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67 剣真流道場にて1
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剣真流道場、俺は次の探索の合間に剣の稽古をつけてもらいに来ている。インテリジェントソードを持っていれば、達人級の戦闘力だが、他の剣を持ったらど素人の腕前だ。少しはそのギャップを埋めておきたいと感じているし、少しは本当の実力を身に付けたい。
いつものように道場の剣で素振りをさせられている状態だ。
フュン! フュン! フユン!
ビュン! ビュン! ビュン!
隣で剣を振る師範ガルドの剣の音とオッチャンの音では明らかに重さが違っている。きっと威力も相当違うんやろうなあー。
フュン! フュン! フュン!
「千回終わったら、受け流しからの上段斬りを左右千回づつだぞ」
「はい」
ガルド師範の指示通り、俺はただの上段斬りから受け流しからの上段斬りの素振りに移る。
「ちゃんと受け流せていないと死ぬんだぞ!これじゃあここが斬られちまう」
ガルドがオッチャンの剣の位置を修正する。
「はい!」
俺は直された剣の位置を心に刻む。
ガルド師範が正面に立ったと思うとその剣を叩きつける。頭から肩を守るように構えられた俺の剣にぶつかり、滑るように受け流されたガルドの剣が俺のすぐ横を通り過ぎ床の寸前でビシッと止められる。そして次の瞬間、頭上に握られた柄を動かすと剣先が回り込むような軌道を描いて上段から振り下ろされ、剣身が師範の頭上で寸止められた。
「そうだ。それで良い。続けろ!」
右、左と交互にこの型を繰り返す。
敵が放った全力上段斬りを己の傍に受け流し、相手の剣が戻る間の隙をついて上段斬りを入れる技ーー受け流しからの上段斬り。刃先と刃先が食い込まないように、剣の腹を滑らせるように受け流すーー剣の向く角度も注意を払って敵の剣撃を受けなければ、その剣は滑っていかない。構えが悪ければ己の体に敵の剣が届く。上手く剣を滑らせれば敵の剣は勢い余って地を打ちつける事もある。それは大きなチャンスになるのだ。
今までただただ剣を振っていたが、やっと意味が分かったような気がしている今日この頃の俺である。剣を受け止めないで受け流すんやね! それが難しいんや。
右千回左千回の素振りを終えて一休みする。
「タケオ、大分良くなってきたぞ。今までは上段からの切り落とし、まあ、真向斬りとか唐竹割りとも呼ばれる切り方の訓練をしてきた。これからはさまざままな剣の振り方を身につけていくぞ」
おお! なんだか色々教えてもらえそうだ。やったでーーオッチャンやっと素振りから先に進めそうや。
「剣の振り方は大きく分ければ八つ。今までやってきた真向斬り、袈裟斬り、逆袈裟、左袈裟、逆左袈裟、一文字斬り、左一文字、刺突だ。やって見せるからよく見て覚えろ」
「はい!」
オッチャンの背筋がピンと伸びる。やったるでーー。
ガルドが剣をふってみせる。
「唐竹!」
大上段からけんを振り下ろす。今までやってきたふりかたや。
「袈裟斬り!」
右上から斜めに切り下げる。
「逆袈裟!」
右下から斜めに切り上げる。
「左袈裟!」
左上から斜めに斬り下ろす。
「左逆袈裟!」
左下から斜めに切り上げる。
「一文字!」
右脇から真横に剣を薙ぐ。
「左一文字!」
左脇から横に薙ぐ。
「刺突!」
両手で正眼に構えて体と共に腕を伸ばして剣を突き出す。
ガルドが八つの基本斬撃を実演してみせた。そのどれもがかっこよく決まっていて、俺にはとても真似できないものやった。さすがや!
