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14.保健室へ

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 俺と二アさんは互いに視線で励ましあいつつ行動を開始した。
「ホォウッホォウッホォウォー!」
「キョウォオォー!」
 俺はニアさんと二人で、集めた小石を手に、藪をがさがさ言わせながらバラバラに移動を開始した。その際、この世界の貴族子弟がその生涯で出す事はおろか聞く事もないだろう声、猿叫を上げまくる。そして小石をなるべくグランに当たらないように注意しつつ兄ズに投げつけた。
「何だ…」
「何だよこれぇ…」
 俺達が懸命に藪を動かしたり、小石を投げたりしたのもあるだろうが、たぶん主に訳の解らない声のおかげで、兄ズは混乱の叫び声を上げながら逃げ出す。
「やったぁ!」
「まさかの成功!」
「!」
 俺とニアさんが藪から立ち上がると、驚きに目を見開いたグランと目が合った。俺は慌ててグランの服を拾い渡すと、あっち向いてるから、とめっちゃ見ようとしているニアさんの肩を掴んで背を向ける。
「ニアさん。ここはさすがに自重しましょう」
「うぅ解ってる解ってるよぅ…ていうか、もうほいほいシナリオ書くの怖くなってきちゃったよ」
「大丈夫です。そんなことありません。作者が悪いんじゃない。悪い奴が悪いんです。ニアさんは悪くない」
「うぅルイ君が優しい。もう本当にルイ君がルイ君で良かったよぉ」
 そんな話をしていると、背後からあまりに控えめで一瞬聞き逃すくらいの小さな声がかかった。
 俺達が振り向くと、全体にくたっとしたグランが立っている。
「とりあえず。保健室に行こう。この学校は保健室にシャワールームがあるから」
「そうしましょう」
「あと、はい」
「うわぁっ」
 ニアさんに突然頭から砂をかけられた。呆然とする俺に、楽しそうに笑って、グラン一人じゃ事情説明が大変でしょ、一緒に転んだって事にしようと言う。
「なるほど」
「ぶふっ」
 俺もニアさんに砂をかけた。
「男女混じってる方が喧嘩っぽさも薄れてより信憑性が増しますよ」
「ふふ、ルイ君やるじゃないか」
 俺達がそんなくだらない事を言っている間も呆然としていたグランの手を両側から掴んで、じゃあ保健室行こうと連れて行く。
 あ、ちなみに俺も二アさんも鹿児島の出身とかではないし、二人がやった猿叫はあくまで猿の鳴き真似という意味で、なんというか、アマゾン奥地で不気味に響く声、がテーマです。悪しからず。
 少し怯えた様子のグランにもちょっと猿の真似をしただけだよとか説明してたら、俺達は保健室にたどり着く。
 黒髪に青い目をした保健室の先生は、白衣に眼鏡の好青年だった。
 転んだという俺達を特に問い詰めたりする事無く招き入れ、男女別のシャワールームへ案内してくれる。そこは、トイレの個室のような上と下に空きがあるタイプのシャワー室だった。一区切り毎にシャワーと石鹸が置かれている。着替えは用意しておくからしっかり汚れを落としておいで、といわれ、俺はいそいそと砂利を洗い落とした。
 ざっと洗ったところで、隣の様子を伺うと、シャワー音が響いている。
「俺、先出てるから」
 壁をこつこつと叩いてそう告げてから、タオルで体を拭いて、用意されていた綺麗な制服を着た。
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