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 どうやら梨沙が照明のリモコンを下敷きにしたらしい。

「梨沙、その、な、なんて言えば、、、」

 暗がりの中、俊也は激しく動揺していた。


 ――どうして着けてないんだ。
 そう考えるのが、やっとだった。
 

「こ、こっちこそごめん、、っ」
 裏返った声で梨沙が謝ってくる。
「お見苦しいものを、、、」
「そ、そんなことはないけど……」
 俊也の言葉を最後に会話が途切れる。
 ――すぐそこのリモコンに、どちらも手を伸ばさずに。

「っ、そだ、俊也の浴衣、拭かないと……っ」
「――! 梨沙っ、ちょ待っ、今はっ……」
 手探りで近づいた梨沙がバランスを崩す。

「――ぁ、え……っ⁉︎」
 梨沙は瞬間、言葉を失う。
「俊、也……?」
 戸惑う梨沙に、彼は何も言わなかった。

 ――その身体の変化はとても。

 友情の二文字で説明することは、できなかった。


「――き、気にしないでよ俊也! 俊也も男の子、だもんね。女のナマチチなんて、見たらそりゃこうもなるか、あはは……」

 浴衣越しにぺたぺたと触りながら、梨沙は何でもないように振る舞う。
「こ、こんなふうになっちゃうんだ……へ~……」
 まるで初めて触るように興味津々と。
「ちょ、梨沙ほんとやめろって……」
 言葉とは裏腹に、無意識に受け入れてしまっている自分が恥ずかしい。
 多分経験があるのだろう友達に、触られている――そんな状況に理性で抗うには、俊也はまだ、若過ぎた。

 抵抗しない俊也を見て、梨沙は悪戯っぽく囁く。
「つーかわたしのこと、そんな目で見てたの? 友達なのに、いけないんだぁ……」
 その手はだんだんと、さするように変わる。
 彼女の息遣いも、ほんの少し――熱を帯びる。

「っ、梨沙、いい加減に……!」
 気丈な言葉も、しと、と唇が触れ合えば。
 意識がとけて、宙に舞う。
 唇の感触と甘い香り、ひしと回された腕の感触が、彼の脳を埋め尽くしていった。


「――嘘、なんだ」
 口元を離した梨沙は、罪を告白する。
「彼氏なんて嘘。ホントはずっと……」
 梨沙の瞳が、暗がりに揺れる。
「っ、バカだよね、ほんと。忘れたくて遠ざけてたのに。いつかまた遠くの街へ行っちゃうのに……」
 瞬間、俊也は引き裂かれるような痛みを胸に抱く。
 けれどそれは事実だ。休学が終われば。
 自分はこの街を去らねばならない。
 再び彼女と、離れなければならない……。

「ねぇ俊也、教えて。このままキレイに終わるのがいいの? それとも……」
 答える代わりに、口付けあえば。

 梨沙は見開いた瞳を、静かに閉じる。

 そのまま二人は、湧き出でるままの自然の感情へと……心を委ねていった。


――――
……
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