そうだ、壁になりたい ~ ゲーム世界に転生した俺 ~

nionea

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7.今後

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 一連を確認してから、そろそろと階下に戻ってきた俺達は、俺、もといルイに遭うイベントをこなす必要がないので、出ていこうかどうしようか思い悩んでいた。
 もう一人のキャラ、アクスに遭うのはあくまで図書館前の廊下なので、さっさと出て行ってそこで立ち尽くしていても問題はない。まぁ、テンション上がったオタクが声を抑えて会話できるのか、遠目から見てもにやにやしていると解るだろう欲望丸出しな顔が隠せるのか、という問題はあるんだが。
 とはいえ、もう正直俺のモヤモヤが抑えられそうにないのでさっさと外に出てニアさんを問い詰める事にする。
 彼女を引っ張るように、イースに笑顔で会釈をしてから図書館を出ると、まさかのタイミングでちょうどアクスが現れた。
「こんにちは」
 ちょっと軟派なキャラのアクスはその緑の目で俺達を見てにこっと笑って挨拶してくる。
 俺はタイミング的にうまく言葉が出てこなかったので会釈を返しただけだが、ニアさんは俺の横でにっこり笑ってこんにちはって言ってた。自作ゲームソフトを即売会で販売した経験のある人は対応力が違うぜ。
 彼が図書館に入っていくのを横目で見届けて、俺達は足早に人気の無い方に向けて歩いていく。
「金混じりの茶髪って、イラストじゃあメッシュ的な表現だったけど…現実になるとああなんですね」
「思った! いやぁ、ああいうの見るとイラスト描く人って本当に大変だなって思う。キャラ作る時に結構適当に容姿の項目埋めてもびっくりするくらいドンピシャなイラスト描いてくれてた相方にマジ感謝だわ」
「俺も恋ロマはイラスト担当さんから知った口なんで、出会わせてくれて感謝感謝っすわ」
 ニアさんがイラストは丸投げ系な人で相方さんと仲良しだった話などを楽しく聞き、うっかり図書館から出てきたアクスに間違っても声が届かないように、十分な距離がとれたと判断できる所まで来た。
 俺はガシッとニアさんの肩を掴む。
「さぁ、ニアさん盛大なネタバレを。お願いしますよ。ホントに!」
「はっはっはぁそこまで言われちゃ仕方がないなぁ」
 彼女は最近その動作見ねぇな、という、鼻を拳作った手首でくいってやる、なんだろう、あの、寿司職人ってか板前ってか、時代劇の中で江戸前職人さんがやる感じの動作、をした。
「まぁ、別に大したことはないんだけど。イースのあの性癖を解ってて、わざとエッチな本を寄贈してくる奴が居る訳ですよ。しかも、お前の秘密を知ってるぞ的な脅迫文を本に挟んでくるのさ」
「っそれは、だんだん要求がエスカレートしてくるアレですな」
「ソレですよ。そしてゆくゆくはあんなことやそんなことを…あぁこれは流石に言えないっ!」
「いやいやそこまで言っといてそんなお願いしますよ」
「いやいやいや」
「いやいやいやいや」
 俺達はうっとうしいって位いやいや言いながら抑えきれないにやけ顔で寮へ向かうことにした。
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