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28 初めての依頼 2
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「おや! 岳男じゃねえか!」
後ろから聞き覚えのある声が響く。
なんとも粘りつくような汚い声の持ち主を、振り返らずとも俺は分かる。
十五年来の職場の同僚多田野卓郎、三十歳彼女いない歴三十年だ。
「マジかよ……」
俺は顔を顰めて振り返った。そこには卓郎と三人の冒険者が立っている。
「やっぱり岳男じゃん! こんなところで会うとは奇遇だな。付き合いが悪くなったと思ったら、やっぱり女ができたんじゃねーか!」
証拠を掴んだと言わんばかりに得意気に踏みよる卓郎が、俺の肩に手を置いて耳元に顔をよせる。
「すんげえ可愛い子じゃん。気持ちは分かるけど、だからってこんな子供に手を出すとは、見損なったぜ」
俺は、まずいところを見られちまったと引き気味に背筋を伸ばす。
「そんなんじゃねーよ。この子は仕事のパートナー。文化局の依頼を受けたトレジャーハンターやで」
「トレジャーハンター? 宝探しか?」
「おい卓郎! こいつら知り合いか?」
俺に疑問をぶつける卓郎に、冒険者の一人が説明を求める。
俺が答えるその前に、卓郎が振り返って冒険者に説明を始めた。
「こいつっすよ。この前話した荷物持ち候補!」
勝手に荷物持ち候補にしないで欲しい。
「この前話していた職場の同僚って、こいつか?」
「そうなんす」
おいおい、勝手に荷物持ち候補にしないでくれ……と思いながら三人の冒険者をチェックする。
リーダーっぽい卓郎と話している男は金髪の肩までかかるロングヘアで背中に長剣を背負っている。その後に控えている二人はゴリゴリマッチョで、スキンヘッドとトサカ頭という髪型。きっと昔はいじめっ子だったに違いない。
スキンヘッドの獲物はモーニングスターでトサカ頭は手斧、二人とも革ズボン、上半身裸の上に金属鋲つきの革バンドというなかなか厳ついスタイルだ。ちょっと見、目を合わせたくないタイプのお方達である。
卓郎がどういう経緯でこいつらと知り合ったかは知らないが、どうせ筋肉つながりというところだろう? なにせ穴掘り人夫も毎日の労働で筋肉だけは厳つい奴が多く卓郎もそうだ。
「ふーん! まあまあ良い筋肉してるじゃねーか? タクが進めるだけのことはありそうだな」
おいおい、勝手に品定めするんじゃねー、荷物持ちなんて誰がやるかよ!
「おい、お前! 今度、ダンジョンの荷物持ちに使ってやっても良いぜ! 潜れる日数が増えればそれだけ深くまでいけるからな」
突然俺に荷物持ちの仕事を振ってくる金髪ロン毛。こっちは、そんな仕事求めてないんですけどー! 俺たち独自で潜りますー!
ダンジョン内で宿泊するためには結構な荷物(食料、水、テント、その他もろもろ)を必要とするのだろう。ちょっと考えれば想像がつく。
日数が増えればって、土日の一泊二日が限界やで? 平日はトンネル掘りの仕事があるやんか?
卓郎だって仕事は休まず、現場で穴を掘っとったんやから、要するに俺が入ればダンジョン内で泊まれるようになるっちゅうことか………こいつらまだダンジョン内での宿泊経験はないんやな。
「すまんのやけど、その話は断ったはずや! 卓郎に聞いてないんか?」
初耳という顔で三人が卓郎を睨む。卓郎が、まあまあと両掌を前に出して一歩引く。
「いま説得中……なんすよ。まだこれから何回も誘って考えを変えさせようと思ってたんす」
卓郎の言い訳に、納得したのか三人は視線を俺に向ける。
「今よりいい金になるぜ! 俺達の荷物持ちやってくれよ!」
交渉ーー頭脳労働は金髪ロン毛の担当で、スキンヘッドとトサカ頭はオッチャンと同じ肉体労働担当なんやね。
「すまんがわし、金では動かん人間なんや」
自分で言うのもなんやが、カッコ良く渋く決まったで! メアリーアンちゃんの視線をチラリと確かめる。
メアリーアンは、早く終わりにしてと視線で求めている。チョットイライラしてますか? こいつら嫌いなタイプやろう……分かるわー。
「そうか。確かに金以外の理由がありそうだな。今回は諦めよう。別に誰でも構わんのだしな」
俺とメアリーアンを見ながらスキンヘッドとトサカ頭と視線を送って口の端を上げる。二人が破顔して頷いた。なんか変な勘違いしてないやろうね、君達。オッチャン、ロリコンじゃありませんよー!