「これが基本の八つの剣捌きだ。これからはそれぞれ五百回ずつ素振りをする事にするぞ!」
あー、やっぱり素振りやったん! これからは四千回の素振りなのね…………。
「はい……」
気落ちしている俺を見てガルドが鼻で笑うような顔になる。
「一度戦場に赴けば、一日中剣を振らねば命を落とすこともある。たった四千回でめげてるんじゃないぞ。一万回くらい毎日振るようにならねばな」
「はいー」
オッチャン余計めげたがな…………。
「素振りを始める前に今日は試し切りをして終わりにしよう。」
ガルドが試し切り用の丸太を運んでくる。そして唐竹用に横に寝かせて台に固定する。
「でやー!」
気合の入ったガルドの上段斬りが丸太を一刀両断した。オオー! お見事。
やってみろと言いながらガルドは丸太をつけ替える。
「剣の向きがきちんとしていないと切れないぞ。少しでも斜めなら剣は切れずに弾け飛ぶ」
なるほど…………俺は緊張と共に大きく息を吐く。
「ふー」
剣を大上段に振り被り丸太を睨む。
「テリャー!」
振り下ろした剣は丸太を一刀両断した。やったで…………できた。
「うむ。素振りの成果がでたようだな。正しい素振りができていた証拠だ」
ガルドは嬉しそうに微笑んでいる。そして次の瞬間真顔になる。
「では次は袈裟懸けだ」
次の丸太をセットして、ガルドが右上段に剣を構える。
「テリャー!」
右上から左下に振り下ろされた剣は、見事に丸太を切断した。凄い。
ガルドが俺を見て促す。
「やってみろ。剣の向きと振られる方向が正しく一致していないと剣が弾き飛ばされるから気おつけろよ」
「はい!」
俺は気を引き締めて返事をした。右上段に剣を構える。
「だー!」
ガキーン
俺の振った剣は丸太に食い込むこともなく弾かれ両の手に痺れが伝わる。痛ってー! 剣を落として手をヒラヒラさせる。
「ハハハハハ! 初めてでは、そんなところだろう。剣の刃の向きが真っ直ぐ入っていないのさ。それを意識しながら素振りをするんだぞ。剣の腹では切れないように、刃先が真っ直ぐ入らなければ剣は切れない」
ガルド師範が剣をゆっくり動かしながら違いを説明してくれた。
なるほど…………素振りは大切だと実感した。
いつものように道場の剣で素振りをさせられている状態だ。
フュン! フュン! フユン!
ビュン! ビュン! ビュン!
隣で剣を振る師範ガルドの剣の音とオッチャンの音では明らかに重さが違っている。きっと威力も相当違うんやろうなあー。
フュン! フュン! フュン!
「千回終わったら、受け流しからの上段斬りを左右千回づつだぞ」
「はい」
ガルド師範の指示通り、俺はただの上段斬りから受け流しからの上段斬りの素振りに移る。
「ちゃんと受け流せていないと死ぬんだぞ!これじゃあここが斬られちまう」
ガルドがオッチャンの剣の位置を修正する。
「はい!」
俺は直された剣の位置を心に刻む。
ガルド師範が正面に立ったと思うとその剣を叩きつける。頭から肩を守るように構えられた俺の剣にぶつかり、滑るように受け流されたガルドの剣が俺のすぐ横を通り過ぎ床の寸前でビシッと止められる。そして次の瞬間、頭上に握られた柄を動かすと剣先が回り込むような軌道を描いて上段から振り下ろされ、剣身が師範の頭上で寸止められた。
「そうだ。それで良い。続けろ!」
右、左と交互にこの型を繰り返す。
敵が放った全力上段斬りを己の傍に受け流し、相手の剣が戻る間の隙をついて上段斬りを入れる技ーー受け流しからの上段斬り。刃先と刃先が食い込まないように、剣の腹を滑らせるように受け流すーー剣の向く角度も注意を払って敵の剣撃を受けなければ、その剣は滑っていかない。構えが悪ければ己の体に敵の剣が届く。上手く剣を滑らせれば敵の剣は勢い余って地を打ちつける事もある。それは大きなチャンスになるのだ。
