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73 ピラミッド再探索 3
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左半分を調べながら進む。壁にも床にも変わったところは見つからず、迷路の地図が埋まっていく。前方に丁字路が現れメアリーアンが呟いた。
「やはり、このフロアの大きさは予想通りだったわ」
丁字路で左右を見ると奥の方まで真っ直ぐに続いている。
つまり目の前の丁字路を右に曲がればさっきいた右半分の場所の壁の向こうということか? そこまで道が壁で遮られていなければ隠し部屋はないのだろう。
「どっちから行く?」
エリザベスがメアリーアンの顔を見る。
「右は最後にしましょう。左からで」
オッチャンに意見は求められない。こういう時は頭脳労働担当のメアリーアンが決めるのが良いのだ。どうして右を最後にするのかは、オッチャンには分からないが、メアリーアンには深い理由があるに違いないーーと思いたい。
左を調べたがなのも見つからず、さっきの丁字路まで戻って顔を見合わせる。
一歩ずつ調べながら前に進む。何も見つからず最後の壁を前にした。
「どうや? この向こうにスペースはあるんかい?」
メアリーアンが難しい顔をして自分が作った地図を見ている。
「ふー」
大きくため息を吐くメアリーアン。
「こっちがさっきいたところで間違いないわ」
左の壁を指差し苦笑する。
「そうか。このフロアにも隠し部屋はなかったか」
エリザベスも肩を落とす。
なんや気合いが抜けたでー。
隠し部屋を見つけることはできずに六番目のフロアへと上がりそこも調べ尽くす。
メアリーアンが作った地図を確認しながら隠し部屋のありそうなスペースがないことを確認し、後は棺のフロアの調査だけだ。棺のフロアは、棺のある部屋がかなり広くスペースを取っているし、それ以外にも宝部屋もあった。残ったスペースは意外と狭い。調べる余地はあと僅かということだ。
どうやら予想通り隠し部屋はなさそうだと気落ちするオッチャン。メアリーアンとエリザベスは別に想定通りだとすまし顔だ。この差が経験の差というやつやろうか。
残ったスペースに調査を終えて、結局隠し部屋は見つからなかった。無駄骨かいなーこれじゃあ、ゴードンと銀次の送り迎えをしに来たようやで。魔法の本を持って魔法の練習でもしようかなー。
棺の部屋に戻るとゴードンと銀次が棺に食い付いて何やら中身の調査記録をしている。ゴードンが中身を調べ、銀次がゴードンの言うことを記録する係だ。
メアリーアンが二人に話しかけた。
「私たちの調査は終わりました」
銀次が振り返りメガネを指でクイっと上げる。
「我々の仕事ももう少しで終わりますよ。今晩は此処でもう一泊して、明日地上を目指しましょう。その時はこの棺をマジックバッグに収納してくださいね」
「分かりました。明日マジックバッグに収納して外に出るんですね。その後は文化局に持ち込むのでしょう?」
「そう言う流れです。よろしくお願いします」
「分かりました。大丈夫です。私たちも報告に行きたいですし、問題ありません」
メアリーアンが笑顔で答える。
俺は本を貸してもらい魔法の練習に勤しむ。部屋の隅ーー端っこの壁に魔法をぶつけた。始めの方は本を持っていなくても発動できる魔法ばかりだが、インテリジェントソードを持っていないと発動できないのが残念だった。どうやら魔法を覚えたのはインテリジェントソードなのかもしれない。
かなり強力な魔法も使えそうだが、この場で使うのは危険すぎるため、初級魔法程度しか試せない。それでもインテリジェントソードがコツを掴んだらしく任せろと太鼓判を押す。俺はインテリジェントソードの言葉を信じるだけや。
* * *
翌日、メアリーアンが棺を収納して回った。 俺は本を返してインテリジェントソードに確認する。
