇとな」
ルイは後から膝裏を持ち上げて抱き上げられた。体重を背中に預け、開かされている股間に意識を集中する。ようやく、リングを外してもらえると嬉しかったのだ。だから、ルイのペニスは期待に震えている。
「ほら、大好きなちんこだぜ。悦べよっ」
「ひぁっ!」
もっとも、リングもプラグも外される事は無かった。抱き上げられていた状態からぐっと落とされ、あまり解されていなかったアナルに熱を捻じ込まれて、ルイはぎっちりとそのペニスを締め付ける。
「あぁあ、いっくら大好きだからってそんな締めんなよ。食いちぎるつもりかって、ったく」
ビリビリとした粘膜を擦る痛みが、性感として認識されるルイは、唐突に加えられた刺激に達していた。だが、強制的に堰き止められているペニスは射精はできず。それでも体を襲う絶頂感から、中の熱をきゅうきゅうと締め上げたのだ。
「ひぃんっ!」
「ほら、痛ぇから力抜けって言ってんだよ」
絶頂感でどうしようもなくなっているルイからゆっくりとペニスが引き抜かれる。既に快楽の果てに居る状態でじりじりと刺激を加えられ続けて、僅かな動きの中から何度も刺激を拾い上げていた。
「あ、あぁん、やぁ、いぅ、いっく」
「いやぁ、イけないだろ」
「リングはともかくプラグも入ってるしなぁ」
イき続けながら悶えているルイの姿を見ながら、上級生達は自身のペニスを扱いていく。目隠しをされていても、自分の顔や体にかかる物が何なのか解るルイは首を振って何度も取って欲しいと訴えた。
「やぁっいき、たいっ、もっ、いきたいのぉ」
「しかたねぇな」
耳元で溜息が聞こえ、リングが外される。
「あんぅ…」
ぐっと背中を押され四つ這いにされた。もう一度深く捻じ込まれた熱が、引き抜かれるのと同時にプラグも抜かれる。悲鳴のような嬌声を上げて、ルイは失神した。
目を覚ますと、体は清められており、初めて風呂を貸してくれた上級生の部屋のベッドの上だと解る。
部屋はカーテンの布を通した光で、薄暗くも見える程度には明るい。身を起こして首を回し服を探すが、寝室の何処にも見当たらなかった。カーテンの向こうは昼のように明るいと思ったが、時計はまだ九時を少し過ぎたところだ。起こした上半身を再びベッドに横たえて、ルイは瞼を閉じる。
初めは、彼に抱かれるだけだった。
大浴場にも行ったが、同級生を避けようとするルイは何度か入りそびれ、そういう時に彼の元で風呂を借り、その対価として奉仕を繰り返したのだ。彼に抱かれたいがために風呂に入りそびれた振りをした事もあったが、それでも、週に二度あるかという頻度だった。
三ヶ月程経った頃だろうか、彼の部屋に行くと、見知らぬ上級生がもう一人居たのは。退き返そうとしたが、いつものように少々強引に風呂場へ押し込められた。戸惑いながらも体を洗っていると、見知らぬ上級生が入ってきて、彼の代わりに奉仕をするよう言われる。
その後も、何度かそんな事があった。彼以外の上級生は五人ほどだったろうか。不定期に彼の元へ行くと、二回に一度は違う誰かが居る事が続き、二ヶ月ほど経った頃、彼と彼以外の上級生二人に奉仕をするようになっていた。
複数での性交に抵抗の無いルイは、その事自体はあまり気にしなかったが、彼の態度だけは気になる。彼は、ルイではなく他の上級生の事を窺っているようだった。
ルイの中で、徐々に行為への忌避感が沸き、彼の元へ足が遠のきだす。
だが、頻度が減っていって二ヶ月。ルイの部屋に迎えが来るようになった。
風呂を借りるという名目が無くなり、気付けばルイの都合ではなく、相手の都合に合わせる事になる。時には、何故か、昼の校舎内で奉仕を頼まれる事もあり、朝から数人に抱かれるような事もあった。
そして、数日前からは、連日連夜複数人と性交を繰り返すようになっており、まともに授業を受けることも出来なくなっている。
まず朝起きる事が出来ず遅刻してしまい、その上、授業中も疲労感から居眠りを繰り返した。だが、授業に出ないと部屋にやって来る上級生の誰かと性交をする事になり、休めない。そのため、ふらつきながらも校舎に向かい、教室で椅子に座っていた。
(ここに居たら、眠れるかな)
誰も来ない事を祈りながら、ベッドの上で膝を抱えて丸くなる。
温かな優しいものを手に入れる手段だったはずなのに、近頃は優しく褒められるよりも、酷く扱われ罵るような言葉をかけられる事が増えた。
体が辛いと訴えても、行為を止めてもらえず。本気で嫌がっても道具を使って苛められる事さえあった。行動を制限されたりする事も、感覚を高めるためというより、ルイが嫌がる事を無理矢理させるためのように感じる。そもそもまともな学園生活が送れずにいるなど、害されている以外の何ものでもあるまい。
誰かと一緒に居るための、温かな優しさを手に入れるための、そのための手段だったはずなのに。
(なんで…僕、何か間違えたのかな)
