十魔王

nionea

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萬魔の王

4.

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 ナークは目の前で微笑んでいる一歳ほどの幼女に、満面の笑みを返した。
「ぱぁぱ」
 舌足らずに自分を呼ぶ幼女の頭を撫で、手を伸ばして求められるままに乳首を含ませる。幼女がぷっくりと肥大化した彼の乳首を懸命に吸う様を見て、彼はうっとりとした表情を浮かべた。
「っぷぁ」
 満足した幼女が口を離すと、赤くなった彼の乳首の先からは白い乳が滲み落ちる。
「サーラ」
 食事を終えても甘えるように自分の胸に擦り付いてくる幼女の名を呼んで、彼は愛おしそうにその頭を抱いた。
 彼が苦しみながら産卵したあの日から、まだ三日しか経っていない。
 サーラは最後に彼の中から産まれた、ピンク色の繭のような卵から孵った。
 彼が、腹を膨らませていた頃のように、寝たり起きたりを繰り返す夢現のぼんやりとした時を過ごした産卵から一日目。
 その胸の上で、まだ蛞蝓に似たものだったサーラは必死に彼の乳を吸った。
 はじめは全く反応が無かった彼の乳首は、次第に膨らみ、じわりと乳管から乳を滲ませるようになる。
 そして、その乳を含んでしばらくすると、サーラは人の形へ変わっていったのだ。
 二日目。
 彼はぼうっとしながらも、はっきりと目を覚ましているという自覚の中で、自分の側でもそもそと這うような動きをする幼女に気が付いた。目が合うとはっきり笑顔を浮かべた幼女に、愛おしさが込み上げ、微笑み返して抱き上げる。
「ぱぁぱ」
 そう呼びかけられれば、すんなりとその幼女が自分の娘だと信じられた。
「サーラ…サーラが良い」
 自分を呼ぶ幼女にサーラと名を付け、求められ戸惑いを覚えつつもじんと腫れたように感じる乳首を含ませる。吸われると、確かに何かが出ていた。そんな自分の状態をおかしいと思うよりも、サーラの望みに応えられた事を喜ばしく思いながら、彼はそっとサーラの頭を撫でるのだ。
 三日目。
 たった一日で一回り大きくなったようなサーラに違和感を覚えることもなく。彼は相変わらずサーラを愛おしそうに見つめていた。
 満腹になり、ひとしきり甘えて満足もしたのだろう。サーラは寝台の上で、彼の周りを這ったり、立ったり、転げたりしている。
「にゃっ!」
 大きな音と共に部屋の扉が開き、サーラは猫の鳴き声のような叫び声をあげて彼に縋り付いた。
 彼は震えるサーラを抱き寄せ、ぽかんとした顔で出入り口を見つめる。
 普段は死人のように顔色の悪い老婆は、どういう感情なのか顔をほの赤くして拳を震わせながら立っていた。その上、見る間に真っ赤になっていく。震えもまるで痙攣のように大きくなっていった。
 彼は尋常でない老婆の反応に、恐ろしさが湧き、サーラを隠すように抱き直す。
 老婆は前に一歩踏み込んだが、すぐに後ろを振り返り、慌てて部屋を出た。
 彼が、老婆が出て行った事に安堵したのも束の間、すぐに部屋に彼を犯した男が入ってくる。
「ひっ!」
 もっとも、彼には自分が産卵する原因となった男の記憶はない。だが、その明らかに人間とは思えない姿に怯えたのだ。
「ぱぁぱ?」
 彼の腕の中で、サーラは不思議そうに彼を呼ぶ。
 サーラのその声を聞いて、彼ではなく男が反応した。飛ぶような勢いで寝台に近付き、咄嗟の事に反応できずにいた彼の左手首を掴んでサーラから引き剥がす。
「っ!」
 彼は右手で必死にサーラを隠そうとするが、適わない。
 サーラはきょとんとした顔で男を見上げ、にこりと微笑んだ。
「ちちーえ」
 男に向かって、父上、と呼びかけたと思われるサーラに、呆然と彼は声をかける。
「…サーラ?」
「ぱぁぱ、ちちえ」
 問いかけるような彼の声に、嬉しそうなサーラの声が続いた。彼が言葉を飲み込めずにいると、掴まれていた左手首が軋むような痛みを訴える。
「いっ…」
 掴まれている手を振り払おうとするが力が違い過ぎてびくともしなかった。
「名を付けたのか!」
 その怒鳴り声に、サーラはびくりと身を竦ませるだけだったが、彼はビクッと体を強ばらせたかと思うと、ぐったりと気絶してしまう。
「ぱぁぱ、ぱぁぱ! ぱぁぱっ!」
 驚いたサーラが叫ぶように声を上げ、その体に縋るが、彼は気が付かない。
 男は気絶したナークに舌打ちをして、手を放すと、縋るサーラを抱き上げる。
「やー! ぱぁぱ!」
 サーラは懸命に体を捩ったり、男の手を叩いたりして、自分を抱き上げた手を振りほどこうとするが、適わなかった。そのままナークから引き離され、部屋から連れ出される。
「次はないぞ」
 男は、廊下で今度は顔を青くして震えていた老婆に、冷たい声でそれだけ告げた。
「はっ!」
 深々と頭を下げた老婆は、短く返事をすると震えを押さえ込むように己の手を握り締める。
「やーなの、やーっ! ぱぁぱ、ぱぁぱ、ぱぁぱぁっ!」
 必死にナークを呼ぶサーラの叫びが廊下に木霊す中。遠ざかる男の姿が廊下の角に消えると、老婆は意を決したように室内に入り、気絶したままのナークへ近付いていった。
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