「あの本があれば相当強力な魔法が使えるんやな?」
「そうだ。だが無くてもかなりの魔法を使えるぞ。お前の魔力量次第だがな」
インテリジェントソードと俺だけの会話なので他の四人には聞こえていない。四人にはオッチャンがアホな顔でポーッとしているように見えるんやろうな。
「魔力量ってーーオッチャンどれくらいのものなの? やっぱり少ないよね」
優れたものなど何も無いこの俺、魔力量だって人並み以下に違いない。
「人並み以下だが、使えば増えるからそれは気にする必要はないぞ」
やっぱりや…………人並み以上なものなどオッチャン何も持ってない。分かっていたことやでー。
「はは! 使えば増えるものなんや? ほんならボチボチ使うようにすれば良いんやな」
どうりでしょぼい威力の魔法しかできへん訳や。昨日の練習で、すごすぎる魔法を撃ったらどうしよう。壁が壊れる。ーーなんて心配して損したで。
俺がインテリジェントソードと話しているうちにメアリーアンは全ての棺を収納し終えた。
「後は帰るだけですね」
「そうですね」
メアリーアンの言葉に、銀次が同意する。
「ちょっと待ってくれ!」
エリザベスが二人を呼び止める。エリザベスの表情がいつもと違って真剣だ。オッチャンにもそれは一目瞭然だった。メアリーアンとゴードン、銀次も眉根を寄せる。
「どうかしたのですか? エリザベスさん」
ゴードンがエリザベスに近寄りながら彼女の視線に目を落とす。そこは王の棺があった場所だ。棺が取り払われて、今までチェックされていなかった床が見えるようになったのだ。エリザベスはしゃがみ込んでその床を調べている。
ゴードンがエリザベスの横に立ちエリザベスの手もとに顔を近づける。
「もしかしてーー」
「ーー多分そうだよ」
エリザベスは顔を上げてゴードンに返事をした。ゴードンの後ろにはメアリーと銀次が移動している。
「もしかしてーー」
「隠し部屋……ですか?」
銀次の言葉に驚いたのはオッチャンだけだった。
「隠し部屋だって!」
俺は急いだ皆んなのところに駆け寄る。エリザベスは黙々と床を調べていた。
「やはり、このフロアの大きさは予想通りだったわ」
丁字路で左右を見ると奥の方まで真っ直ぐに続いている。
つまり目の前の丁字路を右に曲がればさっきいた右半分の場所の壁の向こうということか? そこまで道が壁で遮られていなければ隠し部屋はないのだろう。
「どっちから行く?」
エリザベスがメアリーアンの顔を見る。
「右は最後にしましょう。左からで」
オッチャンに意見は求められない。こういう時は頭脳労働担当のメアリーアンが決めるのが良いのだ。どうして右を最後にするのかは、オッチャンには分からないが、メアリーアンには深い理由があるに違いないーーと思いたい。
左を調べたがなのも見つからず、さっきの丁字路まで戻って顔を見合わせる。
一歩ずつ調べながら前に進む。何も見つからず最後の壁を前にした。
「どうや? この向こうにスペースはあるんかい?」
メアリーアンが難しい顔をして自分が作った地図を見ている。
「ふー」
大きくため息を吐くメアリーアン。
「こっちがさっきいたところで間違いないわ」
左の壁を指差し苦笑する。
「そうか。このフロアにも隠し部屋はなかったか」
エリザベスも肩を落とす。
なんや気合いが抜けたでー。
隠し部屋を見つけることはできずに六番目のフロアへと上がりそこも調べ尽くす。
メアリーアンが作った地図を確認しながら隠し部屋のありそうなスペースがないことを確認し、後は棺のフロアの調査だけだ。棺のフロアは、棺のある部屋がかなり広くスペースを取っているし、それ以外にも宝部屋もあった。残ったスペースは意外と狭い。調べる余地はあと僅かということだ。
どうやら予想通り隠し部屋はなさそうだと気落ちするオッチャン。メアリーアンとエリザベスは別に想定通りだとすまし顔だ。この差が経験の差というやつやろうか。