瞼を閉じてしまえば、自然と眠気に引き込まれる。今はもうただ、眠りたかった。
電気を点けた寝室のベッドの上で、ルイのやつれた寝顔を見下ろして、彼はそろそろかと考える。ルイを、自分だけのものにするための我慢だ。でも、そろそろ良いかもしれない、と。
初めは、面白い玩具を見つけたつもりだった。だが、怯えた小動物のような話し方をしたのに、打って変わったような甘える抱かれ方をする。その落差に興味が湧いた。誰かと共有するのが嫌だと思うほどには強い執着で、何人かに回せと声を掛けられたが、しばらくは無視をする。そして、ふと、思ったのだ。ルイの体を、こんな抱かれ方を仕込んだのはどんな奴だろうかと。そこから、彼はルイの事を調べた。
そして、ルイを自分だけのものにする方法を考え付いたのだ。
ルイは、ふと意識が浮上した時。頭を撫でられているのが解った。優しい手つきに安堵して、そっと瞼を持ち上げる。
「起きたか」
彼が今までで見た事もないような優しい笑みを浮かべていた。
ルイは思わず笑みを返す。
「うん」
この笑みが、優しい手が、これが欲しいものだと思い出した。離れていこうとする手を掴んで、もう一度頭を撫でて欲しいと強請る。彼はルイの望み通り、優しく声を掛けながら頭を撫でてくれた。
しばらくして、体を洗おうと囁かれ、ルイは肩を竦ませる。だが、彼は大丈夫だと囁くだけだ。
「痛いか?」
風呂場で丁寧にアナルの様子を確認されているルイは真っ赤になりながらも首を縦に振った。
「ちゃんと、薬を塗るからな、大丈夫だぞ」
彼は、本当にいつもの彼なのだろうか。そんな疑問を抱くほど、優しい声と手つきだった。丁寧にルイの体を洗い、点々と残る擦過傷や打ち身にも手当を施してくれる。
その夜。ルイは彼の腕の中でその心臓の音を聞きながら眠った。体は怠く、関節が軋んで、ところどころ痛みもあったが、ルイの短い生涯で、最も温かで穏やかな入眠の瞬間だ。誰かの存在に自分の全てを預けるような安心感の中で、深く、深く眠りに落ちた。
翌日。目を覚ましてから、ルイの生活は一変する。
まともに授業に出られるように戻った。ただし、自分の部屋ではなく、彼の部屋から通い、彼の部屋に帰って来る毎日だが。
そして、彼以外とは触れ合わなくなった。性交はもとより、彼以外とはろくに言葉も交わさない日々だ。もっとも、同級生とは、初めから挨拶さえしない仲であったし、上級生は一方的にルイに声をかける事がほとんどだったので、あちらから話かけられなければ当然言葉を交わす事は無い。教師や職員などの大人とも、挨拶以外は交わさない、そんな状態だ。
湯船の中で後ろから抱き締められながら、ルイはうっとりと閉じていた瞼を開く。体を捻って後を向く。
「どうした?」
「何でもない」
そう答えながらも、手を伸ばして、体の向きを変えて抱きついた。ルイは今の自分が一番幸せだと考えている。たった一人の温かな腕と、優しい笑み、自分の存在を認めてくれる言葉。
彼の手が臀部に伸びて、お湯の中で左右に開くように掴まれる。ルイが慌ててお湯が入ると訴えれば、もう出ようと額にキスを落とされた。前までなら、きっと嫌がる様を面白がってお湯が入るようにされただろう。あるいは他の人間がそれをやり、彼は止めもしなかった。
だが、今は違う。その理由も、ルイはもう解っていた。
「ルイ、愛してる」
「僕も」
愛を告げる言葉と、柔らかなキス。丁寧で優しい愛撫の度に、ルイは彼の愛を理解する。複数の熱でもたらされる体への刺激を遥かに凌駕する満足感。たった一人、自分を愛してくれている人間と、自分が愛している人間と、交わる瞬間。
「あ、だめぇ」
指で泣き所を押しつぶされ、ルイは涙を浮かべて首を振った。
「痛かったか?」
そっと指を退かしながらかけられる彼の声に首を振り、伸ばされた手に頬を摺り寄せる。
「ちがうの、すぐ、いっちゃうから」
気持ちは良い。だが、すぐに何度も果ててしまうのが嫌だった。時間をかけて、ゆっくりと、彼の腕の中で抱かれていたいのだ。
「じゃあこっちだな」
くすりと揶揄うように笑っているが嫌な気持ちはしない笑みで、彼は指を引き抜いて、ルイのぷくりと膨れてしまっている乳首に触れる。
「あぁ…んぅ」
左右の乳首を口と手で交互に愛撫され、ルイは小さく喘ぎながら腰を振った。小さくも完全に立ち上がったペニスはその動きに合わせて腹の上に透明なカウパーを撒き散らす。
「れぇもう…おねぁい、なかぁさわってぇ」
自分の胸元にある彼の頭に向かって、ルイは呂律の回らない舌で必死に強請った。良いのか、と聞いてくる声に何度も肯き、足に力を入れて腰を浮かせて見せる。
「いいのぉ、ルイのなかぁいっぱぃあいしてぇ」
待ち望んだ熱が中をいっぱいに広げるだけで、仰け反りながら果てるルイは、笑みを浮かべる彼に向かって手を伸ばす幸福に溺れていた。
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