今までただただ剣を振っていたが、やっと意味が分かったような気がしている今日この頃の俺である。剣を受け止めないで受け流すんやね! それが難しいんや。
右千回左千回の素振りを終えて一休みする。
「タケオ、大分良くなってきたぞ。今までは上段からの切り落とし、まあ、真向斬りとか唐竹割りとも呼ばれる切り方の訓練をしてきた。これからはさまざままな剣の振り方を身につけていくぞ」
おお! なんだか色々教えてもらえそうだ。やったでーーオッチャンやっと素振りから先に進めそうや。
「剣の振り方は大きく分ければ八つ。今までやってきた真向斬り、袈裟斬り、逆袈裟、左袈裟、逆左袈裟、一文字斬り、左一文字、刺突だ。やって見せるからよく見て覚えろ」
「はい!」
オッチャンの背筋がピンと伸びる。やったるでーー。
ガルドが剣をふってみせる。
「唐竹!」
大上段からけんを振り下ろす。今までやってきたふりかたや。
「袈裟斬り!」
右上から斜めに切り下げる。
「逆袈裟!」
右下から斜めに切り上げる。
「左袈裟!」
左上から斜めに斬り下ろす。
「左逆袈裟!」
左下から斜めに切り上げる。
「一文字!」
右脇から真横に剣を薙ぐ。
「左一文字!」
左脇から横に薙ぐ。
「刺突!」
両手で正眼に構えて体と共に腕を伸ばして剣を突き出す。
ガルドが八つの基本斬撃を実演してみせた。そのどれもがかっこよく決まっていて、俺にはとても真似できないものやった。さすがや!
「これが基本の八つの剣捌きだ。これからはそれぞれ五百回ずつ素振りをする事にするぞ!」
あー、やっぱり素振りやったん! これからは四千回の素振りなのね…………。
「はい……」
気落ちしている俺を見てガルドが鼻で笑うような顔になる。
「一度戦場に赴けば、一日中剣を振らねば命を落とすこともある。たった四千回でめげてるんじゃないぞ。一万回くらい毎日振るようにならねばな」
「はいー」
オッチャン余計めげたがな…………。
「素振りを始める前に今日は試し切りをして終わりにしよう。」
ガルドが試し切り用の丸太を運んでくる。そして唐竹用に横に寝かせて台に固定する。
「でやー!」
気合の入ったガルドの上段斬りが丸太を一刀両断した。オオー! お見事。
やってみろと言いながらガルドは丸太をつけ替える。
「剣の向きがきちんとしていないと切れないぞ。少しでも斜めなら剣は切れずに弾け飛ぶ」
なるほど…………俺は緊張と共に大きく息を吐く。
「ふー」
剣を大上段に振り被り丸太を睨む。
「テリャー!」
振り下ろした剣は丸太を一刀両断した。やったで…………できた。
「うむ。素振りの成果がでたようだな。正しい素振りができていた証拠だ」
ガルドは嬉しそうに微笑んでいる。そして次の瞬間真顔になる。
「では次は袈裟懸けだ」
次の丸太をセットして、ガルドが右上段に剣を構える。
「テリャー!」
右上から左下に振り下ろされた剣は、見事に丸太を切断した。凄い。
ガルドが俺を見て促す。
「やってみろ。剣の向きと振られる方向が正しく一致していないと剣が弾き飛ばされるから気おつけろよ」
「はい!」
俺は気を引き締めて返事をした。右上段に剣を構える。
「だー!」
ガキーン
俺の振った剣は丸太に食い込むこともなく弾かれ両の手に痺れが伝わる。痛ってー! 剣を落として手をヒラヒラさせる。
「ハハハハハ! 初めてでは、そんなところだろう。剣の刃の向きが真っ直ぐ入っていないのさ。それを意識しながら素振りをするんだぞ。剣の腹では切れないように、刃先が真っ直ぐ入らなければ剣は切れない」
ガルド師範が剣をゆっくり動かしながら違いを説明してくれた。
なるほど…………素振りは大切だと実感した。
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