残ったスペースに調査を終えて、結局隠し部屋は見つからなかった。無駄骨かいなーこれじゃあ、ゴードンと銀次の送り迎えをしに来たようやで。魔法の本を持って魔法の練習でもしようかなー。
棺の部屋に戻るとゴードンと銀次が棺に食い付いて何やら中身の調査記録をしている。ゴードンが中身を調べ、銀次がゴードンの言うことを記録する係だ。
メアリーアンが二人に話しかけた。
「私たちの調査は終わりました」
銀次が振り返りメガネを指でクイっと上げる。
「我々の仕事ももう少しで終わりますよ。今晩は此処でもう一泊して、明日地上を目指しましょう。その時はこの棺をマジックバッグに収納してくださいね」
「分かりました。明日マジックバッグに収納して外に出るんですね。その後は文化局に持ち込むのでしょう?」
「そう言う流れです。よろしくお願いします」
「分かりました。大丈夫です。私たちも報告に行きたいですし、問題ありません」
メアリーアンが笑顔で答える。
俺は本を貸してもらい魔法の練習に勤しむ。部屋の隅ーー端っこの壁に魔法をぶつけた。始めの方は本を持っていなくても発動できる魔法ばかりだが、インテリジェントソードを持っていないと発動できないのが残念だった。どうやら魔法を覚えたのはインテリジェントソードなのかもしれない。
かなり強力な魔法も使えそうだが、この場で使うのは危険すぎるため、初級魔法程度しか試せない。それでもインテリジェントソードがコツを掴んだらしく任せろと太鼓判を押す。俺はインテリジェントソードの言葉を信じるだけや。
* * *
翌日、メアリーアンが棺を収納して回った。 俺は本を返してインテリジェントソードに確認する。
「あの本があれば相当強力な魔法が使えるんやな?」
「そうだ。だが無くてもかなりの魔法を使えるぞ。お前の魔力量次第だがな」
インテリジェントソードと俺だけの会話なので他の四人には聞こえていない。四人にはオッチャンがアホな顔でポーッとしているように見えるんやろうな。
「魔力量ってーーオッチャンどれくらいのものなの? やっぱり少ないよね」
優れたものなど何も無いこの俺、魔力量だって人並み以下に違いない。
「人並み以下だが、使えば増えるからそれは気にする必要はないぞ」
やっぱりや…………人並み以上なものなどオッチャン何も持ってない。分かっていたことやでー。
「はは! 使えば増えるものなんや? ほんならボチボチ使うようにすれば良いんやな」
どうりでしょぼい威力の魔法しかできへん訳や。昨日の練習で、すごすぎる魔法を撃ったらどうしよう。壁が壊れる。ーーなんて心配して損したで。
俺がインテリジェントソードと話しているうちにメアリーアンは全ての棺を収納し終えた。
「後は帰るだけですね」
「そうですね」
メアリーアンの言葉に、銀次が同意する。
「ちょっと待ってくれ!」
エリザベスが二人を呼び止める。エリザベスの表情がいつもと違って真剣だ。オッチャンにもそれは一目瞭然だった。メアリーアンとゴードン、銀次も眉根を寄せる。
「どうかしたのですか? エリザベスさん」
ゴードンがエリザベスに近寄りながら彼女の視線に目を落とす。そこは王の棺があった場所だ。棺が取り払われて、今までチェックされていなかった床が見えるようになったのだ。エリザベスはしゃがみ込んでその床を調べている。
ゴードンがエリザベスの横に立ちエリザベスの手もとに顔を近づける。
「もしかしてーー」
「ーー多分そうだよ」
エリザベスは顔を上げてゴードンに返事をした。ゴードンの後ろにはメアリーと銀次が移動している。
「もしかしてーー」
「隠し部屋……ですか?」
銀次の言葉に驚いたのはオッチャンだけだった。
「隠し部屋だって!」
俺は急いだ皆んなのところに駆け寄る。エリザベスは黙々と床を調べていた。
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