俺はとっととこの場を離れようと試みる。
「じゃあ卓郎、またな! トンネル現場でよろしくたのむで!」
右手を挙げて合図する。
「おお! それじゃあまたな。女に振られたら連絡くれや! その時は入れてやるからよ!」
「はは! 俺達そういう仲じゃねーんだわ。トレジャーハンターの仲間というだけや。俺はロリコンちゃうからね」
俺は奴等の勘違いの修正は早いに限ると思ってはっきり宣言しておく。俺のロリコンという言葉にメアリーアンがちょっとムッとしている。ごめんね、アンちゃん。君は、若いって言いたいだけやねん。
「そうか! 分かった。分かった。ちゃんと秘密にしといてやるから心配するなよ」
にやけた笑いで俺をおちょくる卓郎を相手にせず、俺達はその場を後にした。
後ろから聞き覚えのある声が響く。
なんとも粘りつくような汚い声の持ち主を、振り返らずとも俺は分かる。
十五年来の職場の同僚多田野卓郎、三十歳彼女いない歴三十年だ。
「マジかよ……」
俺は顔を顰めて振り返った。そこには卓郎と三人の冒険者が立っている。
「やっぱり岳男じゃん! こんなところで会うとは奇遇だな。付き合いが悪くなったと思ったら、やっぱり女ができたんじゃねーか!」
証拠を掴んだと言わんばかりに得意気に踏みよる卓郎が、俺の肩に手を置いて耳元に顔をよせる。
「すんげえ可愛い子じゃん。気持ちは分かるけど、だからってこんな子供に手を出すとは、見損なったぜ」
俺は、まずいところを見られちまったと引き気味に背筋を伸ばす。
「そんなんじゃねーよ。この子は仕事のパートナー。文化局の依頼を受けたトレジャーハンターやで」
「トレジャーハンター? 宝探しか?」
「おい卓郎! こいつら知り合いか?」
俺に疑問をぶつける卓郎に、冒険者の一人が説明を求める。
俺が答えるその前に、卓郎が振り返って冒険者に説明を始めた。
「こいつっすよ。この前話した荷物持ち候補!」
勝手に荷物持ち候補にしないで欲しい。
「この前話していた職場の同僚って、こいつか?」
「そうなんす」
おいおい、勝手に荷物持ち候補にしないでくれ……と思いながら三人の冒険者をチェックする。
リーダーっぽい卓郎と話している男は金髪の肩までかかるロングヘアで背中に長剣を背負っている。その後に控えている二人はゴリゴリマッチョで、スキンヘッドとトサカ頭という髪型。きっと昔はいじめっ子だったに違いない。
スキンヘッドの獲物はモーニングスターでトサカ頭は手斧、二人とも革ズボン、上半身裸の上に金属鋲つきの革バンドというなかなか厳ついスタイルだ。ちょっと見、目を合わせたくないタイプのお方達である。
卓郎がどういう経緯でこいつらと知り合ったかは知らないが、どうせ筋肉つながりというところだろう? なにせ穴掘り人夫も毎日の労働で筋肉だけは厳つい奴が多く卓郎もそうだ。
「ふーん! まあまあ良い筋肉してるじゃねーか? タクが進めるだけのことはありそうだな」
おいおい、勝手に品定めするんじゃねー、荷物持ちなんて誰がやるかよ!
「おい、お前! 今度、ダンジョンの荷物持ちに使ってやっても良いぜ! 潜れる日数が増えればそれだけ深くまでいけるからな」
突然俺に荷物持ちの仕事を振ってくる金髪ロン毛。こっちは、そんな仕事求めてないんですけどー! 俺たち独自で潜りますー!
ダンジョン内で宿泊するためには結構な荷物(食料、水、テント、その他もろもろ)を必要とするのだろう。ちょっと考えれば想像がつく。
日数が増えればって、土日の一泊二日が限界やで? 平日はトンネル掘りの仕事があるやんか?
卓郎だって仕事は休まず、現場で穴を掘っとったんやから、要するに俺が入ればダンジョン内で泊まれるようになるっちゅうことか………こいつらまだダンジョン内での宿泊経験はないんやな。
「すまんのやけど、その話は断ったはずや! 卓郎に聞いてないんか?」
初耳という顔で三人が卓郎を睨む。卓郎が、まあまあと両掌を前に出して一歩引く。
「いま説得中……なんすよ。まだこれから何回も誘って考えを変えさせようと思ってたんす」
卓郎の言い訳に、納得したのか三人は視線を俺に向ける。
「今よりいい金になるぜ! 俺達の荷物持ちやってくれよ!」
交渉ーー頭脳労働は金髪ロン毛の担当で、スキンヘッドとトサカ頭はオッチャンと同じ肉体労働担当なんやね。
「すまんがわし、金では動かん人間なんや」
自分で言うのもなんやが、カッコ良く渋く決まったで! メアリーアンちゃんの視線をチラリと確かめる。
メアリーアンは、早く終わりにしてと視線で求めている。チョットイライラしてますか? こいつら嫌いなタイプやろう……分かるわー。
「そうか。確かに金以外の理由がありそうだな。今回は諦めよう。別に誰でも構わんのだしな」
俺とメアリーアンを見ながらスキンヘッドとトサカ頭と視線を送って口の端を上げる。二人が破顔して頷いた。なんか変な勘違いしてないやろうね、君達。オッチャン、ロリコンじゃありませんよー!
俺はとっととこの場を離れようと試みる。
「じゃあ卓郎、またな! トンネル現場でよろしくたのむで!」
右手を挙げて合図する。
「おお! それじゃあまたな。女に振られたら連絡くれや! その時は入れてやるからよ!」
「はは! 俺達そういう仲じゃねーんだわ。トレジャーハンターの仲間というだけや。俺はロリコンちゃうからね」
俺は奴等の勘違いの修正は早いに限ると思ってはっきり宣言しておく。俺のロリコンという言葉にメアリーアンがちょっとムッとしている。ごめんね、アンちゃん。君は、若いって言いたいだけやねん。
「そうか! 分かった。分かった。ちゃんと秘密にしといてやるから心配するなよ」
にやけた笑いで俺をおちょくる卓郎を相手にせず、俺達はその場を後にした。
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