2 / 6
2話 魔法犯罪対策課
しおりを挟む
人類がシンギュラリティを間近に控えた、とあるエイプリル・フール・デーのこと。
突如として、現代科学では解明できない「謎の力」を持った人々が、世界各地で同時多発的に現れた。
フィクションの世界にしか存在し得なかったその力は「魔法」と呼ばれ、それを操る人々は「魔力保持者」と名付けられた。
未知の力を前にして、世界は一時混乱に陥る。しかし長い歴史を持つ人類の叡智により、人々は「魔法」のある世界で生きていくことに適応し始めた。
さて、「魔力保持者」によって頻発する魔法犯罪に対し、政府はそれらを取り締まる機関を、警察庁に連なる形で設置した。
それが「魔力保持者」らを結集して生まれた組織、「魔法犯罪対策課」通称「マホタイ」である。
斑鳩肇(いかるが・はじめ)が魔力保持者であることを自覚した、十五歳の頃。当初はもっぱら恐れられていた魔力保持者は、時が経つにつれ世間やメディアから好意的な感情を向けられるようになっていた。
若くして堅実な考えを持っていた斑鳩は、公務員であれば食いっぱぐれることもないだろうと、設立間もない魔法犯罪対策課への配属を希望した。
しかし、所属して間もないある日の現場で利き腕の腱を損傷。大事は免れたものの、機敏な動きは難しく、現場を退き事務仕事に徹することとなった。
やがて法整備や教育制度が整い、マホタイには優秀かつ若い人材も揃うようになった。若手の育成という言い訳も立たなくなり、窓際に追いやられていた斑鳩は、ついに退職を促された。
庁内の事務職に再登用を頼ってみたが、人事の反応は冷たいものだった。
「嘱託の方にも募集はないねぇ。おたく、マホタイだっけ。種別は?」
「魔力探知です……」
「今は検知計があるもの。わざわざ人件費は割けないねぇ」
そう言葉をかけられ、斑鳩は少ないデスクの荷物をまとめ、あえなく退庁することになった。
「参ったな……」
段ボールを手にしたまま、斑鳩は昼下がりの街をふらついていた。仮にも警察官一筋で働いて四十を過ぎた自分に、今更別の仕事が務まるのだろうか。
この足でハローワークにでも寄って行こうか、などと考え始めた斑鳩の肩に、通りの向こうから走ってきた一人の青年がぶつかった。
突如として、現代科学では解明できない「謎の力」を持った人々が、世界各地で同時多発的に現れた。
フィクションの世界にしか存在し得なかったその力は「魔法」と呼ばれ、それを操る人々は「魔力保持者」と名付けられた。
未知の力を前にして、世界は一時混乱に陥る。しかし長い歴史を持つ人類の叡智により、人々は「魔法」のある世界で生きていくことに適応し始めた。
さて、「魔力保持者」によって頻発する魔法犯罪に対し、政府はそれらを取り締まる機関を、警察庁に連なる形で設置した。
それが「魔力保持者」らを結集して生まれた組織、「魔法犯罪対策課」通称「マホタイ」である。
斑鳩肇(いかるが・はじめ)が魔力保持者であることを自覚した、十五歳の頃。当初はもっぱら恐れられていた魔力保持者は、時が経つにつれ世間やメディアから好意的な感情を向けられるようになっていた。
若くして堅実な考えを持っていた斑鳩は、公務員であれば食いっぱぐれることもないだろうと、設立間もない魔法犯罪対策課への配属を希望した。
しかし、所属して間もないある日の現場で利き腕の腱を損傷。大事は免れたものの、機敏な動きは難しく、現場を退き事務仕事に徹することとなった。
やがて法整備や教育制度が整い、マホタイには優秀かつ若い人材も揃うようになった。若手の育成という言い訳も立たなくなり、窓際に追いやられていた斑鳩は、ついに退職を促された。
庁内の事務職に再登用を頼ってみたが、人事の反応は冷たいものだった。
「嘱託の方にも募集はないねぇ。おたく、マホタイだっけ。種別は?」
「魔力探知です……」
「今は検知計があるもの。わざわざ人件費は割けないねぇ」
そう言葉をかけられ、斑鳩は少ないデスクの荷物をまとめ、あえなく退庁することになった。
「参ったな……」
段ボールを手にしたまま、斑鳩は昼下がりの街をふらついていた。仮にも警察官一筋で働いて四十を過ぎた自分に、今更別の仕事が務まるのだろうか。
この足でハローワークにでも寄って行こうか、などと考え始めた斑鳩の肩に、通りの向こうから走ってきた一人の青年がぶつかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる